令和3年度介護報酬改定の主な事項について1月18日、第199回社会保障審議会介護給付費分科会にて発表された。
シリーズ第11回目の記事となる今回は通所リハビリテーション(以下通所リハ)の加算部分していきたい。
【本日の目次】
・各加算の実態と改定による変化を把握する
① リハビリテーションマネジメント加算(以下、リハマネ加算)
・改定ポイントを再度整理する
各加算の実態と改定による変化を把握する
① リハマネ加算
加算の概要は以下の通り
リハビリテーションマネジメントは調査、計画、実行、評価、改善のサイクルの構築を通じて、「心身機能」、個人として行う食事等の日常生活動作や買い物等の手段的日常生活動作といった「活動」をするための機能、家庭で役割を担うことや地域の行事に関与するといった「参加」をするための機能について、バランスよく働きかけるリハビリテーションが提供できているかを継続的に管理することを評価する。
平成30年度改定の方向性の整理図
平成30年度の改定では
・医師の詳細な指示の明確化
・ICTを活用した医師のリハビリテーション会議への参加承認
・利用者家族へのリハビリテーション計画等の説明
・データ提出・フィードバック
を基軸とした加算設定が行われた。
それらを踏まえて本改訂までに上がった課題は以下のとおり
・加算の算定率(R1.10時点)
※89.1%の事業所でリハマネ加算を算定
リハマネ加算Ⅰ 13.0%
リハマネ加算Ⅱ 23.6%
リハマネ加算Ⅲ 49.4%
リハマネ加算Ⅳ 3.1%
・リハマネ加算Ⅱ~Ⅳの届出がある場合は、ない場合と比較し、医師が、運動の負荷量、リハビリテーションの方針、修了の目安・時期について、指示する割合が有意に高い。
・ 医師による修了の目安・時期について具体的指示がある場合、ない場合と比較し、有意に通所リハビリテーションの修了に結びついていた。
・リハマネ加算Ⅱ~Ⅳを算定する利用者は、それ以外の者と比較し、リハ開始時から6ヶ月後、手段的日常生活動作(IADL)と活動範囲(LSA*)が有意に改善。
【令和3年度改定ポイントの整理】
概要
自立支援・重度化防止に向けた更なる質の高い取組を促す観点から、リハマネ加算について以下の見直しを行う。
・報酬体系の簡素化と事務負担軽減の観点から、リハマネ加算(Ⅰ)及び介護予防のリハマネ加算は廃止し、同加算の算定要件は基本報酬の算定要件とし、基本報酬で評価を行う。【告示改正】
・訪問リハビリテーションと通所リハビリテーションの評価の整合性を図る観点から、リハマネ加算(Ⅱ)及び(Ⅲ)の評価の見直しを行う。【告示改正】
・リハマネ加算(Ⅳ)を廃止。定期的なリハビリテーション会議によるリハビリテーション計画の見直しが要件とされるリハマネ加算(Ⅱ)・(Ⅲ)において、事業所がCHASE・VISITへデータを提出しフィードバックを受けPDCAサイクルを推進することを評価する。【告示改正】
・CHASE・VISITへの入力負担の軽減やフィードバックにより適するデータを優先的に収集する観点から、リハビリテーション計画書の項目について、データ提供する場合の必須項目と任意項目を設定する。【通知改正】
・リハマネ加算の算定要件の一つである「定期的な会議の開催」について、利用者の了解を得た上で、テレビ会議等の対面を伴わない方法により開催することを可能とする。【通知改正】
<改定前>
リハマネ加算(Ⅰ)
330単位/月
リハマネ加算(Ⅱ)
同意日の属する月から6月以内850単位/月
同意日の属する月から6月超530単位/月
リハマネ加算(Ⅲ)
同意日の属する月から6月以内1,120単位/月
同意日の属する月から6月超800単位/月
リハマネ加算(Ⅳ)
同意日の属する月から6月以内1,220単位/月
同意日の属する月から6月超900単位/月(3月に1回を限度)
(介護予防)
リハマネ加算
330単位/月
<改定後>
リハマネ加算(A)イ
同意日の属する月から6月以内:560単位/月
同意日の属する月から6月超 :240単位/月
リハマネ加算(A)ロ(新設)
同意日の属する月から6月以内:593単位/月
同意日の属する月から6月超 :273単位/月
リハマネ加算(B)イ
同意日の属する月から6月以内:830単位/月
同意日の属する月から6月超 :510単位/月
リハマネ加算(B)ロ
同意日の属する月から6月以内:863単位/月
同意日の属する月から6月超 :543単位/月
(介護予防)廃止
【算定要件 ※文章一部要約】
○リハマネ加算の要件について
<リハマネ加算(A)イ>
・【医師の指示】医師の詳細な指示、指示内容の記録
・【情報連携】 PT,OT又はSTがケアマネを通じ介護の工夫等の情報を伝達
・【リハ計画】定期評価と見直しの上、PT,OT又はSTが利用者等に説明・同意を得て医師に報告
・【リハビリテーション会議】開催必須<リハマネ加算(A)ロ>
・リハマネ加算(A)イの要件に加え、情報を厚生労働省に提出し、フィードバックを受けデータの利活用を行う<リハマネ加算(B)イ>
・【医師の指示】医師の詳細な指示、指示内容の記録
・【情報連携】 PT,OT又はSTがケアマネを通じ介護の工夫等の情報を伝達
・【リハ計画】定期評価と見直しの上、医師が利用者等に説明・同意を得る。
・【リハビリテーション会議】開催必須<リハマネ加算(B)ロ>
・リハマネ加算(B)イの要件に加え、情報を厚生労働省に提出し、フィードバックを受けデータの利活用を行う
○ CHASE・VISITへのデータ提供の内容について
CHASE・VISITへの入力負担の軽減及びフィードバックにより適するデータを優先的に収集する観点から、リハビリテーション計画書の項目について、データ提出する場合の必須項目と任意項目を設定。○リハビリテーション会議の開催について
リハビリテーションマネジメント加算の算定要件の一つである「定期的な会議の開催」について、利用者の了解を得た上で、テレビ会議等の対面を伴わない方法により開催することを可能とする。
以上が通所リハに係るリハマネ加算の改定概要となる。
リハマネ加算において大切な部分は、
【加算Ⅰが基本要件に含まれる改定をどのように受け取るか?】
ではないだろうか。
大前提として、リハビリテーション会議の開催がなければ、リハマネ加算自体の取得が困難な改定となっている点は抑えておくべきであろう。
加えて、現状の算定率等を考えると、半数以上の事業所は旧リハマネ加算Ⅲを取得している。
つまり、利用者に説明と同意を医師がしている事業所が半数以上となっている。
事務的負担の軽減、更なる質の高い取組という観点の改定が同時改定にて更に進むことを想像すれば、本改訂から次回改定までにリハマネ加算(B)の取得は確実に抑えておきたいところである。
リハビリテーション会議の開催方法については、疑義解釈を待つ必要があるが、医師の参加のみICTを活用可能であった要件が緩和され、利用者家族・その他関係者とどのように会議を開催するか、その方法等を仕組み化する取り組みが必要になるといえる。
加えて、データの国への提出についてもいずれ必須要件になる可能性は高く、事業所で本当に加算取得が困難か検討したいところである。
運用する電子カルテ等がどのように対応するか?等も事前に確認が必要になるかもしれない。
【目次】
第九回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション1)
第十回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション2)
第十一回:令和3年度介護報酬改定案(通所介護3)