慢性腰痛を生物医学モデルで説明したくなる2つの理由

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腰痛こそ生物心理社会的モデルを考慮するべきなのに?なぜでしょうか?

週の真ん中水曜日の江原です。いつも読んでいただいて、ムーチャスグラシアス!(スペイン語で本当にありがとうございます)先週より引き続き理学療法士の信念に関する記事です。前回記事はこちらです。印象的だった一節、

『少なくとも一部の理学療法士は痛み体験の認知的、心理的、社会的側面に対してほとんど共感していないようである。』

もはや慢性疼痛医療において、完全に市民権を得たを思われる生物心理社会的モデル(BPSモデル)ですが、前回の論文では上記の様に述べられていました。

 

整形外科医であり福島県立医科大学の学長も務められた故・菊池臣一名誉教授は、『最も怖いのは無知・無関心・偏見である』という言葉を残されたそうです。

臨床において菊地先生は、腰痛の心理社会的因子の関与の重要性を訴え、1996年から本学で集学的治療を開始し、日本脊椎脊髄病学会理事長としては、日本初の層化二段無作為抽出法による腰痛の大規模疫学調査を行い、さらには、自己立脚型の腰痛治療成績評価JOABPEQ、日本語版ガイドラインの作成、Locomotive syndromeの疫学研究、腰部脊柱管狭窄とPADの大規模疫学研究等を行い、背椎外科医に大きな影響を与えてこられました。

菊地先生の訃報を知らせる福島県立医科大学TOPICSより引用:https://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/topics_disp.php?seq=1538

『BPSモデルは知っているけど使っていない』という医療従事者による限定的な痛みの認識状況は、菊地先生がご指摘し危惧した疼痛医療の無知・無関心を示しているようです。腰痛を取り巻く専門職の欠点を示しているようにご指摘お言葉を深く噛みしめ今一度考えなくてはいけないと思います。

 

患者のニードに対し理学療法士は悩みそして迎合する

生物医学モデルに傾倒した理学療法士のBPSモデルに対する限定的認識の理由の一つには、患者からの誤った期待による影響も大きいようです。参考文献にあるメタシンセシスで導き出された3つのテーマのうち、理学療法士のBPSモデルへの認識が低い1つ目の理由として、『患者からの生物医学モデルに基づく期待やニード』があるようです。

 

患者と理学療法士の間の痛みの認識の相違は、通院アドヒアランスに影響する話を以前にしました。非特異的腰痛をはじめとする慢性一次性疼痛の場合、『痛みの原因は多面的である』と理解している方が適切なのですが、生物医学的モデルで説明できる痛みの原因と決めつけ、それに固執している方も多いです。

 

そのような患者は『理学療法士のところへ行けばマッサージをしてもらえる』という思考を持ちやすく、説得をしようとしても認識を変えるのは非常に難しく労力もかかります。

 

また痛みの多面的要因について理学療法士が正論で説明すると、(マッサージしてもらえないから)通う意味がないと感じドロップアウトするという最悪の結果になりかねません。

 

そのような結果を恐れ、マッサージなど受動的な治療を行い患者のニードに応え関係を保ってしまうようです。実際の臨床においては施設の治療の方向性が反映されます。医師に慢性疼痛治療についての理解があれば、リハビリ処方時に受動的治療の功罪について説明が行われます。

 

もしその時点で、強い疼痛認知の歪みが確認できるなら、リハビリが処方されなかったり(自主トレ指導のみ)治療経過中に高いアドヒアランスが維持された時点で処方するべきでしょう。多職種連携がとれていない状況など、患者との関係を維持するためにやむを得ず生物医学モデルに基づいた対応をしてしまうようです。

 

生物医学モデルでの説明は理学療法士の好みの1つ

慢性腰痛を生物医学モデルで説明したくなる2つの理由

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