第一回:PREVENT Inc. 名古屋大学医学部発ベンチャー 代表取締役 | 萩原 悠太先生

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入院のリピーター

ー まずはじめに、「PREVENT」の事業内容について教えてください。

 

萩原 悠太先生 私たちは、「医療機関に通院している方に向けた健康づくり支援」をしています。脳梗塞や心筋梗塞を一度発症した方の生活習慣指導をスマホアプリなどを通じて、オンラインで行っています。

 

事業モデルは、BtoBtoCのモデルを取っていて、直接的なクライアントとしては企業の健康保険組合や生命保険会社になります。エンドユーザーは、提携先の企業で働く人や保険の契約者さんの中で病気を持っている方になります。中でも生活習慣病を罹患し、現在医療機関へ通院中の方がターゲットです。

 

病気になった本人がPREVENTのサービスを受けて健康になることで、発生する医療費の適正化や保険給付金の支払い抑制につながり、その対価を保険者からいただく仕組みになります。

 

ー 重症化予防(二次・三次予防)と言われる分野ですね。

 

萩原 悠太先生 そうですね。例えば、脳梗塞というものは非常に再発率が高い疾患と言われていて、5年間で約30%、3人に1人は再発する疾患です。

 

私自身も臨床に出ていた時に、「入院のリピーター」を担当したことがあります。入院中に数ヶ月のリハビリテーション後、自宅に笑顔で帰られた方が、半年後くらいに再発して戻ってきてしまったという経験をお一人ではなく、何人も経験しました。

 

もちろん色々な病態・要因があるので一概には言えませんが、生活習慣病、動脈硬化性疾患には慢性疾患でありつつも進行性の疾患という側面があると考えております。

 

動脈硬化の進行は全身をくまなく進み、血管が詰まりやすいような生活習慣をしていればいるほど、詰まりやすくなります。一度発症して退院できても、元の生活習慣に戻れば、また動脈硬化は再度進行し、再発は繰り返されてしまうことが現実です

 

既存の医療システムの中では、救命され、社会復帰を無事に果たせた方へ、その後の重症化予防や再発予防に向けた十分なケアをしていくことには限界があります。

 

一方で、再発予防に貢献するようなエビデンスは投薬治療や食事、運動など生活習慣改善など多くの報告がなされております。

 

その中でも我々が行なっているのは、ライフスタイルの改善によるアプローチです。そもそも弊社の出自は、名古屋大学での軽症脳梗塞患者さんに対するライフスタイル改善での再発予防に関する研究成果をベースにしています。

 

 

我々の現在見ている課題は、生活習慣改善や効果的な人やそうでない人、生活習慣の中でも運動習慣の重要性が高い人もいれば、食習慣のアプローチの重要性が高い人もいる。それぞれに対してどのようなアプローチが適切なのかを定義づけしていく必要性があると感じています。

 

そういった医療機関ではなかなか取れないデータを追っていきながら、新しい知見を出していくところを目指しています。研究の知見を生かしたサービスを提供するだけでなく、社内でもデータをしっかりとっていくことで、研究と実践の両輪を回していきたいと思っています。

 

我々にしか解決できない領域の知見を出ながら、この重症化予防、再発予防領域のオピニオンリーダーになっていきたいなと思っています。

 

ニッチ市場でサービスは成り立つのか

 

ー 三次予防となるとニッチな領域で、マーケットはそこまで大きくないのかなと思うのですが、実際それでサービスが成り立っていくのかが気になります。

 

萩原 悠太先生 そこが、おそらく他社さんがサービスを出していない一番大きな要因だと思っています。ビジネスの世界は、売上の8割は全顧客の2割が生み出しているとよく言われますが、医療費にもこの法則が当てはまり、実際に健康保険や医療費全体の仕組みを見ていっても、一部の人たちがかなりの割合の医療費を使っています。

 

ヘルスケアのサービスが乱立していますが、まだまだ市場の大きいと想定される健康な人向け、もしくは健康に関心の高い方をより健康にしていくサービスがほとんどです。ここで、対象者の人数規模と医療費の規模を読み違えないことが重要だと考えております。もし、医療費について全員国民全員が少しづつまんべんなく使っている状況だとすれば、マスとしての集団が市場になりますが、医療費のバランスはそうではありません。例えば、脳血管疾患と心疾患だけでも、約40兆円の年間医療費のうち、約2兆5千億円が使われています。

 

もちろんテーマとしてはニッチではありますが、「悲しみの大きさ」や「医療費規模」でみると我々医療の専門家が無視してはいけない領域だと考えており、むしろ我々にしかできない、大きな参入障壁だと考えております。

 

例えば、弊社には心臓リハビリテーション指導士が3名も在籍しており、通常の医療機関の質にも負けないサービスを提供しております。

 

ー それって起業する前から分かってたんですか?

 

萩原 悠太先生 いえ、全然分かってなかったです。(笑) 

 

脳梗塞や心筋梗塞の再発予防に避ける社会保障費が足りていない。医療機関でそこまでやってもらうリソースが足りていない。でも本人が直接お金を払うのは難しいよねと、ここをなんとか仕組化できないかと試行錯誤して、たどり着いたのが今のサービスです。

 

起業の出発点として「ここにマーケットがあるから」と飛び込んだわけではありません。なんとか救いたい。でも、ビジネスとして回していかないとサービスを提供し続けられない。サービスを提供し続けるためにはどういうことが必要か、と考えてやってきました。

 

ー 続く。

PREVENTでは、一病息災を社会に実装する仲間を募集しています。

お話だけでも結構ですので、少しでも興味があれば、ご連絡ください。

◆ PREVENT採用ページ
https://prevent.co.jp/recruit

◆ WANTEDLY採用ページ
https://www.wantedly.com/companies/prevent

 

【目次】

第一回:入院のリピーター

第二回:なぜ起業したのか ~現場で感じたある距離感~

第三回:ヘルステック スタートアップ ストーリー

最終回:経営者として求める人材とは

 

萩原 悠太先生プロフィール

名古屋大学大学院医学系研究科修了。

大学院では「オンライン心臓リハビリテーションの構築」をテーマに研究。その後、医学研究所北野病院にて理学療法士として臨床業務に従事。

 

医療現場では解決できない予防医療領域の重要性を痛感し、名古屋大学へ復帰後、2016年に(株)PREVENTを設立、代表取締役に就任。現在、脳梗塞や心筋梗塞などの生活習慣病既往者に寄り添う健康づくり支援を受けられるITサービスを提供している。

 

IBM BlueHub Open Innovation for Healthcare 2016 最優秀賞受賞。経産省主催ジャパンヘルスケアビジネスコンテスト2018優秀賞受賞。

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