"あの子、いい子だったのに辞めちゃったね"
"新人がまた3ヶ月で辞めてしまった"
"ベテランの〇〇さんまで転職を考えているらしい"
こんな会話、職場でよく耳にしませんか?
PT・OT・STの離職は、多くの医療・介護施設が抱える深刻な課題です。しかし、同じような条件の施設でも、離職率に大きな差があることも事実です。
もちろん離職の理由は人それぞれですが、大きな要因の一つが「職場環境」であることが、世界各国の研究で示されています。そして、環境改善が離職防止に効果的であることも、複数の研究で報告されているのです。
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研究データが示す離職要因の実態
韓国の理学療法士研究が明らかにした職場環境の影響
韓国で実施された236名の病院勤務理学療法士を対象とした研究では、職場環境と離職意向の関係が統計的に分析されました。
この研究の重要な発見は、良好な職場環境が離職意向を大幅に減少させる効果(β≈-0.387)を持つことです。一方で、高い職場ストレスは離職意向を増加させる要因(β≈0.415)となることも確認されています。
日本の療法士481名が明かした離職を考える理由
2025年に実施された日本全国調査では、312名のPTと169名のOTを対象に、離職意向の要因が詳細に分析されました。調査結果から、以下の4つの要因が離職意向と有意に関連することが判明しました:
- 低い職務満足度
- 労働時間と給与のバランスの悪さ
- 同僚との関係性の問題
- 研究活動への高い動機(現在の臨床環境では満たされない成長欲求)
特に注目すべきは、研究や学習への強い動機を持つ療法士ほど離職を考える傾向が高いという点です。これは、専門職としての成長機会の提供が離職防止に重要であることを示唆しています。
オーストラリアの作業療法士研究:組織サポートの重要性
精神科OT34名の研究結果:
- 高い燃え尽きは低い満足度と高い離職意向に関連
- 適切な報酬・承認と知的にやりがいのある仕事は職務満足度を向上
- 過度な患者接触と慢性的なストレス・疲労は燃え尽きと離職意向を増加
103名のOTを対象とした研究:
- 職務満足度だけで離職意向の約33%を説明
- ワークライフバランスの悪さや低い努力-報酬比は離職意向を増加
- 適切な承認(名声、個人的満足)は職務満足度向上と離職意向減少に関連
韓国の作業療法士257名:ストレスと組織サポートの相互作用
主要な発見:
- 高い職業ストレスはプレゼンティーイズム(体調不良でも出勤)を増加
- プレゼンティーイズムは離職意向を高める媒介要因として機能
- 重要な点:強い組織サポートがある場合、ストレスの離職への影響が緩和される
言語聴覚士の国際比較研究:共通する離職要因
1998-2018年のデータを含む17の研究を対象とした系統的レビューでは、SLPの離職に関わる要因が国際比較されました。
一貫して確認された3つの重要要因:
- 1.業務量・ケースロードサイズ
- 2.専門的サポート
- 3.給与水準
研究結果に基づく改善の方向性
職場環境改善の重点領域
1. 業務負荷の適正化
-
管理可能な業務量の設定
-
適切な人員配置の確保
-
業務効率化による時間的余裕の創出
2. 組織サポート体制の強化
-
上司・管理職からの支援体制
-
困難な状況での具体的サポート提供
-
意思決定プロセスへの参加機会
3. 承認・評価システムの改善
-
適切な努力-報酬バランスの確保
-
専門的貢献への承認と評価
-
キャリア発展機会の提供
4. 専門的成長機会の確保
-
継続教育・研修機会の提供
-
研究活動への支援
-
専門性向上のためのリソース確保
対人関係とチームワークの改善
複数の研究で、同僚関係や職場の対人関係が離職意向に大きく影響することが確認されています。
研究で示された改善要素:
- 心理的安全性の確保
- チーム内のサポート体制
- 建設的なコミュニケーション環境
- 対人葛藤の適切な解決
ワークライフバランスの改善
具体的な改善領域:
- 勤務時間の適正化
- 有給休暇取得の促進
- 柔軟な働き方制度の導入
- 私生活との両立支援
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実践に向けたチェックポイント
組織レベルでの取り組み
□ 業務量の定期的な評価と適正化□ 管理職・上司のサポートスキル向上
□ 承認・評価制度の見直し
□ 継続教育機会の計画的提供
□ ワークライフバランス支援制度の整備
チームレベルでの取り組み
□ 定期的な業務相談機会の設定□ チーム内コミュニケーションの促進
□ 互いの専門性の尊重と活用
□ 問題解決への協力体制構築
個人レベルでの取り組み
□ 自身のストレス状況の把握□ 適切な休息とセルフケア
□ 専門的成長目標の設定
□ 組織内サポートリソースの活用
効果測定と継続的改善
研究結果を実践に活かすためには、改善効果の継続的な測定が重要です。
測定すべき指標:
-
離職率・離職意向の変化
-
職務満足度の推移
-
燃え尽き症候群の発生状況
-
ワークライフバランスの改善度
-
組織サポートの実感度
まとめ:研究が示す確かな道筋
世界各国で実施された研究は、職場環境の改善が確実に離職防止効果をもたらすことを示しています。重要なのは、個人の努力だけでなく、組織全体でのシステマティックな取り組みです。
研究が一貫して示すポイント:
- ● 業務負荷の適正化は離職防止の基盤
- ● 組織サポートはストレスの悪影響を緩和する
- ● 承認と成長機会は専門職の満足度を高める
- ● 良好な対人関係は職場への定着を促進する
"また一人辞めてしまった..." から "みんなで長く働き続けられる職場" へ
研究データが示す道筋に沿って、持続可能な職場環境づくりを進めていきましょう。
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参考文献
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- Matsumoto et al. (2025). Turnover Tendency and Related Factors Among Rehabilitation Professionals in Japan. DOI: 10.7759/cureus.82645
- Scanlan & Still (2013). Job satisfaction, burnout and turnover intention in occupational therapists working in mental health. DOI: 10.1111/1440-1630.12067
- Scanlan et al. (2013). Enhancing retention of occupational therapists working in mental health. DOI: 10.1111/1440-1630.12074
- Chun & Song (2020). A moderated mediation analysis of occupational stress, presenteeism, and turnover intention among occupational therapists in Korea. DOI: 10.1002/1348-9585.12153
- Ewen et al. (2021). Well-being, job satisfaction, stress and burnout in speech-language pathologists: A review. DOI: 10.1080/17549507.2020.1758210
- Yeoh et al. (2024). Unveiling the Exodus: A scoping review of attrition in allied health. DOI: 10.1371/journal.pone.0308302