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がん患者が知りたいのは残された時間より「いつまで動けるか」〜予後情報に関する意向調査を実施〜

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がん患者にとって、予後情報は、治療⽅針や⽇常⽣活に関するさまざまな意思決定に影響を与える極めて重要な情報です。がん患者や家族が残された時間(⽣命予後)を知りたいと思っているか、という研究は世界的に⾏われてきましたが、近年では、⽣命予後だけでなく、いつまで歩けるか、いつまで⾷事が摂れるか、といった⾝体機能の予後(機能予後)も、重要な情報であると⾔われています。しかし、実際にがん患者が機能予後を知りたいと思っているか、についての調査は⾏われていませんでした。

本研究では、がん患者が機能予後を知ることに関する意向や関連する要因を、世界で初めて調査しました。その結果、33.6〜46.9%のがん患者が、いつまで歩けるか、いつまで話せるか、という機能予後を知りたいと考え、26.6%のがん患者が⽣命予後を知りたいと考えていることが分かりました。そして、⾝近な⼈をがんで亡くした経験のあるがん患者は、⽣命予後や機能予後を知りたいと考える傾向がより強いことが分かりました。

この結果は、がん患者は、いつまで⽇常⽣活や仕事ができるか、を考えるために、⽣命予後よりも、機能予後を知りたいと考え、⾝近にがんで亡くなった⼈がいる場合、より予後情報を知りたいと考えている可能性を⽰しています。

今後は、がん患者の⽣命予後だけでなく、機能予後を予測する⽅法や、本⼈の知りたい程度に合わせた伝え⽅を検討することが必要と考えられます。

研究代表者

筑波⼤学 医学医療系

濵野 淳 講師

研究の背景

がん患者にとって、予後情報は、治療⽅針や⽇常⽣活に関するさまざまな意思決定に影響を与える極めて重要な情報です。これまで、がん患者や家族が残された時間(⽣命予後)を知りたいと思っているか、についての研究が世界的に⾏われており、その中で、がん患者は、亡くなる前に他⼈の負担にならないことが⼤切と考えていることや、がん患者の最期に希望することは、旅⾏に⾏くことや家族と過ごすことである、ということが分かってきました。そのため近年は、⽣命予後だけでなく、いつまで歩けるか、いつまで⾷事が摂れるか、といった⾝体機能の予後(機能予後)も、がん患者や家族にとって重要な情報であると考えられるようになっています。しかし、実際に、がん患者が機能予後を知りたいと思っているか、についての調査は世界的にも⾏われていませんでした。

そこで本研究では、2022 年 2 ⽉に、国内のがん患者を対象に、機能予後を知ることに関する意向や関連する要因などを調査しました。

研究内容と成果

本研究では、国内のがん患者 132 名を対象に、2022 年 2 ⽉に無記名のインターネット調査を実施しました。そのうち 67 名(50.8%)が男性であり、43 名(32.6%)が消化器がん、23 名(17.4%)が泌尿器がん、20 名(15.2%)が婦⼈科がんの患者でした。

この調査では、がん患者が知っておきたいと考えている予後情報や関連する要因などを調査しました。具体的には、①私は、「いつまで⽣きられるか」を知っておきたい(⽣命予後) ②私は、「いつまで⾃由に動けるか(旅⾏など)」を知っておきたい(運動予後) ③私は、「いつまで本を読むなど複雑な思考ができるか」を知っておきたい(思考予後) ④私は、「いつまでおいしく⾷事ができるか」を知っておきたい(⾷事予後) ⑤私は、「いつまでちゃんと会話ができるか」を知っておきたい(会話予後) に対して、それぞれ「とてもそう思う」〜「全くそう思わない」の 6 段階で回答してもらいました。

調査の結果、「⽣命予後を知っておきたい」に対して、とてもそう思う・そう思うと回答したのは、35名(26.6%)でした。機能予後に関しては、とてもそう思う・そう思うと回答した患者が多かったのは、会話予後:62 名(46.9%)、⾷事予後:57 名(43.1%)、運動予後:56 名(42.4%)でした(表1)。

また、⾝近な⼈をがんで亡くした経験があることが、⽣命予後、運動予後、会話予後を知っておきたいことと関連することが分かりました(表2)。

これらのことから、がん患者は、いつまで⽇常⽣活や仕事ができるか、を考えるために、⽣命予後よりも機能予後を知りたいと考え、⾝近にがんで亡くなった⽅がいる場合、より予後情報を知りたいと考えている可能性が⽰されました。

今後の展開

本研究は、⽣命予後以外に、がん患者が知っておきたいと考えている予後情報について分析した初めての調査です。本研究結果が、がん患者の⽣命予後だけでなく、機能予後を予測する⽅法や、本⼈の知りたい程度に合わせた伝え⽅を検討することに活⽤されていくことが期待されます。

参考図

表1 がん患者が知っておきたいと考えている予後情報

 

表2 がん患者が知っておきたい予後情報に関連する要因

研究資⾦

本研究は、⽇本学術振興会 科学研究費の⼀環として実施されました。

掲載論⽂

【題 名】 Preference of Japanese cancer patients for being informed about their prognosis(がん患者が知っておきたいと考えている予後情報について)

【著者名】 Jun Hamano, Yusuke Hiratsuka, Tatsuya Morita, Yoshiyuki Kizawa, Isseki Maeda,Masanori Mori

【掲載誌】 Annals of Palliative Medicine

【掲載⽇】 2022 年 10 ⽉ 24 ⽇(オンライン先⾏公開)

【DOI】 10.21037/apm-22-772

詳細▶︎https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20221028141500.html

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 、さらに研究や実験を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。

がん患者が知りたいのは残された時間より「いつまで動けるか」〜予後情報に関する意向調査を実施〜

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