精神科領域のリハビリテーションを学ぶためデンマークへ

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2017年の10月にBBAMを修了し、2年間を通して精神科領域の理学療法を学ぶことができました。また各国の精神科領域に従事している理学療法士との議論は、書籍や文献だけでは得ることのできない非常に貴重な体験となりました。しかしBBAMを修了することが決まったとき、私はまだ必要なことを十分学んでいないことにも気付かされました。日本における精神科病院の平均在院日数は、267.7日(2017年時)と以前よりも短縮傾向にあります。

 

しかしノルウェーの3.2日、デンマークの4.1日(2013年時)と比べると、日本の在院日数の長さが伺えます。私は精神疾患をもつ方が早く地域へ帰れるように、精神科領域の理学療法を学びましたが、そもそもの社会システムが異なる日本の医療システムにおいて、北欧で用いられている理学療法をそのまま普及させることは非常に困難ではないかと感じました。そこでBBAM修了後は、各国における精神科領域のリハビリテーションを学ぶため、先生と友人のつてを頼りに他国の大学や病院を訪問することにしました。2017年にはデンマークの3つの精神科病院と大学へ、2019年にはフィリピンの公立病院と大学へと訪れました。

 

訪問したデンマークの大学

 

デンマークでは精神科医療のリハビリテーションを中心に学ぶことができたため、今回はデンマークでの体験を述べていきます。デンマークの精神科病院には理学療法士が常駐しており、精神疾患患者への運動療法が積極的に取り入れられていました。病院内にはリハビリテーション棟があり、マシントレーニングやBBATを行うための部屋が用意されています。また、デンマークでの運動療法は院内だけに留まらず、街中で1時間以上のランニングや自転車ツーリングなど様々な介入方法が用いられています。

 

また大学教育においても、精神疾患に対する理学療法の講義が取り入れられており、精神科領域に興味をもつ理学療法学生も多いそうです。デンマークは理学療法士が関わって精神疾患患者の地域移行を実現した数少ない国の一つですので、精神科領域の地域移行を目指す日本にとって、良いロールモデルになるのではないかと思います。今後も様々な国を訪れ、日本が取り入れることができる医療システムを学び続けたいと思います。

 

デンマークにある精神科病院のリハビリテーション室と運動療法の様子

 

留学後の活動

私はBBAMを修了する年の4月に、大学院の博士課程(後期)へと進学しました。ノルウェーでは精神科領域の理学療法を、デンマークでは精神科領域のリハビリテーションを学び、現在は精神疾患の研究活動に取り組んでいます。博士課程で取り組んでいるテーマは「統合失調症と運動学習」です。統合失調症の症状とモーターコントロールとの関連性を探り、適切な運動療法の開発に寄与したいと考えています。発展途上の領域ですので、少しでも価値のある研究に取り組みたいと考えています。また研究や臨床で利用できるアプリケーションの開発にも力を入れています。

 

医療におけるテクノロジーの発展は日々目覚ましいものがありますが、リハビリテーション領域で利用されているものは限られており、一部の研究や病院等でしか用いられていないと思います。そこで、臨床研究や一般病院等でも対象者の評価や介入に利用しやすいアプリケーションの開発に取り組んでいます。精神科病院に理学療法が取り入れられることも重要だと思いますが、理学療法士がいなくても同等な介入ができる環境を目指して開発を続けていきたいと思います。

 

開発中の認知機能向上アプリ(左)と運動学習能力測定アプリ(右)

 

本連載では、留学というテーマを基に、海外における精神科領域の理学療法と私の活動について概説させていただきました。精神科領域におけるリハビリテーションの問題点を分析し、より良い方法を提案できるように、視座を高く保ちながら、今後も学び続けたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。ご覧いただいた皆様が少しでも、留学や精神科領域の理学療法に関心を寄せていただければ幸いです。

 

最後になりますが、私が大学生のときから精神科領域の理学療法についてご教授いただき、留学中にも惜しみない支援をいただいた、神戸学院大学の山本大誠先生に心から感謝申し上げます。

 

第一回:精神科領域における理学療法の可能性を求めて|北欧での学びと経験

第二回:Basic Body Awareness Therapy(BBAT)とは?

第三回:精神科領域のリハビリテーションを学ぶためデンマークへ

 

経歴

学歴

2011-2015 神戸学院大学総合リハビリテーションテーション学科理学療法学専攻

2015-2017 広島大学大学院医歯薬保健学研究科保健学専攻博士課程前期(修士:保健学)

2015-2017 Bergen University College Basic Body Awareness Methodology(認定BBATセラピスト)

2017-    広島大学大学院医歯薬保健学研究科保健学専攻博士課程後期

 

職歴

2015- 株式会社 アールプラス

2015- 医療法人社団 加川整形外科病院

2017- 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 クォリファイド・ティーチング・アシスタント

2018- 医療法人社団 福原リハビリテーション整形外科・内科医院

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