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1週間の歩行パターンと死亡リスクの関連を明らかに-週2回しっかり歩くことで健康は維持できるか?-

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概要

京都大学大学院医学研究科の井上浩輔 助教(社会疫学)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の津川友介  准教授(医療政策学)らの研究グループは、米国の国民健康栄養調査データを用いて、週に1日または2日だけでも1日あたり8000歩の歩数を達成することで健康に良い影響が得られることを明らかにしました。

今までの研究により、平均的に8000歩/日以上歩く人は死亡率が低くなることがわかっていましたが、週に数日だけ歩く場合の健康への影響については分かっていませんでした。本研究では、加速度計で測定された歩数の情報を用いて、1日に8000歩以上歩いた日数が0日、1〜2日、3〜7日であった場合の死亡リスクをそれぞれ検討しました。その結果、1週間に8000歩以上歩く日数が多い人ほど、全死亡と心血管疾 患の死亡リスクが低いことが示されました。興味深いことに、その死亡リスク低下率は初めの数日で大きく、週に1日または2日でも8000歩以上歩いている人は、週に3日以上定期的に歩行している人とほぼ同等の死亡リスク減少を認めました。

本研究結果は、週に1-2日程度でも目標歩数を達成することが健康に十分良い影響をもたらす可能性を示唆します。運動の時間を確保できない人や、仕事の都合上定期的な運動が難しい人でも、週に数日間だけ歩く習慣を取り入れることで健康リスクを低減できる可能性があり、現代社会の働く世代や高齢者にとって重要なエビデンスとなることが期待されます。

本研究成果は、国際学術誌「JAMA Network Open」(オンライン)に、3月29日(水)13時(日本時間)に公開されました。

 

週に一度も 8000 歩/日以上歩いていない人に比べて、1-2 日歩いている人は 14.9%、3 日以上ある人いる人は全死亡率が 16.5%低かった。同様に心血管死亡率についても、週に一度も 8000 歩/日以上歩いていない人に比べて、1-2 日歩いている人は8.0%、3 日以上ある人いる人は 8.4%低かった。

背景

運動不足は、現代社会における大きな公衆衛生課題の一つであり、毎年 320 万人の死亡と 5 兆 4000億円の医療費が発生しています。歩数は、身体活動量を簡単で有効な測定方法の一つとして使用されており、心血管疾患や認知症などの健康上の結果との関連性が調査されています。最近のメタ分析では、1 日あたり 8000 歩まで歩数が増えるにつれて、死亡リスクが低下することが示されました。一方で、毎日8000歩以上歩行するのは困難な人も多く、どの程度の頻度で 1 日あたりの目標歩数を歩く必要があるかについてのエビデンスはありませんでした。そのため本研究では、米国の国民健康栄養調査のデータを用いて、1 週間の間に 8000 歩以上歩く日数と死亡率の関連性を明らかにすることを目的としました。 

研究手法・成果

具体的には NHANES のデータから、20 歳以上の参加者 3101 人を対象に解析しました(平均年齢:50.5歳、女性:51%)。結果として 1 週間に 8,000 歩以上歩く日数が多い人ほど、全死因と心血管疾患の死亡リスクが低いことがわかりました。特筆すべきは週に 1-2 日しか8,000 歩以上歩けなかった人でも、全死亡や心血管死亡のリスクが大幅に低く、週に 3 日以上目標歩数を歩く人と同様に健康的でした。また、1 日の歩数目標を6,000 歩から10,000 歩まで変化させても同様の結果が得られました。これらの結果は、定期的に運動するのが難しい場合では、1 週間に数日だけでも 8,000 歩以上歩くことが、健康にとって有意義な影響をもたらすことを示唆します。

波及効果、今後の予定

最近では、歩数をカウントするスマートフォンやウェアラブルデバイスの普及に伴い、日々の歩数をモニターし目標を設定することが身体活動を促進する実践的な方法として応用されてきています。近年の研究結果から平均歩数を 8000 歩/日以上に維持する重要性が強調されていますが、実際には仕事や持病、家族の都合で毎日の目標を達成できない人もいます。本研究結果は、そのような状況でも週に数日間だけ歩く習慣を取り入れることで健康リスクを低減できる可能性があり、現代社会の働く世代や高齢者にとって重要なエビデンスとなることが期待されます。

研究プロジェクトについて

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED; JP22rea522107)、日本学術振興会(21K20900 および 22K17392)、日本内分泌学会、明治安田厚生事業団、文部科学省による次世代グローバル人材育成事業(L-INSIGHT)、National Institute of Health (NIH) /National Institute on Minority Health and Health Disparities R01MD013913、NIH/National Institute of Aging R01AG068633の協力を得て行われました。 

<用語解説>

心血管疾患(CVD):心臓や血管の機能異常によって引き起こされる病気の総称であり、心筋梗塞や脳梗塞などの病気が含まれる。CVD, cardiovascular disease.

NHANES:全米で 2 年に一度、健康状態や生活習慣、栄養状態などの情報を収集している国民健康栄養調査。

<研究者のコメント>

本研究は井上(筆頭著者)が内科外来で患者さんから聞かれた次の質問から始まりました。「先生、たくさん歩く必要があることはわかりました。でも忙しくて平日はそんなに歩くことができません。週末にためて歩いても問題ないでしょうか?」この問いに答えるべく文献検索をしたところ、身体活動量については週2 回だけ運動しても十分に健康のベネフィットが得られるという先行研究を見つけたものの(これを“Weekend warrior”と呼びます)、歩数についてはエビデンスがないことに気づき、本研究を遂行するに至りました。本結果が外来で質問された患者さんをはじめ多くの人々にとって役立つ歩行指針として世の中に貢献できますと臨床研究者として嬉しく思います。

<論文タイトルと著者>

タイトル:Association of Daily Step Patterns with Mortality in US adults

(歩行パターンと死亡の関連についての検討)

著       者: Kosuke Inoue1, Yusuke Tsugawa2,3, Elizabeth Rose Mayeda4, Beate Ritz4,5,6

1 Department of Social Epidemiology, Graduate School of Medicine,Kyoto University, Kyoto, Japan

2 Division of GeneralInternal Medicine and Health Services Research, David GeffenSchool of Medicine at UCLA,Los Angeles, CA

3 Department of Health Policy and Management, UCLA Fielding Schoolof Public Health,Los Angeles, CA

4 Department of Epidemiology, UCLA Fielding Schoolof Public Health,Los Angeles, CA

5 Departmentof Environmental HealthSciences, UCLA FieldingSchool of PublicHealth, Los Angeles, CA

6 Department of Neurology, UCLA David GeffenSchool of Medicine,Los Angeles, CA

掲 載 誌:JAMA Network Open                                                                       

DOI:10.1001/jamanetworkopen.2023.5174

詳細▶︎https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-03-30

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 、さらに研究や実験を進める必要があります。 、専門家の指導を受けるなど十分に配慮するようにしてください。

1週間の歩行パターンと死亡リスクの関連を明らかに-週2回しっかり歩くことで健康は維持できるか?-

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