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保育所等訪問支援と保育園巡回相談は別もの
最近よく耳にするようになった保育所等訪問支援は児童福祉法に位置づけられた社会支援事業で、平成24年に創設された。なみに、従来より行政主体で“保育園巡回相談“というサービスはあったが、これらは性質が異なる。
保育所等訪問支援とは
保育所や幼稚園、認定こども 園、学校、放課後児童クラブなど集団生活を営む施設を訪問し、障害のない子どもとの集団生活に適応するために専門的な支援を行うもの。
サービスの
▷申請者:保護者
▷提供者:児童指導員又は保育士を基本に、PT・OT・STなどのリハスタッフや心理担当職員など
よく見かけるのは、児童発達支援事業所に所属する専門職が事業所に通所する子ども(並行通園児)の保育園に訪問する形。具体的な支援としては、子どもが集団適応することを本人の状態と環境面から考え働きかける「直接支援」と、保育スタッフの子どもへの理解をより深めるための助言をする「間接支援」だ。
保育園巡回相談とは
障害に関する専門的知識・経験を有するものを巡回相談員に委嘱し、対象地域の保育所・幼稚園等において障害児に対する保育指導内容・方法に関する指導・助言等を行う間接的支援の1つ。
サービスの
▷申請者:保育所や幼稚園、学校
▷提供者:行政(教育センターなど)から委託を受けた専門家
保育所等訪問支援では直接支援の中で“関わり方のモデルを示す“という形で保育スタッフに情報伝達を行う性質があるが、巡回相談は間接支援中心のため、保育所が専門家からのアドバイスをもとに自ら対応を考えることが求められる。
また、保育所等訪問は派遣スタッフが対象児のことを知っている状態で継続的に訪問する一方で、巡回相談は園側がリストアップした子の相談に乗る形での訪問のため、中には一度きりしか会わない子もおり、関わりの深さも異なる。
言語聴覚士が保育園で働くとは
巡回相談や保育所等訪問支援を行う言語聴覚士が求められる力は、言語発達だけに留まらず『広く子どもの発達をみる力』だ。幼児期の言語発達は生活習慣や身体機能、感覚発達に支えられているからだ。
特に巡回相談では、検査ができないかつ短時間という状況の中で、対象児の行動を観察し、日々の保育での困り事やこれまでの生活背景を想像しながら、素早く子どもの発達段階を見立てる力が求められる。
また、環境の性質上、他児の動向や先生との関係性など、個別言語療育に比べ子どもに影響を与える要因が複合的である点が難しい。個別療育の視点だけでは太刀打ちできない現状は間違いないため、言語聴覚士といえど“総合力勝負“なのだ。
非主流形にも意義がある
障害のある子どもへの言語聴覚士の関わりは、今も“個別“が主流だ。最も多いのは病院や療育センターの外来に訪れ、個室に入って言語療法を受ける形だ。
しかし、小児分野の言語聴覚士の人材不足や、通う時間の捻出や教育意識の差により一定の保護者しかチャンスがないという問題もある。
その問題解決に一役買うのが保育園訪問だ。外来に通えなくても保育園に通っている子どもは多数いるので、“集団で気になる子をキャッチアップ“できる。
そして改めて考えたいのは、コミュニケーションを扱う言語聴覚士こそ、保育や教育の場など“子どもの社会性をのぞき見する“働き方を推進していく意義があるということだ。
お恥ずかしい話だが、私は医療機関で個別言語療法を行なっていた時、自分とはそれなりにコミュニケーションを取れる子が、“保育園では先生に注意されてばかり“の理由が想像できなかった。こんな経験がある言語聴覚士は他にもいると思う。
個別言語療法自体は必要なことだ。しかし、それと同じくらい子どもが個別言語療法の結果、どのように社会で力を発揮しているかも知ると良いだろう。
個別療育と集団生活をつなぐ保育所等訪問支援や、個別には来れない子ども達をピックアップできる保育園巡回相談はセラピストの業界ではまだまだ非主流だ。しかし、前述したような大きな価値があるだけでなく、言語聴覚士という仕事との親和性もあるのではないだろうか。
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参考文献
保育所等訪問支援の効果的な実施を図るための手引書(2018.厚生労働省)
保育所の特性を踏まえた巡回相談方法の検討-基本的生活習慣の形成を重視する保育所の事例を通して- (2014.野澤 純子、藤後 悦子、石田 祥代)
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