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小児臨床教材士からみる、言語療法で大切なこと【小原路乃】

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「小児臨床教材士」としてInstagramを中心に活躍される小原路乃先生。実は、小原先生は小児専門の言語聴覚士。子どもの関心や発達に合わせ完全オーダーメイドで作成された臨床教材をInstagramに投稿したところ、大きな反響を呼んでいます。そんな小原先生の活動や今後のキャリア展開について伺いました。

これまでの道のり

ー小原先生のこれまでのキャリアを教えてください。
小原 言語聴覚士としては丸13年が経つところで、ずっとお子さんに関わる職場で働いています。

 

新卒の頃は発達医療センター(病院)におりまして、そのあと転職してからも療育畑です。現在は、児童発達支援事業所・放課後等デイサービス事業所である「ことばの支援センター」で個別言語療育に携わっています。

 

ーどうして小児の道に進もうと思ったんですか?
小原
 元々、言語聴覚士とは関係のない大学に進んでいたのですが、その中で自閉症のお子さんたちと一緒にキャンプやレクレーションをするサークルに入っていたんです。

 

その経験をきっかけに、仕事としても子どもに関われるものがいいなと思うようになりました。色々な職業を検討したのですが、最終的には言語聴覚士を目指そうと思いました。なので、私は養成校に入る前から小児希望だったんです。

 

いったい、小児臨床教材士とは?

ー小児臨床教材士はどんなことをする仕事なんですか?
小原 言語聴覚士として臨床用に子どもに合わせた教材を手作りしていて、その取り組みを「小児臨床教材士」と勝手によんでいるんです。「手作り教材」は私にとってはこれまで当たり前だったんです。

 

新卒の頃から、周りの先輩方が手作り教材をせっせと作られる方ばかりだったので。でも、今の職場の仲間たちが「それは何か形に残した方が良い」と言ってくれて、突然筆ペンで“小児臨床教材士“と描いた紙を私の机の上に置いてくれたんです。

 

それをきっかけに、自分なりのスタイルが生まれました。

 

ーとっても素敵な名付けをしてもらったんですね!
小原 そうなんです。この名前を使わせてもらい、4年前から教材をInstagramにアップすることも始めました。

 

ただ、その中で「私もその資格取りたいんですが、どうしたらいいんですか?」というお問い合わせを定期的に頂くようになってしまって…その度に申し訳なく思いながら、毎回この経緯を説明させてもらっています(笑)

 

Instagramで広がる活動

ーどうしてInstagramでの発信を始めようと思ったんですか?
小原 元々は、長いこと作り溜めていた教材の整理のためでした。収納という意味でも、教材の目的の整理という意味でも。

 

ー6000人以上のフォロワーがいるってすごいですね。実際にどんな反響がありますか?
小原 お母さん達や小児分野に携わる様々な職種の方によくみて頂いているようで、共感のコメントや質問をもらうことがあり、とても励みになっています。

 

見てくださっている方のことを考えても、自分が実際に作ることを考えても「すぐまねができそうなもの」や「手軽に手に入る材料を使ったもの」がいいなと思います。そこらへんにある空き箱だったり廃材を活用することも多いです。

手作り教材を続けるワケ

ー教材は臨床で使われてるとのことですが、実際のお子さんの反応はどうですか?
小原 お子さんたちは、新しいものが好きなので、教材の変化に気付いて食いついてくれますね(笑)がんばって作ったときは「やった!」と思います。

 

ー教材作りの中で大切にしていることは?
小原 ことばの力を育むのはもちろんですが、「伝えたい」というコミュニケーション意欲を育むことが私たちの大切な役割だと思っています。「楽しい」とか「やってみよう」という気持ちから、おしゃべりは豊かになると思うので、まずは、お子さんに興味を持ってもらうため、対象児の好きなものを使うようにしています。

 

仕事上、誰にでも使える汎用性を求めてはいるんですけど、「この子と次にしたいこと」という基準で教材作りに取り掛かることが多いので、結局は1人のために何かを作ることが多い気がします。

 

ー1人1人オーダーメイドは、大変さもありそうだなと感じますが、なぜこのスタイルを続けて来れたんですか?
小原 私はいろんなことに対して自信がないタイプなんです。何年やっても、ちゃんと出来たかな?と考えてしまいます。技術や知識に自信がないから、“もの作り“でカバーしようとしているのかもしれないですね。武器みたいに。

 

あとは、普段家では机に向かって勉強することが苦手なお子さんも、臨床の中で楽しさや興味を繋ぐことで(難しくない課題だったとしても)、楽しそうに取り組んでいる姿に喜ばれる親御さんも多いんです。私もその親子の姿を見ると嬉しくなるからですね。

 

小児言語聴覚士業界の今と未来

ー全国的に小児STが需要過多になり、どの自治体も中々個別療育が受けられないと聞きますが、実際に先生のお勤めの現場ではいかがですか?
小原 確かに、私達の事業所も開所数年でだんだんいっぱいになってきています。大きくなっても通ってくれるお子さんもいるので、STの個別療育の頻度を減らすことで対応している感じです。

 

ただ、鹿児島市は、年々児童発達支援にSTが関わるところが増えている印象です。もしかすると、都会に比べたら充実しているかもしれないですね。

 

あと、法人内の養成校の実習生の受け入れも行っている中で、学生全員が臨床の見学や教材作成を経験するカリキュラムになっているんです。私たちの学生時代は、まだまだ小児の求人が少なかったしそんなカリキュラムはなかったので、変化を感じますね。

 

養成校に通っている時から小児を希望する学生も年々増えてきている気がします。

 

ー小児の道に進みたい学生達に、伝えたいことはありますか?
小原 このお仕事を続ける限り、ずっと勉強だなと思います。実習生の中で「子どもから学ばせてもらった」という感覚を持っていた子がいるんです。すごく大事なことに気づいてるなと思いましたし、そういう気持ちは私も伝えていきたいです。

 

私は子どもと関わるこのお仕事が本当に楽しいと思っています。でも、お子さんに通って来てもらわない限り、私たちの仕事はできないですよね。だから、親御さんにもお子さんにも「お仕事させてもらってるな」という気持ちで接していきたいです。

 

あとがき

小児専門言語聴覚士を取り巻く環境は、年々変わっています。その中でも、子どもの興味関心に注目しながら臨床を進めていくことは、時が経っても変わらない、変わってはいけない臨床の基軸だと感じます。

 

確かに、手作業での教材作りは得意不得意があり、皆が小原先生と同じような臨床スタイルを追求できるとは限りません。しかし、小原先生から学ぶべきは、“興味関心にそってオーダーメイドする姿勢“なのではないでしょうか。

 

小原先生の知恵や工夫、そして言語聴覚士としての姿勢がInstagramという媒体を通してリアルタイムで学ばせてもらえるとは、後輩としてありがたい限りだとしみじみ思います。

 

小原先生、お話を聞かせていただきありがとうございました!


インタビュアー:三輪桃子

関連リンク

Instagram:https://www.instagram.com/michino__shi/?hl=ja

 

小児臨床教材士からみる、言語療法で大切なこと【小原路乃】

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