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坐骨神経の走行異常

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坐骨神経が大腿方形筋と大殿筋、およびこれらの間にある滑液包と癒着し、大転子に引き寄せられた状態に遭遇することがあります。

ここでは仮に「坐骨神経遠回り症候群」と呼ぶことにしましょう。まだまだエビデンスに乏しいのは間違いありませんが、これまでの治療経験に基づき少し整理してみたいと思います。

 

■ 機能障害と評価

 坐骨神経と大腿方形筋が癒着することにより、大腿方形筋が短縮した状態となり、大転子の前方移動(すなわち股関節内旋)が制限されます。さらには、屈曲・内転制限を招くことから、様々なスポーツ動作に影響を及ぼします。腹臥位で大転子を前方に押すと、可動性が著しく低下しているのが確認されます。坐骨神経を触診しなくても、この大転子の前方可動性の低下のみでもある程度判断できます。

 

 坐骨神経遠回り症候群の症状は、癒着にともなうビリビリという以異常感覚、股関節屈曲+内転による伸張時痛(ただし外転位では軽減)、座位での圧迫による不快感、圧痛などがあります。しこりと認識されて、マッサージなどでグリグリ押されて症状が悪化する例もあるようです。

 

■ メカニズム

 このような状態がなぜ生じるのかを考察してみます。単純なメカニズムとしては、あぐらにより股関節が屈曲・外転・外旋すると大転子は坐骨に接近し、同時に正常な位置の坐骨神経にも接近します。その表層には大殿筋があり、大転子の後内側には大転子滑液包があります。あぐらは同時に荷重による圧迫を伴うため、大殿筋、大腿方形筋、大転子滑液包、坐骨神経が一体化して癒着することもあり得なくはありません。さらに、野球やサッカーのスライディング、スノーボードでの打撲などが、滑液包の炎症の引き金になるかもしれません。器械体操や新体操などで開脚ストレッチやY字バランスを繰り返すうちに癒着が起こる可能性もあります。そして、厄介なことに、殆どの場合無症状で、僅かな可動域制限から徐々に悪化していきます。

 

■ 治療

坐骨神経

 この神経の走行異常に対する治療は、組織間リリースを使えばそれほど難しくはありません。まず大殿筋の下縁をめくりあげ、坐骨結節の外側で坐骨神経を触知します。坐骨神経を擦るようにして、大殿筋と坐骨神経との癒着をリリースします。同時に、大転子滑液包の浅層のリリースも同時に行うことで、大殿筋を十分に上方にめくり上げます。次に、坐骨神経の外側を擦るようにして大電子滑液包と坐骨神経との間をリリースします。そして最後に、坐骨神経深層で大腿方形筋を擦るようにして坐骨神経を内側に滑らせて、正常な位置に戻します。

 

■ 筆者・セミナーご紹介

筆者:蒲田和芳

・広島国際大学総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 教授

・株式会社GLAB(ジーラボ) 代表取締役

・一般社団法人日本健康予防医学会 副理事長

・株式会社リベラシオン 代表取締役

 

セミナーご紹介:

蒲田和芳が講師を務める~全身の関節疾患の治療法を学ぶためのセミナーシリーズ~CSPT2018 クリニカルスポーツ理学療法セミナーの受講者お申込み受付中です。

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長期間の「拘縮」や「可動域制限」に対しても、確実に可動性を回復させるための徒手療法技術ISR(組織間リリース®)セミナー2018も受講者お申込み受付中です。

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