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中等度以上の認知症や日常生活動作が低下した高齢入院患者は長期療養施設へ退院しやすい

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発表内容の概要

東京都健康長寿医療センター研究所の石崎達郎研究部長らの研究グループは、東京都健康長寿医療センターに入院した 65 歳以上(約 9 千名)のレセプト(診療報酬明細書)情報を分析し、長期療養施設への退院リスクを検討しました。その結果、中等度以上の認知症があり、日常生活動作(ADL)が低下していることが、長期療養施設への退院リスクであることを明らかにしました。この研究成果は、国際科学雑誌「Archives of Gerontology and Geriatrics」に掲載されています。

研究背景と研究目的

高齢者の 7 割以上は日常的に医療や介護が必要になっても自宅で生活することを希望していますが、高齢入院患者では長期療養施設への退院が増加します。そのため入院後早期に長期療養施設への退院リスクのある患者を特定し、入院早期からの在宅復帰支援が必要となります。入院時に認知機能や ADL が低下していることは長期療養施設への退院リスクが高いと考えられますが、これらの関連については検討が不十分でした。そこで、本研究では在宅から入院した高齢患者を対象に、認知機能や ADL と長期療養施設への退院との関連を検討しました。

研究成果の概要

認知機能と ADL 低下の重症度評価には、DASC-8(Dementia Assessment Sheet for Communitybased Integrated Care System-8 items)※1を用いました。DASC-8 は、DASC-21(DementiaAssessment Sheet for Community-based Integrated Care System-21 items:「認知機能」と「ADL」から認知症を検出し、重症度を評価するアセスメントツール)※2の 21 項目のうち、8 項目を使ってより簡便に認知機能と ADL の重症度を評価するものです。DASC-8 はそのスコアに応じて 3 つの重症度に判定されます(カテゴリーⅠ:認知機能が正常で ADL 自立、カテゴリーⅡ:軽度認知障害~軽度認知症/手段的 ADL(家事や交通機関の利用などの複雑な日常生活動作)低下、カテゴリーⅢ:中等度以上の認知症/基本的 ADL(移動や入浴など基本的な日常生活動作)低下)。

分析対象者は東京都健康長寿医療センターに入院した 65 歳以上の高齢入院患者 9,060 名(平均年齢 79.4 歳)です。DASC-8 によって評価された認知機能と ADL 低下の重症度は、カテゴリーⅠが62.3%(5,640 名)、カテゴリーⅡが 18.6%(1,681 名)、カテゴリーⅢでは 19.2%(1,739 名)でした。長期療養施設へ退院した患者は、分析対象者の 1.2%(112 名)でした。認知機能と ADL低下の重症度別に長期療養施設への退院患者の割合をみると、カテゴリーⅠは 0.3%、カテゴリーⅡで 1.1%、カテゴリーⅢでは 4.5%でした。性別や年齢などの要因の影響を統計学的に除いても、カテゴリーⅢはカテゴリーⅠよりも長期療養施設への退院リスクが 2.8 倍高いことが認められました。

研究の意義

本研究の重要な点は、中等度以上の認知症や ADL 低下のある高齢入院患者では、入院直後から在宅復帰準備を講じることで、長期療養施設への退院を予防できる可能性のあることを示したことです。また、病院と長期療養施設との間で、患者に関する情報(処方薬や ADL など)を共有することで、長期療養施設に退院後の有害事象が予防できると報告されています。DASC-8 で特定した中等度以上の認知症と ADL 低下のある高齢入院患者は、入院時から在宅復帰の準備や長期療養施設へ退院直後の有害事象に対する予防策を優先的に提供する必要性が高い方々であると考えられます。

掲載論文

「Archives of Gerontology and Geriatrics」(2023 年 6 月 26 日掲載)

Association of functional and cognitive impairment severity with discharge to long-term care facilities inolder patients admitted to a general acute care hospital from home

URL: https://doi.org/10.1016/j.archger.2023.105111

筆者 Mitsutake S 1, Yano S 1,2, Ishizaki T 1, Furuta K 3, Hatakeyama A 4, Sugiyama M 5, Awata S 6, ItoH 6, Toba K 6

光武誠吾 1、矢野翔平 1,2、石崎達郎 1、古田光 3、畠山啓 4、杉山美香 5、粟田主一 6、井藤英喜 6、鳥羽研二 6

1:東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム、2:救世軍ブース記念病院、3:東京都健康長寿医療センター精神科、4:東京都健康長寿医療センター認知症支援推進センター、5:東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム、6:東京都健康長寿医療センター

責任著者 石崎達郎

※1DASC-8(認知・生活機能質問票)についての日本老年医学会ホームページ関連リンク:

https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/dasc8.html

※2 認知症アセスメントシート(DASC-21)についての当研究所ホームページ関連リンク:

https://www.tmghig.jp/research/topics/201703/

詳細▶︎https://www.tmghig.jp/research/release/2023/1213.html

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

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