脊椎のスペシャルテスト26種|手順・陽性所見・感度特異度まとめ【整形外科的検査】

76331 posts

脊椎のスペシャルテストは、頸椎症性神経根症・胸郭出口症候群・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・仙腸関節障害など、頸部痛・腰背部痛の責任部位を絞り込む臨床推論の起点です。本記事ではPT/OTの臨床で使用頻度の高い26のスペシャルテストを、疾患カテゴリ別に「手順/陽性所見/対象組織/感度・特異度」と「臨床のポイント」で整理します。SLRやSpurlingなど代表的テストも単独では特異度が低いため、組み合わせ判定が前提となります。

目次

無料会員特典

本記事の「脊椎スペシャルテスト 評価用紙」+「脊椎スペシャルテスト 臨床リファレンス(PDF)」を、無料会員になると無料でダウンロードできます(記事末)。

特典ダウンロードへ →

1. 頸椎椎間関節症・頸椎症性神経根症

頸椎神経根症の評価では、Wainner 2003で、Spurling・頸椎ディストラクション・上肢神経テンション(ULTT-A)・患側頸椎回旋<60度の4項目クラスタが、頸椎神経根症の可能性を高める所見として報告されています[1]。

Jackson Test(ジャクソンテスト)

手順:患者座位。検査者は頭部を後方から把持し、頸椎を伸展+同側側屈させ、頭頂部から下方への軸圧を加える。

陽性所見:同側上肢への放散痛・しびれ。

対象組織:頸椎神経根(同側)、椎間関節

感度/特異度:Spurlingに類似の範囲(感度 30〜50%/特異度 74〜93%)とされるが、Jackson単独の診断精度を示す一次研究は乏しい
(Spurlingの精度はTong 2002[2]を参照)

臨床のポイント:Spurlingに比べ伸展優位の負荷で、椎間孔をより狭小化させる。失神・めまい・耳鳴りが出現したら即中止し、椎骨動脈系の評価を優先。

Spurling Test(スパーリングテスト)

手順:患者座位。検査者は頸椎を同側側屈+(軽度)伸展+同側回旋させ、頭頂部から下方への軸圧を加える。

陽性所見:同側上肢への放散痛・しびれ(皮膚分節に沿った)。

対象組織:頸椎神経根(椎間孔狭窄)

感度/特異度:感度 30〜50%/特異度 74〜93%
Tong 2002[2]

臨床のポイント:頸椎神経根症の代表的テスト。特異度が高く、陽性なら神経根症の確実性が増す。Wainnerの4項目陽性で事後確率が大きく上昇する。

Shoulder Depression Test(肩引き下げテスト)

手順:患者座位。検査者は患側肩を下方に押し下げ、同時に対側へ頸椎を側屈させる。

陽性所見:上肢への放散痛・しびれ。

対象組織:頸椎神経根、腕神経叢

感度/特異度:限定的データ(信頼性研究は少ない)

臨床のポイント:頸椎神経根の伸張テストとして補助的に使用。腕神経叢圧迫の評価にも応用される。

Eaton Test(イートンテスト)

手順:患者座位。検査者は患側上肢を90度外転位として頸椎を反対側へ側屈させ、患側肩に下方への牽引を加える。

陽性所見:頸部・上肢の疼痛、しびれ。

対象組織:頸椎神経根、腕神経叢

感度/特異度:限定的データ

臨床のポイント:Shoulder Depressionと類似のメカニズム。腕神経叢への牽引ストレス評価。

2. 胸郭出口症候群(TOS)

胸郭出口症候群は、斜角筋三角・肋鎖間隙・小胸筋下のいずれかで腕神経叢・鎖骨下動静脈が圧迫される病態です。各テストは健常者でも偽陽性が多く単独の特異度が低いため、複数テストの陽性+症状の再現性・左右差で総合判断します(確立した診断規則ではありません)[3]。

Adson Test(アドソンテスト)

手順:患者座位、患側上肢は体側で軽度外転。検査者は橈骨動脈の脈拍を触知し、患者に深呼吸させながら頸部を患側へ回旋・伸展させる。

陽性所見:橈骨動脈拍動の減弱・消失、または症状再現。

対象組織:斜角筋三角での鎖骨下動脈・腕神経叢圧迫

感度/特異度:報告例 感度 79%/特異度 76%(健常者でも偽陽性が多く確立した感度・特異度は乏しい)
Plewa 1998[3]

臨床のポイント:脈拍消失だけで陽性とせず、症状再現を併用する。健常者でも陽性率が高いため特異度評価には注意。

Morley Test(モーリーテスト)

手順:患者座位。検査者は鎖骨上窩(前斜角筋・中斜角筋間)を母指で圧迫する。

陽性所見:上肢への放散痛・しびれ。

対象組織:腕神経叢(斜角筋三角部)

感度/特異度:報告例 感度 79%/特異度 18%(特異度が低く確立値は乏しい)
Sanders 2008[4]

臨床のポイント:神経型TOSのスクリーニング。圧迫強度を一定にする練習が必要。

Eden Test(エデンテスト)

手順:患者座位、両肩を後下方に引き下げ、胸を張った姿勢を1分保持する。検査者は橈骨動脈を触知。

陽性所見:橈骨動脈拍動の減弱、または上肢の症状再現。

対象組織:肋鎖間隙の血管・神経

感度/特異度:限定的データ、健常者でも陽性率高い

臨床のポイント:肋鎖間隙でのTOSを評価。Adsonと組み合わせて使用。

Wright Test(ライトテスト)

手順:患者座位。検査者は患側上肢を90度外転+外旋+肘90度屈曲位として、橈骨動脈を触知しながら1分保持する。

陽性所見:橈骨動脈拍動の減弱、または症状再現。

対象組織:小胸筋下での神経・血管圧迫

感度/特異度:報告例 感度 70%/特異度 53%(健常者でも陽性が多く確立値は乏しい)
Sanders 2008[4]

臨床のポイント:小胸筋症候群(神経血管圧迫)の評価。健常者でも30%程度で陽性となるため症状再現を重視。

Roos Test(ルーステスト/EAST:Elevated Arm Stress Test)

手順:患者座位、両肩90度外転+外旋・肘90度屈曲(降参肢位)。3分間ゆっくりとグーパー運動を繰り返す。

陽性所見:3分以内に上肢の疲労、しびれ、疼痛、脱力で挙上保持できない。

対象組織:腕神経叢、鎖骨下動静脈

感度/特異度:報告例 感度 84%/特異度 30%(健常者でも脱落が多く確立値は乏しい)
Plewa 1998[3]

臨床のポイント:TOSの代表的機能テスト。健常者でも疲労や軽度しびれは出現するため「症状の再現性・左右差」で判定する。

3. 椎骨脳底動脈循環不全

Vertebral Artery Test(椎骨動脈テスト)

手順:患者背臥位。検査者は頭部を保持し、頸部を伸展+同側回旋位に他動的に動かし、30秒〜1分保持する(左右両側で実施)。

陽性所見:めまい、悪心、複視、構音障害、霧視、失神、眼振などの「5D's and 3N's」(Dizziness, Drop attacks, Diplopia, Dysarthria, Dysphagia / Nystagmus, Nausea, Numbness)。

対象組織:椎骨動脈(C1-C2レベルでの圧迫・狭窄)

感度/特異度:診断ツールとしての妥当性は限定的で、近年は臨床推論ツールとしての位置づけが見直されている
Hutting 2013[5]

臨床のポイント:陽性所見が出た時点で即中止し、医師にコンサルト。陰性でも椎骨動脈損傷を完全には除外できない。頸椎マニピュレーション前のスクリーニングとして従来用いられてきたが、近年は問診・リスク因子評価の重要性が強調されている。

4. 頸椎脱臼・亜脱臼

環軸関節(C1-C2)の不安定性は外傷後やリウマチ性関節炎で生じます。検査前に画像所見の確認が原則で、軽度のストレスから慎重に行います。

Atlas Transverse Ligament Stress Test(環椎横靱帯ストレステスト)

手順:患者背臥位。検査者は両母指で C2の棘突起を固定し、両示指でC1(環椎)の側方を抱え、ゆっくり前方に押し上げる。

陽性所見:軟らかい end-feel、めまい、悪心、上肢しびれ、頸部の不安定感。

対象組織:環椎横靱帯(C1とC2を結ぶ主要安定機構)

感度/特異度:限定的データ、リウマチ患者では信頼性報告あり

臨床のポイント:陽性なら即中止し画像評価へ。リウマチ性関節炎では環軸亜脱臼が高頻度に存在するため、徒手療法前の必須スクリーニング。

Alar Ligament Stress Test(翼状靱帯ストレステスト)

手順:患者背臥位または座位。検査者はC2の棘突起を母指と示指で固定し、頭部を反対側へ側屈または回旋させる。

陽性所見:C2棘突起の連動運動が即座に感じられない(翼状靱帯が機能していれば、頭部側屈の直後にC2が同方向へ回旋する)。

対象組織:翼状靱帯(環椎・歯突起・後頭骨を結ぶ)

感度/特異度:検者間信頼性 κ 0.34〜0.69
Kaale 2008[6]

臨床のポイント:上位頸椎の不安定性を評価。むち打ち損傷後の評価で重要だが、検者間信頼性は中等度。

5. 胸椎椎体骨折

Soto-Hall Test(ソート・ホールテスト)

手順:患者仰臥位。検査者は片手で胸骨を軽く圧迫して体幹を固定し、他方の手で後頭部を支えて頭頸部をゆっくり屈曲させる。

陽性所見:胸背部の限局性疼痛。

対象組織:頸胸椎(椎体・脊髄)。骨性・神経学的異常の古典的スクリーニング

感度/特異度:限定的データ(古典的所見)。診断精度研究は乏しく、頸胸椎の骨性・神経学的異常の広いスクリーニングとして用いる

臨床のポイント:高齢者・骨粗鬆症患者の急性背部痛で実施。画像(X線・MRI)と組み合わせて確定診断。

6. 胸部の神経根障害

Beevor's Sign(ビーバー徴候)

手順:患者背臥位。両手を頭部後ろで組み、半身起こし運動(curl-up)をゆっくり行うよう指示。検査者は臍を観察する。

陽性所見:臍が頭側へ移動する。左右差がある場合は偏位を伴うことがある。

対象組織:T10〜T12髄節(腹直筋下部の麻痺。脊髄損傷・神経筋疾患でも陽性となり胸部神経根に限定しない)

感度/特異度:限定的データ(神経学的徴候としての位置づけ)

臨床のポイント:T10髄節以下の運動麻痺(脊髄損傷、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーなど)の検出に有用。

7. 腰椎椎体骨折・腰椎挫傷・捻挫

Spinous Process Tap Test(棘突起叩打テスト)

手順:患者腹臥位または座位前屈。検査者は反射ハンマーまたは指先で各棘突起を叩打する。

陽性所見:限局性の鋭い疼痛。

対象組織:腰椎椎体(圧迫骨折・椎体損傷)

感度/特異度:報告例 感度 27〜88%/特異度 90〜94%(脊椎骨折)。叩打痛単独より年齢・外傷・骨粗鬆症等のred flags+画像評価を重視
Henschke 2009[7]

臨床のポイント:高齢者・転倒既往・ステロイド長期使用者で重要。陽性なら骨折を強く疑い画像評価へ。

無料会員特典

本記事の「脊椎スペシャルテスト 評価用紙」+「脊椎スペシャルテスト 臨床リファレンス(PDF)」を、無料会員になると無料でダウンロードできます(記事末)。

特典ダウンロードへ →

8. 椎間関節損傷・腰椎複合疾患

Kemp Test(ケンプテスト)

手順:患者座位または立位。検査者は患者の体幹を伸展+同側側屈+同側回旋させ、軸圧を加える。

陽性所見:腰部の限局性疼痛、または下肢への放散痛。

対象組織:椎間関節、椎間孔(神経根)

感度/特異度:診断精度は限定的で単独診断には不適。報告例 感度 50〜70%/特異度 67〜100%(病態・参照基準で大きく変動)
Stuber 2014[8]

臨床のポイント:椎間関節由来の痛みと神経根症状を切り分ける。下肢放散痛なら神経根症、限局性腰痛なら椎間関節を疑う。

9. 腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症

SLR系テストは坐骨神経・L4-S1神経根の伸張ストレステスト。Cochraneレビュー(2010)ではSLRの感度91%・特異度26%と報告されており、感度高・特異度低の典型です[9]。

Straight Leg Raise Test(SLR/下肢伸展挙上テスト/Lasègue徴候)

手順:患者背臥位、膝伸展位。検査者は患側下肢を保持し、ゆっくり挙上する。

陽性所見:30〜70度の挙上で、下肢後面に放散する坐骨神経痛様疼痛。

対象組織:坐骨神経、L4・L5・S1神経根

感度/特異度:感度 91%/特異度 26%(椎間板ヘルニア)
van der Windt 2010[9]

臨床のポイント:感度が高く、SLR陰性は椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛様の下肢放散痛の可能性を下げる所見として解釈する(神経根症全般を単独で除外するものではない)。腰痛のみは陽性とせず、放散痛・皮膚分節での痺れを伴う場合のみ陽性とする。

Bragard Test(ブラガード徴候)

手順:SLRで疼痛が出現した角度から数度下げて疼痛が消失する位置で停止。検査者は足関節を背屈させる。

陽性所見:足関節背屈で再度坐骨神経痛様疼痛が再現。

対象組織:坐骨神経、L5・S1神経根

感度/特異度:限定的データ。SLR陽性後に神経伸張性疼痛を補強する補助テストとして用いる(確立した感度・特異度は乏しい)
van der Windt 2010[9]

臨床のポイント:SLR陽性後の補強テスト。SLR陽性+Bragard陽性で神経根症の確実性が増す。

Lasègue Sign(ラセーグ徴候)

手順:患者背臥位。検査者は股関節90度屈曲位で膝を屈曲位とし、その後ゆっくり膝を伸展させる。

陽性所見:下肢後面の坐骨神経痛様疼痛。

対象組織:坐骨神経、L4-S1神経根

感度/特異度:SLRと同等(同じ伸張機構)

臨床のポイント:SLRと混同されることが多いが、本来は「股関節90度屈曲+膝伸展」というSLRの変法。日本ではSLRとほぼ同義で扱われる。

Bowstring Sign(ボウストリング徴候)

手順:SLRで疼痛が出る角度まで挙上し、膝を軽度屈曲して疼痛を消失させる。検査者は膝窩中央の坐骨神経走行部を母指で圧迫する。

陽性所見:圧迫で坐骨神経痛様疼痛が再現。

対象組織:坐骨神経(伸張+直接圧迫)

感度/特異度:限定的データ

臨床のポイント:神経根性疼痛と筋肉性疼痛の鑑別補助。神経走行部の圧迫で症状再現があれば神経性疼痛を支持する所見。

Flip Test(フリップテスト)

手順:患者座位、両膝屈曲90度。検査者は患側膝をゆっくり伸展させる。

陽性所見:膝伸展時に体幹を後方に倒す("flip")反応。

対象組織:坐骨神経(座位でのSLR)

感度/特異度:感度 92%(機能性・非器質性所見の補助。Boyd 1981は古典的で確立値は乏しい)
Boyd 1981[10]

臨床のポイント:座位SLRで反応がないのに仰臥位SLRが陽性なら、非器質性(機能性)所見の可能性。Waddell徴候のひとつだが『詐病』とは断定しない。

Hoover Test(フーバーテスト)

手順:患者背臥位。検査者は両踵下に手を入れて支え、患者に患側下肢を挙上するよう指示する。

陽性所見:機能性下肢脱力では、随意的な患側挙上時に対側(健側)踵の下方圧が乏しい一方、対側股関節の屈曲抵抗時には患側の伸展力が出現する(器質的麻痺との鑑別)。

対象組織:神経学的所見の真偽判定(機能性麻痺の鑑別)

感度/特異度:感度 63%/特異度 100%(機能性下肢脱力)
McWhirter 2011[11]

臨床のポイント:機能性神経障害(FND)の検出に有用。器質的麻痺と機能性麻痺の鑑別に。

※動画なし:Hoover Testは現状動画未掲載。次回更新時に追加予定。

SLRと変法

10. 大腿神経根障害(L2-L4)

Femoral Nerve Stretch Test(FNST/大腿神経伸展テスト/Reverse Lasègue)

手順:患者腹臥位。検査者は患側膝を屈曲させ、踵を殿部に近づけながら股関節を他動的に伸展させる。

陽性所見:大腿前面〜鼠径部への放散痛・しびれ。

対象組織:大腿神経、L2・L3・L4神経根

感度/特異度:報告により大きく変動。高位腰椎(L2〜L4)神経根障害では有用な補助所見だが、対象集団・参照基準で診断精度は異なる
Suri 2011[12]

臨床のポイント:SLRより陽性率は低いが、L2-L4高位ヘルニアでは特異度高。大腿前面痛主訴の腰椎神経根症で必ず実施。感度・特異度は神経根レベル・対象集団・参照基準で変動するため目安。

11. 下肢の動脈循環障害

Buerger Test(バージャーテスト/下肢拳上テスト)

手順:患者背臥位。検査者は両下肢を45度挙上し、1〜2分保持。その後、座位に戻し、下肢を垂下させる。

陽性所見:挙上時に足底蒼白、垂下時に色調回復・静脈充満が通常より遅延する。

対象組織:下肢動脈(PAD:末梢動脈疾患)

感度/特異度:感度・特異度ともに限定的、ABI(足関節上腕血圧比)の方が信頼性高い
Khan 2006[13]

臨床のポイント:間欠性跛行を訴える患者で実施。陽性所見ありなら血管外科コンサルト・ABI測定へ。

12. 仙腸関節捻挫・仙腸関節障害

仙腸関節由来の腰殿部痛は、Laslettの5テストクラスター(圧迫・離開・FABER・大腿スラスト・Gaenslen)で3つ以上陽性なら仙腸関節由来痛の可能性が大きく上がります(Laslett 2005で感度約91〜94%・特異度約78%)[14]。

Gaenslen Test(ゲンスレンテスト)

手順:患者背臥位、ベッド端に患側臀部を出す。健側膝を抱えて骨盤を後傾位に固定し、検査者は患側下肢をベッド外に下垂させ、さらに下方へ押し下げる。

陽性所見:仙腸関節部の疼痛。

対象組織:仙腸関節(前方関節包・靭帯)

感度/特異度:感度 50〜70%/特異度 70〜90%
Laslett 2005[14]

臨床のポイント:単独より、Laslettクラスター(圧迫・離開・FABER・大腿スラスト・Gaenslen)の3つ以上陽性で判定する。

Compression Test / Distraction Test(圧迫・離開テスト/旧称: Pelvic Instability Test)

手順:患者背臥位。検査者は両側のASIS(上前腸骨棘)に手を当て、内側下方へ押し込む(圧迫テスト)。次に両ASISの内側に手を当て、外側下方へ押し開く(離開テスト)。

陽性所見:仙腸関節部の疼痛。

対象組織:仙腸関節靭帯

感度/特異度:圧迫 感度 69%/特異度 69%、離開 感度 60%/特異度 81%
Laslett 2005[14]

臨床のポイント:骨盤不安定性を多角的に評価。妊娠後期・産後の恥骨結合・仙腸関節障害で頻用。

13. 臨床応用のコツと注意点

頸椎は「Wainner 4項目」でクラスタリング

頸椎神経根症の評価では、Spurling・頸椎ディストラクション・上肢神経テンション(ULTT-A)・患側頸椎回旋<60度の4項目中3つ以上陽性で事後確率が大きく上昇(報告では約94%)、4つ全て陽性で約99%(Wainner 2003[1])。陽性的中率は有病率に依存するため目安。単独テストではなく、必ず4項目併用で判定する。

SLRは「感度高・特異度低」を理解

SLR陽性=椎間板ヘルニアではなく、SLR陰性は椎間板ヘルニアによる下肢放散痛の可能性が下がる、と読む(神経根症全般の単独除外ではない)。陽性なら他の神経学的所見(皮膚分節の感覚・腱反射・徒手筋力)と組み合わせる。

仙腸関節は「Laslettクラスター」3つ以上陽性で判定

圧迫・離開・FABER・大腿スラスト・Gaenslenの5テスト中3つ以上陽性で仙腸関節由来痛の可能性が上がる(Laslett 2005で感度約91〜94%・特異度約78%)[14]。陽性的中率は有病率に依存。単独陽性では確定診断は不可。

椎骨動脈テストの位置づけは要更新

従来は頸椎マニピュレーション前のスクリーニングとして実施されてきましたが、現在のIFOMPT(国際整形外科徒手療法連盟)ガイドラインでは「リスク因子問診と血管症状の総合評価が必須」とされ、徒手検査単独での安全性評価は推奨されていません[5]。

Red Flagを必ずスクリーニング

脊椎評価では、夜間痛・進行性下肢麻痺・膀胱直腸障害・体重減少・発熱・既往(がん・骨粗鬆症・ステロイド)など Red Flag を必ず聴取。陽性なら徒手評価より医師コンサルトを優先。

関連記事(他関節のスペシャルテスト)

無料会員特典

本記事の「脊椎スペシャルテスト 評価用紙」+「脊椎スペシャルテスト 臨床リファレンス(PDF)」を、無料会員になると無料でダウンロードできます(記事末)。

特典ダウンロードへ →

14. 参考文献

  1. Wainner RS, Fritz JM, Irrgang JJ, Boninger ML, Delitto A, Allison S. Reliability and diagnostic accuracy of the clinical examination and patient self-report measures for cervical radiculopathy. Spine. 2003;28(1):52-62.
  2. Tong HC, Haig AJ, Yamakawa K. The Spurling test and cervical radiculopathy. Spine. 2002;27(2):156-9.
  3. Plewa MC, Delinger M. The false-positive rate of thoracic outlet syndrome shoulder maneuvers in normal subjects. Acad Emerg Med. 1998;5(4):337-42.
  4. Sanders RJ, Hammond SL, Rao NM. Thoracic outlet syndrome: a review. Neurologist. 2008;14(6):365-73.
  5. Hutting N, Verhagen AP, Vijverman V, Keesenberg MD, Dixon G, Scholten-Peeters GG. Diagnostic accuracy of premanipulative vertebrobasilar insufficiency tests: a systematic review. Man Ther. 2013;18(3):177-82.
  6. Kaale BR, Krakenes J, Albrektsen G, Wester K. Clinical assessment techniques for detecting ligament and membrane injuries in the upper cervical spine region--a comparison with MRI results. Man Ther. 2008;13(5):397-403.
  7. Henschke N, Maher CG, Refshauge KM. A systematic review identifies five "red flags" to screen for vertebral fracture in patients with low back pain. J Clin Epidemiol. 2009;62(7):710-8.
  8. Stuber K, Lerede C, Kristmanson K, Sajko S, Bruno P. The diagnostic accuracy of the Kemp's test: a systematic review. J Can Chiropr Assoc. 2014;58(4):358-67.
  9. van der Windt DA, Simons E, Riphagen II, Ammendolia C, Verhagen AP, Laslett M, et al. Physical examination for lumbar radiculopathy due to disc herniation in patients with low-back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(2):CD007431.
  10. Boyd MC, Howe JF. The flip test in the diagnosis of malingering. Surg Neurol. 1981;15(6):450-1.
  11. McWhirter L, Stone J, Sandercock P, Whiteley W. Hoover's sign for the diagnosis of functional weakness: a prospective unblinded cohort study. J Psychosom Res. 2011;71(6):384-6.
  12. Suri P, Rainville J, Katz JN, Jouve C, Hartigan C, Limke J, et al. The accuracy of the physical examination for the diagnosis of midlumbar and low lumbar nerve root impingement. Spine. 2011;36(1):63-73.
  13. Khan NA, Rahim SA, Anand SS, Simel DL, Panju A. Does the clinical examination predict lower extremity peripheral arterial disease? JAMA. 2006;295(5):536-46.
  14. Laslett M, Aprill CN, McDonald B, Young SB. Diagnosis of sacroiliac joint pain: validity of individual provocation tests and composites of tests. Man Ther. 2005;10(3):207-18.
この記事の監修者
執筆者の写真
今井俊太
理学療法士(フィジカルセラピスト)

理学療法士として整形外科クリニックで3年間勤務し、肩・膝・腰など運動器疾患のリハビリテーションに従事。BCリーグ(プロ野球独立リーグ)のチームトレーナーとしてアスリートのコンディショニングに携わるほか、東京2020パラリンピックでは理学療法士ボランティアとして車椅子バレーの競技サポートに参加。
 

会員特典ダウンロード

下記2点を無料会員登録(30秒・無料)でダウンロードいただけます。すでに会員の方はログインで表示されます。

脊椎のスペシャルテスト26種|手順・陽性所見・感度特異度まとめ【整形外科的検査】

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事