周産期ケアで修正すべき骨盤アライメント

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周産期ケアに取り組むにあたり、必然的に骨盤のマルアライメントを効果的に修正する必要に迫られます。妊娠中だから、あるいは出産後だから「弛んでいる」と考えるのは短絡的です。

基本的にマルアライメントのパターンは周産期でも、その他の時期でも、あるいは男性でも同様です。したがって、予めどのようなマルアライメントパターンが起こりうるのかを把握した上で、個別的に体表からのアライメント評価を行う必要があります。そして、修正可能なマルアライメントを的確に修正することで、十分に治療することができます。

 

<寛骨>

左右の寛骨と仙骨は、左右の仙腸関節と恥骨結合で連結した一つのリングを作っています。この関節の可動性が許す範囲で、互いに位置関係を変化させて骨盤のマルアライメントが形成されます。左右の寛骨の位置関係を把握するためには、上前腸骨棘(ASIS)や上後腸骨棘(PSIS)の触診に加え、徒手的リアラインテスト(アライメント矯正テスト)を用いることで検証していきます。

 

左右の寛骨は、以下のような位置関係を呈する可能性があります。

(1)前額面:寛骨下方回旋、仙腸関節上部の離開

(2)水平面:寛骨内旋、仙腸関節後部の離開

(3)矢状面:寛骨前後傾、仙腸関節への剪断ストレス         

さらにこれらの組み合わせにより、少々複雑なアライメントを呈することがありますが、組み合わせの有無に関わらず、各面上でのマルアライメントを正確に把握すれば治療に必要な情報が得られます。

 

ASISやPSISの触診が正しく行われているかどうかを判断するために、徒手的リアラインテストを行います。これは徒手的に対称かつ仙腸関節の適合性を改善するように骨盤に力を加えることで、前屈や後屈などの動作時痛が軽減されることを確認するテストです。例えば矢状面で右寛骨前傾位・左寛骨後傾位である場合、右寛骨には後傾方向に、左寛骨には前傾方向に力を加えて対称性を高めた状態とし、そのまま前後屈をさせて疼痛の減弱や可動域の拡大が得られることを確認します。

 

<仙骨>

・仙骨傾斜、尾骨変位、仙腸関節離開

仙骨は、仙腸関節の静的支持組織(靱帯や関節包)に引かれるようにして寛骨のアライメントに追従します。しかしながら、仙腸関節に不安定性がある場合は、寛骨の位置関係に追従せず、仙骨のマルアライメントが生じます。

 

例えば右寛骨前傾位・左寛骨後傾位である場合、後方から見て右PSISは上方へ、左PSISは下方に偏位します。仙骨がこれに追従すると、仙骨右側が上方へ、左側が下方に引かれることとなり、仙骨は左に傾斜(尾骨が右に偏位)します。目安としては、両PSISを結ぶ線分の直角二等分線上に尾骨が位置すれば、仙骨は概ね正常に追従していると判断します。

 

仙骨が追従しない場合、仙骨が傾斜して両寛骨を押し広げるように作用します。これによりPSIS間距離が拡大し、仙腸関節の離開が生じます。

 

・仙骨後傾、尾骨前方変位、仙腸関節counter nutation

一方、矢状面での仙骨の傾斜として注意すべきは、仙骨遠位部(尾骨)が前方に偏位し、仙骨が起き上がった状態となるアライメントがあります。これを仙骨の起き上がりあるいはカウンターニューテーションと呼びます。通常は荷重により仙骨底が前下方に押されるために仙骨は自然に前傾するのですが、尾骨周辺の筋や靱帯の癒着によりこの前傾が阻害されることがあります。

 

荷重位でも仙骨が前傾しないと、仙腸関節は不安定なままの状態で荷重運動を行わざるを得なくなります。すなわち、しまりの位置(close-packed position)が得られない骨盤となってしまいます。

 

 

上記のような仙骨のマルアライメントは、実は尾骨周辺での大殿筋と仙結節靭帯の癒着、あるいは内閉鎖筋と肛門挙筋の癒着などで生じ、それが固定化されます。これは骨盤後傾位での椅子坐位などで、長時間にわたって尾骨周囲の軟部組織が圧迫されることが原因と考えられます。また、尻もちや出産時の尾骨周囲の外傷によってより頑固な癒着が生じることがあります。

 

以上に対して、筋活動がどの程度有効なのか、またどの筋の活動が有効なのかを具体的に考えていく必要があります。それとともに、筋活動では解決できない癒着に対して、組織間リリースを用いて正常な滑走性を獲得することが不可欠です。

 

<筋の仙腸関節への作用>

1)腹横筋

 寛骨内旋に対してはマルアライメントを増強させ、寛骨下方回旋に対しては仙腸関節を安定させるという矛盾した機能を持ちます。したがって、寛骨内旋位の骨盤に対して腹横筋の単独収縮はむしろ痛みを増悪させる危険性があります。

 

(2)骨盤底筋

 尾骨を前方に引き出す機能と坐骨を内側に引き込む作用を持ちます。前者により、仙骨後傾が増強されます。実際のところ、椅子坐位での生活が長い現代人において、尾骨周囲の癒着による仙骨後傾位はめずらしくありません。これに対して骨盤底筋の単独収縮はむしろ仙骨後傾を増悪させ、荷重位でもclose-packed positionとならない仙骨アライメントを作っていく危険性があります。一方、後者は坐骨間距離の縮小を招き、前額面での寛骨の下方回旋を引き起こします。その結果、仙腸関節上部が離開し、PSIS間距離の増大を引き起こします。以上より、骨盤底筋の単独収縮は、仙腸関節の安定性に対して望ましくないアライメントを誘発することがわかります。

 

(3)大殿筋・胸腰筋膜・多裂筋

 これらは言うまでもなく仙腸関節の安定化筋であり、両者の組み合わせにより仙腸関節離開を改善方向に誘導します。ただし、必ずしもすべての骨盤においてこのような作用が得られるわけではありません。場合によっては大殿筋の収縮時に、対側の胸腰筋膜に緊張が伝達されない場合があるのです。そのような場合、大殿筋の緊張が同側の胸腰筋膜または同側の股関節屈筋群に伝達されてしまっている可能性があります。これには、組織間リリースを用いて異常な緊張伝達をいったん遮断することが必要となります。

 

まとめ

 筋群ごとに骨盤アライメントに対する役割が異なることを踏まえ、マルアライメントの評価に基づいた筋の選択が必要となります。

 

このようなマルアライメントパターンは周産期に特有のものではありません。妊娠後期であっても、アスリートと同様のアライメントパターンがあり、その治療を的確に行うことで寝返りやブリッジでの仙腸関節痛が解消されます。妊娠後期の急性腰痛であっても、治療方針は全く同じ。まず、骨盤のリアラインを行い、その上で最低限の筋活動で良アライメントを持続してもらいます。

 

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筆者:蒲田和芳

・広島国際大学総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 教授

・株式会社GLAB(ジーラボ) 代表取締役

・一般社団法人日本健康予防医学会 副理事長

・株式会社リベラシオン 代表取締役

 

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