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【不妊と理学療法】不妊ケアサポート|プレコンセプションケアから産後ケアまで

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理学療法士の視点から見た不妊ケア

不妊治療における理学療法の役割は、まだ広く知られていません。しかし、近年の研究や実践に基づくデータから、不妊治療をサポートする理学療法に関する論文は現在見つけられたもので、3件ありました。妊娠を目指す女性に対して、身体の調整や生活習慣の改善を通じて、妊娠しやすい身体環境を整えることができるのです。

Wurnら1)は、完全な両側卵管閉塞と診断された28人の不妊女性(平均年齢35.2歳)を対象に、手技的骨盤理学療法の効果が検証されました。20時間の非侵襲的な軟部組織療法により、患者の61%で卵管の開通が確認され、そのうち53%が自然妊娠を達成しました。

Riceら2)1392人の女性患者を対象に、卵管閉塞、ホルモン機能障害、子宮内膜症などを含む不妊の原因に対して手技的療法が実施されました。結果として、卵管閉塞患者の60.85%で卵管が開通し、56.64%が妊娠に至りました。特に体外受精(IVF)後の妊娠率は56.16%でした。

Wurnら3)は、腹骨盤癒着歴のある53人の不妊女性を対象に、手技的な軟部組織療法が施行されました。17人が自然妊娠を希望し、36人は体外受精(IVF)を計画していました。10~20時間の治療により、癒着による骨盤内の機能障害が改善され、自然妊娠およびIVF成功率が向上しました。

プレコンセプションケアの重要性

プレコンセプションケアとは、妊娠前の健康管理を指します。WHOは2013年にプレコンセプションケアを重要な医療ケアとして提唱し、妊娠を希望するか否かに関わらず、妊娠可能な年齢のすべての男女が対象となるべきとしています。このケアは、単なる妊活の一環ではなく、妊娠に向けた健康維持や向上を目的としています。また、出産後も健康な生活を送り続けるための準備でもあります。

日本におけるプレコンセプションケアの必要性が高まっている背景には、少子化や高齢化、医療費の増加といった社会問題があります。特に、女性の社会進出によって出産年齢が高くなり、不妊治療や高齢出産に伴うリスクが増大しています。このような状況で、早期から自分の健康状態を把握し、妊娠に向けた準備を進めることが重要です。

プレコンセプションケアの具体的内容

プレコンセプションケアは、以下のような点に焦点を当てています。

体型管理: 痩せすぎや肥満は、妊娠に悪影響を与えることが知られています。妊娠前から適正体重を維持することは、将来の妊娠および赤ちゃんの健康に直接影響します。理想的なBMIは22前後とされ、これを基準に体重管理を行うことが推奨されます。

生活習慣の改善: 喫煙や飲酒は、妊娠に悪影響を与えるだけでなく、妊娠後の胎児の健康にも影響します。特に喫煙は、血管収縮作用があり、流産や早産、新生児の先天性異常のリスクを高めます。妊娠前から生活習慣を見直し、禁煙や適度な飲酒を心掛けることが大切です。

感染症対策: 風疹などの感染症は、胎児に深刻な影響を及ぼすことがあります。予防接種は妊娠前に済ませておくことが望ましく、家族も含めて感染症対策を徹底することが重要です。

基礎疾患の管理: 高齢妊婦が増える中、糖尿病や高血圧、甲状腺機能異常といった基礎疾患を持つ女性も多くなっています。これらの疾患は、妊娠中のリスクを高めるため、妊娠前からの適切な管理が求められます。

キャリア計画: 妊娠は人生の大きな節目であり、仕事や学業といったライフプランを考慮した計画が重要です。妊娠希望の有無にかかわらず、将来的な健康とキャリアを見据えたライフプランを立てることが、プレコンセプションケアの一環として推奨されます。

理学療法士が果たす役割

理学療法士が不妊ケアに関わる際の役割は、単なる施術にとどまりません。妊娠前から産後まで、長期的なサポートが求められます。具体的には、以下のようなアプローチが可能です。

妊娠しやすい体づくりのサポート: 妊娠に向けた身体の調整や、筋肉・関節のバランス改善、血行促進といった施術を通じて、妊娠しやすい身体を作り上げます。

妊娠中および産後の体づくり: 妊娠中の腰痛や肩こり、産後の体型戻しや体調管理に対するケアを提供します。また、産後の育児に伴う身体的負担を軽減するための運動療法やリハビリを行うことも理学療法士の重要な役割です。

妊娠後の生活を見据えたサポート: 妊娠がゴールではなく、その先の産後の生活や更年期に向けた身体づくりを支援します。妊娠できなかった場合にも、その後の人生に向けたソフトランディングをサポートすることができます。

このように、理学療法士は妊娠前から産後まで、さらには更年期に至るまでの長期的な健康維持をサポートする役割を果たすことができます。地域社会における予防医療の一環として、不妊ケアに携わる理学療法士の重要性が今後さらに高まることが期待されます。

参考文献

1)Wurn, Belinda F et al. "Treating fallopian tube occlusion with a manual pelvic physical therapy." Alternative therapies in health and medicine vol. 14,1 (2008): 18-23.

2)Rice, Amanda D et al. "Ten-year Retrospective Study on the Efficacy of a Manual Physical Therapy to Treat Female Infertility." Alternative therapies in health and medicine, at5233. 17 Feb. 2015.

3)Wurn, Belinda F et al. "Treating female infertility and improving IVF pregnancy rates with a manual physical therapy technique." MedGenMed : Medscape general medicine vol. 6,2 51. 18 Jun. 2004.

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