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2040年に向けた介護人材確保の新たな展望―リハ専門職の役割も視野に

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9日、東京・TKP新橋カンファレンスセンターにおいて、社会保障審議会福祉部会「福祉人材確保専門委員会」の第1回会合が開催されました。松原由美・早稲田大学人間科学学術院教授を委員長に、2040年を見据えた介護人材確保策の検討が本格的に始動しました。

2040年問題と介護人材の見通し

会合では、厚生労働省から介護人材確保に関する現状が報告されました。介護職員の必要数は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人に達する見通しです。一方で、介護分野の有効求人倍率は全国平均3.97倍と高水準が続いており、都市部を中心に人材確保の難しさが浮き彫りになりました。東京都では7.65倍と最も高く、特に都市部での人材確保が深刻な課題となっています。

資料5:介護人材確保の現状について

地域特性に応じた介護提供体制の構築

会合では、2040年に向けたサービス提供体制の中間とりまとめが報告され、地域を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3つに分類し、それぞれの特性に応じた対応策が示されました。中山間地域ではサービス需要の減少を踏まえた基盤維持、大都市部ではICTやAI活用による基盤整備の強化、一般市等では需要変化への柔軟な対応が求められています。

また、地域包括ケアシステムの深化に向け、地域リハビリテーション支援体制の整備、市町村が実施する「通いの場」、短期集中予防サービス(サービスC)、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施といった施策の連携強化が提案されています。これらの取組において、医療・福祉分野の専門職が重要な役割を果たすことが期待されていますが、資料ではリハ専門職(PT・OT・ST)については、広く「医療等専門職」と表現されています。

処遇改善と専門職の位置づけ

令和6年度の介護報酬改定では、処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算が「介護職員等処遇改善加算」として一本化され、加算率も引き上げられました。これにより、加算を取得している事業所では介護職員(月給・常勤)の基本給等が11,130円増(+4.6%)、平均給与額も13,960円増(+4.3%)となりました。

さらに、PT・OT・STや機能訓練指導員も処遇改善の対象として位置付けられており、34.3%の事業所で配分実績が報告されています。令和6年度補正予算による「介護人材確保・職場環境改善等事業」では、介護職員1人あたり平均5万4千円相当の補助金が支給される予定で、介護職員以外にも柔軟な活用が可能となっています。

参考資料:介護職員の処遇改善について

多職種連携と中核的介護人材の育成

日本介護福祉士会の及川ゆりこ会長は、「新規参入促進と合わせて、多様な人材を有効に機能させるため、中核的人材の育成・確保が喫緊の課題」と指摘し、キャリア形成と処遇の連動を訴えました。この文脈では、多職種連携の強化と役割分担の明確化が求められ、リハ専門職もその中核的な役割の一翼を担うことが期待されています。

また、特別養護老人ホームで介護助手を配置した場合、約73%の施設で業務負担が軽減し、約37%でサービスの質向上が報告されており、業務分担の明確化がリハ専門職の専門業務に集中できる環境整備にもつながると見られています。

テクノロジー導入と生産性向上

介護分野では、テクノロジー導入率が約32%と報告されており、令和6年度の報酬改定では施設系サービス等に対する生産性向上加算が新設されました。リハ専門職は、こうした技術革新の中で、運動機能評価や支援機器の選定、遠隔リハビリテーションの指導など、その専門性を活かした役割を果たすことができます。

外国人介護人材と連携強化

外国人介護人材についても、令和6年度補正予算では2.7億円の獲得強化事業と1.4億円の定着促進事業が措置され、訪問系サービスへの従事が令和7年4月から一定条件下で認められることになりました。多様な背景を持つ人材との効果的な連携や、専門知識の共有もリハ専門職に求められる役割となっています。

今後の展望

福祉人材確保専門委員会では、6月から夏にかけてヒアリングや議論を行い、秋頃には中間とりまとめを行う予定です。その結果は社会保障審議会福祉部会に報告され、令和9年度からの第10期介護保険事業計画に反映される見通しです。

介護需要の高まりが続く中、リハ専門職には、介護予防から自立支援、重度化防止まで幅広い場面での専門性の発揮が期待され、地域リハ体制の強化でも重要な役割が求められています。今後の議論の進展が注目されます。

▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57663.html

2040年に向けた介護人材確保の新たな展望―リハ専門職の役割も視野に

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