目次
- 1. 術後リハビリテーション標準化の課題
- 2. エビデンスと現行ガイドラインの整理
- 3. 術後管理方針のバラつき要因
- 4. 理学療法士が取るべき実践フレーム
- 5. 研究と臨床をつなぐ提言
- 6. 結論と今後の展望
- 7. 参考文献
1.術後リハビリテーション標準化の課題
ここ数年、腰部脊柱管狭窄症(LSS)の手術件数が右肩上がりになってるのを、みなさんも実感してるんじゃないでしょうか。高齢化で症例が増える中、術後リハビリの重要性も高まってます。でも、いざ臨床で「どんなリハビリがベストプラクティスなの?」って聞かれると、正直答えに困ることも多いですよね。
Chen らが実施したカナダの調査(脊椎外科医26名とリハ専門職151名対象)のデータを見ると、この悩みは私たちだけじゃないことがわかります。この調査によると、患者を術後リハビリに定期的に紹介する外科医はたった38.5%で、34.6%に至ってはほとんど紹介してないんです。
驚くべきことに、外科医の65.4%が「全ての患者に術後リハビリは必要ない」と考えていて、「運動機能不良」「痛みが続いている」「高レベル活動への復帰希望」といった状況で選択的に紹介する傾向があるようです。臨床で「先生からリハビリの指示ないけど、どうしよう?」って場面、経験ありませんか?
特に興味深いのが、「除圧術+1~3レベル固定術」のケースで、リハ職が実際に見ている動作制限と、外科医が処方したと言う制限に大きな差があるという点です。私たちリハ職は現場で「先生はこう言ってたけど、実際は…」という状況に頭を悩ませているんですね。
この現状は日本も含めた世界中の臨床現場での課題で、術後リハビリの標準化が急務であることを示しています。Oosterhuis らのレビュー(2014)によっても、LSS術後に特化した質の高いRCTの不足が指摘されていて、現場での判断に迷うのも当然かもしれません。
2.エビデンスと現行ガイドラインの整理
患者さんから「先生、いつから◯◯していいですか?」と聞かれた時、何を根拠に答えていますか?現在のガイドラインを整理すると、
日本整形外科学会/日本脊椎脊髄病学会『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021』
術後3ヶ月時点での理学療法を「痛み・ADL/QOL改善に有用(推奨度B)」と位置づけています。でも、「具体的に何を、いつからやればいいの?」という実践的な指針はあまり示されていません。現場の私たちにとっては、もう少し具体的なプロトコルが欲しいところですよね。
北米脊椎学会(NASS)臨床ガイドライン
固定術後の長期活動制限を裏づけるエビデンスは乏しいとし、個別リスクを考慮した機能的リハビリテーションを推奨しています。要するに「過度な制限は逆効果かも」というメッセージです。
Madera らの系統的レビュー(2017)
腰椎固定術後の理学療法は短期的な痛み軽減と日常生活動作の改善に効果的である可能性が示されていますが、長期効果については「う~ん、微妙…」という状況です。
Manni らの最新メタ分析(2023)
監督下での能動的エクササイズが痛みと機能障害を改善する可能性を示す一方で、LSS術後に特化した質の高い研究が不足していると指摘しています。「効果はありそうだけど、エビデンスが弱いんだよなぁ」というジレンマを感じますね。
McGregor らの臨床試験(2010)
FASTER研究として知られるこの臨床試験では、LSS術後の構造化されたリハビリテーション介入が機能回復を促進する可能性を示唆していますが、介入の最適なタイミングと内容については更なる研究が必要と結論づけています。
3.術後管理方針のバラつき要因
Chen らの調査結果を読み解くと、手術タイプによって術後管理の考え方がかなり違うことがわかります。単純除圧術(Case 1)では、腰椎伸展(92%)と運転(75%)があまり制限されない一方、床からの持ち上げ(85%)やテーブルからの持ち上げ(75%)は厳しく制限される傾向にあります。