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日本病院会・相澤会長「3%改定を病院の方向転換に活かせ」──地域医療構想の議論、数値偏重に警鐘

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日本病院会の相澤孝夫会長は12月23日の定例記者会見で、2026年度診療報酬改定の本体3.09%引き上げについて「30年ぶりの政府の思い切った決断」と評価した上で、「この改定を病院の方向転換に活かすべきタイミング」と強調しました。一方、地域医療構想及び医療計画に関する検討会での議論については、救急拠点病院の配置を「人口20万〜30万人に1カ所」といった数値で画一的に決める方向性に強い懸念を示し、地域の実情に応じたデータに基づく議論の必要性を訴えました。

30年ぶりの3%超え改定、「将来を考える心のゆとりを」

相澤会長は、本体3.09%という改定率について「政府の思い切った決断」と評価。ただし、日本病院会が一貫して求めてきたのは「入院基本料の10%以上引き上げ」であり、改定率全体で10%を要望したわけではないと改めて強調しました。

「病院が赤字でどうしようかと走り回っている状況では、将来を考えるゆとりがなくなる。この3%を活用して、自分たちの病院がどの方向に進むべきか舵を切る時期だ」

相澤会長は「撤退戦」という表現を使いながらも、「選択の時期」と言い換え、これまで通りの医療では立ち行かなくなる中で、社会の変化に見合った病院医療を提供するための方向転換が必要だと訴えました。診療報酬の配分先がどこになるかを見極めながら、各病院が将来の方向性を判断する重要な局面との認識を示した形です。

地域医療構想、「数値で縛る」方針に異議

会見では、12月20日に開催された第5回定期常任理事会での議論も報告されました。同会では、地域医療構想及び医療計画に関する検討会の進捗について岡田副会長から報告を受け、今後のガイドライン策定に向けた意見交換が行われました。日本病院会は1月中に意見をまとめ、2月には正式に意見を提出する予定です。

常任理事会で最も議論となったのは、救急拠点病院の配置を数値基準で決めようとする国の方針です。相澤会長は「救急拠点病院は地域で地域の身近な医療を守ろうとする病院が対応できない患者を引き受ける病院。当然地域ごとに違うし、1カ所だけでなく2カ所という場合もある。数値で決めていくのは問題」と指摘しました。

地方都市で3つの病院が分野ごとに特徴を出して急性期医療を担っているケースを例に挙げ、「それを1つにすることがいいのか、各病院が分野ごとに役割分担することがいいのか。病院のデータを見ながら、実際の医療提供状況を踏まえて議論すべき」と述べました。

「急性期=手術」の固定観念、高齢者救急の多様性に目を

常任理事会では、急性期医療の捉え方についても意見が出ました。相澤会長は「急性期イコール手術をするところという固定観念があるが、手術以外の内科的な治療もある」と指摘。高齢者救急についても、元気に社会生活を送っていた人が突如病気になる場合と、療養生活を送っていて具合が悪くなる場合では対応が異なるとし、高齢者救急の多様性を考慮した議論の必要性を訴えました。

都道府県から各病院の医療提供データが地域医療構想調整会議に十分に提供されず、「病院が隣の病院が何をやっているかよくわからない状況で議論している」という課題も指摘されました。

医師の大都市集中、「病院総合医」の魅力発信を

医師の偏在問題についても言及がありました。若手医師が大都市に集中し、地方の大学が医師派遣機能を持てない状況の中で、相澤会長は「派遣よりも、地域密着型の身近な医療を提供することが医師としてやりがいがあり楽しいということをアピールしていくことが大事」と強調。特に日本病院会が推進する「病院総合医」の楽しさとやりがいを知ってもらうことの重要性を訴えました。

「上から目線」ではなく、住民の理解と納得を

相澤会長は個人的な見解として、「地域で今後人が暮らしていくために身近な医療をどうしていくかの議論があまりなされていない」「地域包括ケアという言葉すら出てこない状況」に問題意識を示しました。

「これまでの問題点は上から目線で『こうしろ』という形で言ってきたこと。住民や地方に住んでいる方々、地方の行政の理解と納得を得ながら前に進めていくことが大事。そのための手段の明示が必要だが、その議論が今あまりなされていない」

日本病院会は、数値で画一的に縛るのではなく、データをしっかりと示しながら地域で議論していく方向性で意見をまとめていく方針です。

まとめ・今後の展望

日本病院会は1月中に地域医療構想に関する意見をまとめ、2月には検討会に正式に意見を提出する予定です。診療報酬改定については、今後示される具体的な配分内容を見極めながら、各病院が将来の方向性を判断していく局面を迎えます。

日本病院会・相澤会長「3%改定を病院の方向転換に活かせ」──地域医療構想の議論、数値偏重に警鐘

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