第二回:理学療法介護士【川越リハビリテーション病院 | 理学療法士 阿久澤直樹先生】

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個別リハをしながら集団リハが必要

ー 理学療法士だと1人で複数人をみるということに苦手意識を持っている人も多いと思います。阿久澤先生が意識していることなどあれば教えてください。

 

阿久澤先生 茨城県の県立健康プラザの大田仁史先生のお言葉で「仲間との出会い、集団の中でのピアサポートがすごく大切である」とおっしゃられています。

 

基本的に集団の中という環境では模倣とか運動を見学しているだけでも脳が動いていて有効な情報が多いんですよね。

 

人間という集団はコミュニティーを作ります。地域というのは集団の中で暮らしているということなので、個別リハビリテーションをしながらでも結局は集団リハビリテーションが必要なわけです。家族も結局は集団になるので対象者はもちろんのこと、家族との関係性を見ていく必要があると思います。

 

今は、理学療法士が量産体制になって、運動トレーナーみたいな立ち位置になってしまったと考えています。リハビリテーションは全人的復権と言う意味なので、その人が社会の中でどのように生きてきてどのように振る舞ってきたのかって言うことを知らなくてはいけないと思うんです。

 

あとは、コミュニティーの中でキーマンを探すこと。前に出るのが好きな人いるし前に出るのが嫌な人もいるし、世話好きな人もいます。そういう風にボランティアの人達のキャラクターを把握することが大事です。

 

多分、病院で技術系ばっかりをやっている人たちにはイメージしづらいと思います。例えば科目で言うと社会なのです。歴史とか社会とか道徳みたいそのような感じで住み良い町作りをする中で私達のノウハウを使うっていうイメージです。人間力を観たり生活行為向上マネジメントをしてその人が本当にしたい事を引き出してあげて関わることも大事にしています。

 

地域へ派遣する課題

ー 実際のところ、理学療法士・作業療法士は行政に求められているのでしょうか?

 

阿久澤先生 現場に立っていると、徐々に求められることが増えてきたように思います。ただ、病院で取れる収益と地域に出て還元されるものとを比較すると、圧倒的に非効率ですし、経営者側からすると悩みの一つというのが本音だと思います。

 

埼玉県はこれを解決するために県と医師会が中心となり埼玉県地域リハビリテーション体制整備に着手し、地域の病院・施設に協力医療機関となってもらい、所属組織にから地域へ派遣、活動しやすくなるような取り組みもなされています。

 

もう一つの課題として、担当者の質の担保です。地域に出ている療法士がどのくらい研修を受け、実務経験があり、実際に有効な関わりができているのかの詳細を把握する事は難しく、苦情を受けることもあるようです。

 

県からは「実務レベルの高い人材を出してほしい」と言われています。この部分については、気長に研修を続けていく他ありません。理想は、行政も専門職も引っ張っていけるような人材を県内各地に育成することです。

 

自立支援型地域ケア会議で浮き彫りになった例では、事業所の人たちが「この対象者はレッグプレスを2年間同じ負荷でやっています」と胸を張って話されたりします。PDCAサイクルが回ってないんでしょうね。筋力増強という点では漸増的にやるべきであるし、ADLやIADLを改善するために筋力トレーニングをやっているはずなのに何の為にトレーニングをやっているのか分からなくなってしまっている。その都度問題点を明らかにしてない上でトレーニングだけやっている事業所も多いみたいです。

 

病院でただ歩けるようになったから帰りましょうって言ったら、その人は地域で孤立してしまいますよね。心身機能が活動や参加に結びつけなくてはいけません。

 

自助・互助・公助が高まってきても、共助である我々の関わりの質が低い状態では、本末転倒です。地域包括ケアは、一体的に取り組むことが大切だと思います。

 

― 介護予防に療法士が参入していく一方で、将来、理学療法士が介護士と同じような存在と扱われてしまうのではないかと危惧されている一面もあると思います。

 

阿久澤先生  今、アセスメントが不十分な状況で、介護をしている場面がたくさんあると思います。立つ能力はあるにも関わらず、介護者都合で全介助になる結果、能力を低下させてしまいます。このアセスメントの部分は、我々の得意分野であり、特に自立支援や重度化予防の視点は、介護士とは一線引かれる部分です。

 

つまり、適切なアセスメントに基づいた関わりをし、良好なアウトカムを出していくことが出来なければ、介護士の仕事を一部、療法士が負担することになるかもしれません。そこで、管理能力が高い、認定、専門理学療法士を持っているなど、別に付加価値があることを認められれば、介護士と一緒になるということにはならないでしょう。

 

おそらく、ここの二極化は進んでいくのだと思います。だから自己研鑽することもちゃんとしなくちゃいけないし講習会に出ることだってちゃんと考えなくちゃいけません。

 

【目次】

第一回:インフォーマルケアの時代へ

第二回:理学療法介護士

最終回:スーパースターは監督になれないのか

 

阿久澤先生オススメ書籍

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協同医書出版社
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株式会社 運動と医学の出版社

 

阿久澤 直樹先生プロフィール

【最終学歴】

 国際医療福祉大学 保健学部 理学療法学科 卒業 学士

 

【職歴】

2003年~2006年 医療法人 瑞穂会 川越リハビリテーション病院 理学療法士

2006年~2008年 医療法人 至誠堂 至誠堂整形外科 理学療法士

2009年~2014年 医療法人 瑞穂会 介護老人保健施設 瑞穂の里 主任 理学療法士

2014年~2016年 医療法人 瑞穂会 城南中央病院 主任 理学療法士

2016年~現在  医療法人 瑞穂会 川越リハビリテーション病院 主任 理学療法士

 

【活動】

・埼玉県理学療法士会 理事 職能局長 健康増進

・介護予防事業都道府県コーディネーター

・川越市 介護予防サポーター養成講座 講師

     いもっこ体操教室 講師

     自立支援型地域ケア会議 アドバイザー(理学療法)

【その他】

 心身機能・構造に基づく8つのボディタイプについてのスクリーニングと治療展開を行う、「A‘sメソッド」について研究と考察をしている。少しずつ発信する機会が増えてきているため、さらに精度と根拠を高めたい。

 

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