肩関節周囲炎の病期の鑑別
肩関節周囲炎には、
chekkfreezing期(炎症期)
・frozen期(拘縮期)
・thawing期(回復期)
と3つの病期があり、それぞれのフェーズに合った介入が必要になります。
☑︎freezing期(炎症期)
夜間痛、運動時痛が著明。関節拘縮は認められないか、あっても軽度。
☑︎frozen期(拘縮期)
挙上、外旋、結帯など各運動が制限される。日常生活の疼痛は減少傾向だが、最終域にて疼痛を生じる。
☑︎thawing期(回復期)
疼痛、可動域共に改善を認め、正常に近い時期。中でも、肩関節周囲炎に起因し病期を予測する重要な症状として
があります。この夜間痛の改善が肩関節周囲炎患者さんに求められる重要なポイントでありながらも、臨床で難渋することも多いのではないでしょうか?夜間痛は主に、
・freezing期(炎症期)
・frozen期(拘縮期)
みられ、病気により発症機序が異なるとされています。
☑︎炎症期
腱板や肩峰下滑液包に生じる浮腫や腫脹
☑︎拘縮期
肩峰下滑液包と腱板との境界部に生じる癒着や瘢痕組織
このことから、どちらの病期にしても上方支持組織の容積が増大するため、肩峰下圧が上昇し夜間痛が生じると考えられます。
夜間痛を改善するためのチェックポイント
結論から言うと、
・肩甲骨前傾アライメント
・肩甲上腕関節内転制限
の2点の改善を最優先に行います。
☑︎肩甲骨前傾アライメント
背臥位の状態で肩甲骨が前傾していると、相対的に肩関節は伸展し肩前方に存在する腱板疎部が伸長され夜間痛が生じると考えられています。
☑︎内転制限
就寝時は寝返りの際に、側臥位をとる必要があります。その際、肩甲上腕関節は内転位を強制されることになりますが、腱板や肩峰下滑液包の癒着が生じていると内転制限がある状態で体重をかけた内転を強制されるため可動域の最終域で疼痛を生じます。
夜間痛と筋膜の関係
今回も、筋膜のお話をしていきますので、夜間痛に関連する筋膜の機能解剖を理解する必要があります。まず、前提として理解しておくべきことは、筋膜が高密度化を起こす(硬くなる)とその周囲の筋肉の伸張性や筋出力も低下するということ。では肩甲骨前傾アライメントを助長しやすい筋膜はどこか?
それは、
が臨床上非常に重要です。小胸筋は肋骨から烏口突起に付着するため、小胸筋筋膜が硬くなると伸長性が低下し、肩甲骨を前傾方向に引っ張ります。上腕二頭筋は、二関節筋であるため上腕二頭筋筋膜が硬くなると肘の屈曲制限が生じ、背臥位であれば重力で前腕より遠位が接地するため、近位の肩甲帯が前方突出することになります。
次に、内転制限に関しては
が重要であるケースが多いです。肩峰下圧は腱板や肩峰下滑液包の滑走不全により上昇すると言われています。その腱板の中でも臨床上、外転作用を持つ棘下筋の筋膜にアプローチすることで改善が得られるケースを多く経験します。つまり、夜間痛を改善させるためには小胸筋 / 上腕二頭筋 / 棘下筋 の筋膜の滑走不良を改善させることが求められます。
※原因が肩峰下滑液包炎や腱板炎に起因するケースは改善が得られなかったり、そもそも積極的に可動域を改善しにいくフェーズではないため日常生活指導や就寝時のポジショニングをメインに行います。
各筋膜の評価とアプローチ方法
ここまで理解できたら、まずは各筋膜の評価をしていきましょう。ポイントは、シンプルで各筋肉上でゴリっとしたポイントを探すことです。
▼実際にはこんな感じです。(動画)
筋肉上を滑らすように丁寧に触っていくと高密度化を起こしているケースでは、筋線維がカチッと固まっているようなポイントがあります。少し圧迫してフリクションした時に痛みを訴えるような場合は、そこの筋膜が硬くなっていると判断します。
硬いところが見つかったら、各筋肉上のゴリゴリを無くすように、アプローチをしていきましょう。
▼実際にはこんな感じです。(動画)
正しくアプローチできていると、「ゴリゴリした感じ」と「痛み」があります。その固さと痛みが取れるまで3分程度続けてみてください。
※このアプローチは、深筋膜に対し機械的刺激と炎症反応による熱刺激を加えてヒアルロン酸の状態を変えるので、かなりの痛みを伴います。
なので、アプローチはマイルドに行ってくださいね。また、アプローチの目的と理由をしっかりと患者さんに説明し、同意を得てから介入してください。さて、このアプローチを行ったら前後で背臥位や内転制限などの症状の変化をみてみてください。これで改善がみられるようであれば、数回に分けて介入を続けて症状の改善を目指します。(※1回の介入で取り切るのは難しいです。)
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