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紙パンツの吸収体の厚さが高齢者の歩き方に与える影響 ~吸収体が薄いほど歩行安定性が向上、身体のふらつきが軽減~

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花王株式会社(社長・長谷部佳宏)と佐賀大学(学長・兒玉浩明)教育研究院、筑波大学(学長・永田恭介)大学院人間総合科学学術院の研究グループは、高齢女性を対象に尿ケア用紙パンツ(図1)の吸収体の厚さが歩行動作に与える影響について検討しました。その結果、吸収体が薄いほど歩行安定性が向上し、歩行時の身体のふらつきが軽減することがわかりました。今後、本知見を高齢者向け紙パンツ開発へと応用し、高齢者の転倒やフレイル※1予防対策を通して健康寿命延伸へと貢献していきます。

本研究内容は、第22回日本抗加齢医学会総会(2022年6月17~19日・大阪開催)にて発表しました。

※1 健康な状態と要介護状態の中間の状態。加齢とともに心身の活力が低下し、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態。

 図1 尿ケア用紙パンツ

■転倒やフレイル予防のため、高齢者が歩くことを支援する研究

花王は、ベビー用紙おむつの開発や高齢者の健康支援への応用などをめざし、幼児から高齢者まで3万人以上の歩行データをもとにさまざまなアプローチで研究を進めています。おむつと歩行の関係については、吸水後のおむつが幼児の歩き方に与える影響などの研究を行なっています※2。一方、高齢者にとって歩くことは、転倒やフレイル予防の観点から重要といわれています。花王は、軽失禁や頻尿などの症状がある場合に紙パンツの使用により、QOLが向上する可能性を見いだしていますが、この紙パンツの着用が歩くことに対してどのような影響を与えるかは知られていませんでした。そこで、紙パンツの着用が歩行動作に与える影響について、その吸収体の厚さを変化させて評価しました。

 

※2 2021年6月14日花王ニュースリリース:吸水後の紙おむつが幼児の歩き方に与える影響https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2021/20210614-001/

■異なる吸収体の厚さで歩行動作を解析

66~75歳(平均70歳)の健常高齢女性15名を対象として、吸収体の厚さが異なる3種類の紙パンツ(A:7mm、B:12mm、C:16mm)を使用していただき、歩行動作を解析しました。今回は、(1)シート式圧力センサーによる歩幅や歩隔※3、歩行速度などの計測、(2)無線型筋電計による歩行中の左右腓腹筋※4の筋力変化の計測、(3)マーカーレス3次元動作解析装置による左右膝関節や左右つま先など全身33か所の評価点の動作の解析(図2)の3つの方法を用いて評価しました。

※3 歩く時の左右のかかとの間隔

※4 ふくらはぎをつくる筋肉のひとつ

図2 マーカーレス3次元動作解析装置による解析画像

■吸収体が薄いほど、歩行時の身体のふらつきが軽減

歩行動作の解析の結果、吸収体が薄いほど、(1)左右の足運びのバランスが良くなり、身体が安定するので歩隔が狭くなる(図3)、(2)左右の足の最大筋力が均等に近づく、(3)高齢者に特徴的な歩行時の身体のふらつきが軽減する(図4)ことがわかりました。また、はき心地や歩きやすさなどの心理面でも、吸収体が薄いほど違和感が減り、装着感が良くなることを確認しました。

以上より、吸収体が薄い紙パンツを使用することで、歩行時の左右のバランスが安定し、全身のふらつきが軽減することがわかりました。これにより、転倒などのリスクをより低減できる可能性があると考えられます。

図3 吸収体の厚さと歩隔の関係

図4 歩行時の身体の横揺れの例(右足に体重がかかっている時)

■まとめと今後の展開

軽失禁や頻尿などの不安を減らすことができる尿ケア用紙パンツについて、吸収体の厚さを薄くすることで、歩行時の動作の負担やふらつきが軽減することがわかりました。今後、本知見を吸水機能が高く吸収体がより薄い高齢者向け紙パンツの開発へと応用し、高齢者の転倒やフレイル予防対策を通して健康寿命延伸へと貢献していきます。

詳細▶︎https://www.saga-u.ac.jp/koho/press/2022062325433

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単に論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎません。論文で報告された新たな知見が社会へ実装されるには、多くの場合、さらに研究や実証を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。

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