作業療法を広めていく
― 業務時間の管理ってどうされているのでしょうか?
細川先生 ここ(まごころの杜)の施設長として勤務しているので、9時から18時という枠になります。実際の勤務時間は8時間で、1時間休憩という感じです。その1時間は別のことに当てています。例えばミーティングをしたりとかね。18時以降も別のことやるんですけど、子供がいるので、家に帰っています。19時くらいに家に帰って、お風呂入れて、ご飯を食べて、子供寝かしつけて、10時くらいからミーティングをしています。
それから自分の執筆作業をして、翌朝6時半に起きて、子供の準備をして、ご飯を食べて出勤しています。タイムマネージメントって難しいんだけど、僕は価値を家庭や周りの仲間や本業に置いているので、それをいかに上手くやるかというところですね。昔は本当に下手だったんだけど、それを積み重ねて行くうちに、だいぶ効率的な身体になりました。
まずは“やらないことを決める”という感じですね。それが一番良かったです。例えば、情報を集めるにしてもGoogleアラートで「複業」とか、キーワードを入れておくと、勝手にその情報が集まってくるようにできるので、その機能を利用することによって敢えてネットサーフィンをしなくて済むようにしています。僕の中で夜はクリエイティブな時間にあてていて、何も考えずにネットサーフィンをする時間も設けています。
普段から結構忙しいんですけど、その中でも家族の時間を大切にして、優先的にすることを決めて、やらないことをやらないというのが僕のタイムマネジメントですね。パラレルキャリアを提唱したドラッカーが言っているのは、パラレルキャリアをするなら、タイムマネジメントがしっかりしている者に限ると言っています。パラレルキャリアで一番ダメなのは、それが忙しいから本業を疎かにするということですね。もちろん複業も同じです。
逆にいうと複業・パラレルキャリアが増えている中で、企業にとって全部いいかというと、利益相反しないとかコンフリクトで企業に不利益なことを発信しないとか。そういったことは規定としてあるので、ルールを踏襲するのが大事です。僕自身はそれを守って最強のサラリーマンになるのが目標ですね。
雇用している側が「起業したらいいじゃない」とよく言うんですけど、僕の中では独立起業するという選択肢はありません。独立起業した祖父母や親を見てきたのもありますが、これからは「会社員兼個人事業主」「会社員兼代表取締役」というう複業・パラレルキャリア時代になると思っているので、そういったフレキシブルな働き方を突き詰めていきたいですね。
あと独立しないもう一つの理由は、自分の可能性をそれで狭めるからと思っているからですかね。テクニカルな話になりますが、雇用されている側で求めるのは、自分ができない領域ですね。例えば資本金がめちゃくちゃあるとか、ドクターがいるとか、絶対自分一人では出来ないことをやっているのが、今の雇用先かなと思っています。そこはしっかりすみ分けする必要があります。
あと単純に勇気がないだけです。(笑)
もう1つは、「作業療法を広めていく」という軸足を元に、広めていきたいと思っているので、そこはすみ分けて考えてはいますね。タイムマネジメントもそうだし、自分の中で明確に分けておく。その辺がうやむやになっている人が多くて、そこを明確に分けて、うまく繋げていくことが大事です。
― これからは個の時代だと思いますか?
細川先生 個の時代になっていくとは思います。断定は出来ないけど。ただそれは、個人で繋がるネットワークは大事になってくるけど、個人で生きていくというわけではないと思っています。僕の中では「会社員兼個人事業主」というのが理想なので、個人というキラーコンテンツを持ちながら、会社員としての枠組みの中で個人に活かせるように働くというのが僕の理想です。
逆に個人の働きが会社にも影響するようになると、それがシナジーとなります。多くの人は安心安定を求めながら自分の可能性を模索したい人がほとんどなので、お給料をしっかりもらいながら、複業とかパラレルキャリアをやるということですね。個の時代ではあるんだけど、必ずしも個だけで生きていくのではなくて、ネットワークやコミュニティに属すというか。
結局、個人を定義づけるのは環境なので、個人でも「一人でやる」というわけではないと考えています。要はボランティアでもいいので、「個人」で本業外に飛び出してみて、色々経験値を積んで横の広がりを作ることが大事だと思います。
【目次】
第一回:アートをリハに生かす作業療法士
第二回:人生の切り売り的仕事
第三回:やらないことを決める
■細川先生オススメ書籍
細川寛将先生のプロフィール
作業療法士。保健学修士。作業療法士として病院勤務時代より「国家資格」「保険内」にとらわれずに専門性を活かしてナレッジワーカーとして活動。これからの医療・介護職の働き方の一つとして複業・パラレルキャリアを実践・推奨している。
現在は、医療法人陽明会グループ(名古屋市)で在宅緩和ケア住宅(サ高住)の施設長をする傍ら、株式会社クリエイターズ(金沢市)にて就労支援事業・メディア事業、その他NPO法人や一般社団法人の役員、ヘルスケアベンチャー企業の支援に携わっている。
最近は、地域でパラレルキャリアを実践する医療・介護職を支援するために一般社団法人守破離を起ち上げコワーキングスペースの設置やワークショップ開催、メンバーにキャリアデザインのコンサルティングなどを精力的に行っている。