第六回:PTが介護士になれば介護士不足は解消する?【半田一登先生】

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前回からの続き

「我々は何者か」ということを大切にしたい

ー 理学療法士が増えている一方で、介護士不足が叫ばれています。理学療法士が介護士になればいいという意見もありますが、会長のお考えをお聞かせください。

半田会長:私は、「我々は何者か」ということを大切にしたいと思っているので、それは拒否します。ただ、その時の会長次第ではないかとも思います。今後、会長が変わった際に、それを“職域の拡大”と捉えるのであれば、可能性は否定できないと思います。

 

ー でも現実として、病院によっては理学療法士がオムツ交換や夜勤をする場所もあるようです。

半田会長:それは経営者の理解が“お金”優先だからでしょう。看護師などがオムツ交換をしても点数にはなりませんが、理学療法士がADL指導とすれば点数になった時期がありましたからね。

 

でもそれは、私が考える本来の理学療法士のあり方とは違います。

 

ー ですが、こういった現実を目の当たりにすると、理学療法士が介護士になるとまでは言いませんが、近い仕事を任されることも増えてくるのではないかと思っています。知り合いが働いている回復期の病院では、モーニングケアと称して患者さんを7時に迎えにいって、トイレや朝食まで理学療法士がみることで1単位を申請するという話を聞きました。

半田会長:そういった運営をしている病院は今後、実績指数が出なくなり経営が成り立たなくなると思います。今、実績指数というものが非常に難儀なもので、しっかりとした理学療法含めた医療を提供しないと、そう簡単にはできません。

 

単位で稼ぐ時代から実績指数で稼ぐ時代になったのです。

 

この辺り、厚生労働省は非常にきちっとした調査をしています。今のデータでは、回復期ⅠとⅡでは、平均在院日数が減り在宅復帰率が上がりました。一方、回復期Ⅲでは平均在院日数が大幅に増え、在宅復帰率が下がっています。

 

つまりこれが何を表しているのか。“患者さんの状態からよくなる人とならない人を選別”しているということです。

 

そのような、お金目的での運営の方法はすぐに厚労省も気がつきます。

*実績指数(回復期リハビリテーション病棟):平成30年4月の診療報酬改定により、回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する保険医療機関は、毎年7月に、リハビリテーションの提供実績と実績指数について地方厚生(支)局長に報告することが義務付けられました。

自分の希少価値を高める

ー それでも、今若い療法士の人気の就職先として、回復期病院というのがあります。組織的に勉強ができるので、人気が高いようです。

半田会長:これから何を選ぶのか、と考えたときに“希少価値”があるのか否かが、決め手になるわけです。希少価値の一つとして、学問的に秀でているというのも確かに希少価値です。

 

あるいは、臨床能力が高い、というのも希少価値です。英語喋れる、中国語喋れるというのも希少価値です。あと重要なのは、“空白地帯”に行くということです。ここに行くだけで、希少価値になります。みんながいる所に居ても希少価値は高まりません。

 

自分自身の人生設計をするときに、自分の希少価値をどこに置いて、どう価値を高めるのか、ということが重要です。私たちの頃は、理学療法士というライセンスを持っていることだけでも希少価値でした。

 

今や、理学療法士のライセンスに希少価値はないわけです。ではどうやって、理学療法士の希少価値を高めるかと考えたときに、先輩の後を追っかけても希少価値にはならないでしょう。先輩たちがやっていなかった部分で、自分をどう生かすのか、という考えも重要です。

 

安心を求めるのであれば、それでもいいのですが、リスクを負わず安心の場所にいながらにして、「開業権を認めて欲しい」と言われても、自己矛盾は感じないのかなと思います。

 

これまで、様々なチャンスを広げてきたつもりです。今から何年前だったか、会長に就任後“予防理学療法”という言葉を使いはじめました。周囲からとても反発されました。

 

「会長たるもの、勝手にことばをつくるな」と。医学用語の中に、予防理学療法なんて言葉はないと、どこかの大学教授に言われましたが、「あろうがなかろうと関係ない」と思っています。作っていかない限り職域は広がりません。

 

話は戻りますが、何はともあれ希少価値です。それをつくるために何をしますか?ということです。その一つとして、協会の認定・専門をとるということも希少価値になるよう、協会でも取り組もうと思っています。

 

ー そうですよね。希少価値であれば、認定・専門の多い分野ではなく、褥瘡・切断などの分野を狙うとかを考えるべきですよね。ところで、認定・専門に関しても質問をよく受けるのですが、今後どのようにしていかれるのですか?やはり、持っていると持っていないのでは、差をつける、という考えでしょうか?

半田会長:今、協会として何をしようとしているかというと…。

続くー。

 

【目次】

第一回:PT養成校に入学するに至った不純な動機

第二回:聖域なき構造改革

第三回:理学療法士になって良かったとつくづく思う

第四回:世界の中心で理学療法と叫ぶ

第五回:開業権の話をしよう

第六回:PTが介護士になれば介護士不足は解消する?

第七回:競争社会を作る

第八回:理学療法士ライセンスの希少性

第九回:会員を守るために“戦える集団”をつくる

最終回:リハビリテーションの概念改革

 

半田一登会長のプロフィール

1971年、九州リハビリテーション大学校卒業 後、労働福祉事業団(現・独立行政法人労働者健康福祉機構)九州労災病院に入職。

1987年、社団法人日本理学療法士協会理事に就任し、2007 年より同協会会長を務める。  

日本健康会議 実行委員、チーム医療推進協議会 代表、一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団 理事長 等 

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