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病院の介護職不足が深刻化 施設との月4万円格差で人材確保困難|日慢協

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日本慢性期医療協会(日慢協)は22日の記者会見で、病院で働く介護職(看護補助者)と介護施設の介護職との処遇格差が約4万円に達し、病院での人材確保が困難になっていると発表しました。同協会は医療・介護の制度の壁を取り払った横断的な評価による「同一労働同一賃金」の実現を強く求めています。

処遇格差の実態:同じ資格でも働く場所で月4万円の差

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2024年の月額賃金(賞与込み)は以下の通りです。

  • 介護施設の介護職員:約31万3000円
  • 病院の看護助手:約27万4000円
  • 格差:約3万9000円

この格差について橋本会長は、介護保険制度下での処遇改善加算やベースアップ支援加算が年々拡充される一方、医療機関の看護補助者への処遇改善は今年2月の月額6000円引き上げとベースアップ評価料の新設が初の本格的な取り組みだったことが原因と説明しました。

令和6年度診療報酬改定での評価:初の文言化も課題残る

令和6年度診療報酬改定では、病院の介護職の重要性が初めて本格的に評価されました。

新設された看護補助体制充実加算

  • 加算1:80点(1日につき)
  • 加算2:65点(1日につき)
  • 加算3:55点(1日につき)

施設基準のポイント

  • 介護福祉士の資格が配置要件として初めて文言化
  • 主として直接患者ケアを担う看護補助者の配置基準:常時100対1以上
  • 3年以上の勤務経験を有する看護補助者を5割以上配置

橋本会長は「介護福祉士の資格が医療現場で文言化されたのは画期的」としながらも、「5割以上配置の条件が勤務年数なのは違和感がある。介護福祉士の資格要件にすべきだった」と指摘しています。

深刻な人材不足の現状:9年間で6万人減少

厚生労働省の調査データによると、病院での介護人材は大幅に減少しています。

病院100床あたりの看護補助者数の推移

  • 平成26年:15.2人
  • 令和5年:12.5人(2.7人減少)

全国の病院勤務介護人材

  • 平成26年:約24万人(介護福祉士4.3万人+看護業務補助者19.7万人)
  • 令和5年:約18万人(介護福祉士3.8万人+看護業務補助者14.3万人)
  • 減少数:約6万人

現在、介護福祉士の約8割が介護施設に勤務し、医療施設で働くのはわずか7.4%となっています。

医療現場での対応:看護師による代替が常態化

橋本会長は会見で、人材不足への対応策として多くの病院で看護師による代替が行われている実態を明らかにしました。

「60床の病棟で10人の介護職が必要なところ、募集しても5人しか来ない場合、看護師を余分に雇って基準を満たしている。本来看護師20人でよいところを25人雇用している」と具体例を示しました。

この状況について「看護師の方が給与が高いため経営を圧迫している」と説明し、一部の法人では1人当たり月8万円の差があることも明かしました。

医療・介護併設法人での深刻な問題

病院と介護施設を両方運営する法人では、給与格差により深刻な問題が生じています。

橋本会長は「同じ法人内でも給与格差があるため、介護施設に行った方が給与が高く、病院には誰も来ない」と現状を説明。さらに「格差を広げないため、処遇改善加算を算定しない法人も出てきている」と述べ、せっかく創設された制度が活用されない事態も生じていることを明らかにしました。

業務内容に大きな違いなし

会見資料によると、病院と介護施設での介護職の業務内容は以下の通りです。

直接介護(共通業務)

  • 食事介助、口腔ケア
  • 入浴介助
  • 排泄介助
  • 体位交換、更衣介助

間接介護(共通業務)

  • 環境整備、清掃
  • シーツ交換
  • 配膳・下膳

橋本会長は「同じ職種で働いている内容に大きな違いはない。食事介助、入浴介助、排泄介助など、主に介護の人がやっている」と説明しています。

指示命令系統の違い

ただし、就業場所による違いも存在します。

医療機関

  • 看護師の指示・指導のもとで業務

介護施設

  • 介護職が中心的役割
  • 看護職と対等な連携関係

また、介護福祉士は一定条件下で介護施設では口腔内喀痰吸引や経管栄養等の特定行為が実施可能ですが、医療機関では実施できません。

コロナ禍で再認識された介護職の重要性

橋本会長は「コロナ禍でECMOやICU・CCUを有する高度急性期病院でも、高齢患者が多数入院した際、コロナ治療だけでは不十分でケアが重要だった。看護師だけでは足りず、介護の力の重要性が再認識された」と振り返りました。

日慢協の提言内容

目的:就業場所に依存しない公平な処遇改善

プロセス:医療・介護の制度の壁を取り払った横断的な評価

  • 「制度」(診療報酬 vs 介護報酬)ではなく「職種」に着目した設計

アウトカム:要介護者の減少、寝たきりの防止

橋本会長は「制度や場所でなく、介護の力を公平に評価する仕組みが必要。病院介護職は寝たきりゼロへの貴重な戦力」と強調しました。

4年越しの課題

この問題は今回が初提起ではありません。2021年11月に日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会の4病院団体協議会が厚生労働大臣宛てに「病院に勤務する看護補助者の処遇改善についての要望」を提出しており、4年以上にわたって解決が求められています。

橋本会長は「この時代からもう4、5年経っているが、今はどうやっても介護の人は集まらない」と現状の深刻さを訴えました。

今後の展望

日慢協は今回の提言を通じて、医療と介護を横断した制度設計の見直しを政府に強く求めています。橋本会長は「同じ国家資格なのに場所によって処遇が違うという本質的な問題であり、慢性期医療の現場では非常に深刻な問題」と述べ、制度改正の必要性を強調しました。


【記者会見での主な質疑応答】

Q:看護補助者減少の主因は処遇格差か?
A(橋本会長):その通りです。業務内容や人間関係は以前とあまり変わっていませんが、一番変わったのは平成26年あたりからの処遇改善です。

Q:看護師による補填の詳細は?
A(橋本会長):看護師を余分に雇用し、介護業務も含めて病棟全体をカバーしています。看護師の方が給与が高いため、その分余計に持ち出しになってしまいます。

病院の介護職不足が深刻化 施設との月4万円格差で人材確保困難|日慢協

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