日本理学療法士協会を中心とする3団体が実施した「リハビリテーション専門職の処遇改善に関する実態調査」の結果が明らかになり、医療・介護・福祉分野における専門職の賃金改善の厳しい現状が浮き彫りとなった。
調査の概要
2024年9月3日から17日にかけて実施されたこの調査は、全国の医療施設、介護施設・事業所、障害福祉施設における1,750の施設を対象に行われた。目的は、2024年度の報酬改定後のリハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の処遇改善の実態を明らかにすることであった。
主な調査結果
現金給与総額の引き上げ状況
調査結果によると、現金給与総額の引き上げ状況は以下のように深刻な状況が明らかになった:
・医療施設:68.3%で引き上げを実施
・介護施設:52.1%で引き上げを実施
・障害福祉施設:54.8%で引き上げを実施
言い換えれば、医療施設では約3割、介護・福祉施設では約4割の施設で給与引き上げが行われていないことが判明した。
ベースアップの実施状況
ベースアップの実施率は特に低く、以下のような結果となった:
・医療施設:31.4%
・介護施設・事業所:17.4%
・障害福祉施設・事業所:12.2%
施設規模・開設主体による格差
調査では、施設の規模や開設主体によって処遇改善に大きな差があることが示された:
1.医療施設
・小規模施設ほど給与引き上げの実施率が低い
・公立病院での給与引き上げ実施率は最も低く42.3%
2.介護施設・事業所
・リハビリテーション専門職の在籍割合が5%未満の施設での給与引き上げ実施率は45.3%と最も低い
・営利法人/個人による施設での給与引き上げ実施率は30.4%
3.障害福祉施設・事業所
・営利法人/個人による施設での給与引き上げ実施率は43.5%
現場の声
回答者からは以下のような切実な意見が寄せられた:
「福祉・介護職員等処遇改善加算の対象としてリハビリテーション専門職の明記がないため、現金給与のアップが望めない」
「報酬改定で収入が下がる見込みで、経費が物価の上昇により上がっているので、人件費に使える財源は増えない」
今後の展望
調査を主催した3団体は、医療・介護・福祉分野における賃金の底上げと継続的な昇給に向けて、抜本的な対策が必要であることを強調している。リハビリテーション専門職の処遇改善は喫緊の課題であり、各施設・行政機関の更なる取り組みが求められている。
▶︎https://www.japanpt.or.jp/info/asset/pdf/Rress_Release_2024syoguukaizencyousa_c.pdf