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新人療法士の「自信のなさ」を見抜けるか ── 指導者が知るべきインポスター症候群

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あの新人、なぜ質問しなくなったのか

4月に入職した新人が、最初の頃は何でも質問してきた。わからないことはわからないと言えていた。素直で伸びそうだと思った。

それが半年も経つと、質問が減る。自分で調べて解決しようとしているのか、それとも聞けなくなっているのか。判断がつかない。

ある日、簡単なミスが見つかる。なぜ確認しなかったのかと聞くと、黙ってしまう。

この新人は、能力がないのではありません。自分に能力がないと思い込んでいる可能性があります。インポスター症候群です。

前回の記事で紹介した通り、医療従事者のおよそ62%がこれを経験しています。新人だけの問題ではありませんが、早期キャリア層ではリスクが高い傾向があります。そして指導者の関わり方次第で、悪化もすれば、改善の可能性もあります。

この記事では、指導者・プリセプターが知っておくべきインポスター症候群の見抜き方と対応策を整理します。

見落としやすい5つのサイン

インポスター症候群は、本人が隠そうとするため見抜きにくいとされています。能力がないと思われたくないから、必死で取り繕う。以下のようなサインが見られることがあります。

1. 質問が減る

入職当初は質問できていたのに、徐々に減っていく。これを成長と捉えがちですが、聞けなくなっている可能性もあります。わからないことを認めると、能力がないと思われる。そう考えて、一人で抱え込んでいるのかもしれません。

2. 過剰な準備

誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰る。一見すると熱心に見えます。しかし、失敗を恐れて過剰に準備しているだけかもしれません。インポスター症候群と完璧主義には強い関連があることがメタ分析で示されています。

3. 褒めても響かない

良い仕事をしたと伝えても、素直に受け取らない。「たまたまです」「患者さんが良かっただけです」と返してくる。これは謙遜ではなく、本気でそう思っている可能性があります。成功を自分の能力ではなく、運や外的要因に帰属してしまう。これはインポスター症候群の中核的な特徴です。

4. 意見を言わなくなる

カンファレンスや症例検討で発言しない。自分の意見には価値がないと思っているのかもしれません。間違ったことを言って、無能だと思われるのが怖い。だから黙っている方が安全だと判断している可能性があります。

5. 昇進や新しい役割を避ける

リーダー業務や後輩指導を任せようとすると、固辞する。自分にはまだ早いと言う。新しい役割で失敗することを恐れている可能性があります。研究では、インポスター症候群がキャリア発達や意思決定に悪影響を与えることが示唆されています。

心理的安全性は1年目で崩れやすい

ハーバードビジネススクールのAmy Edmondsonらの研究によれば、新人の心理的安全性は入職後1年で大きく低下する傾向があります。

入職直後は、いわば「知らなくて当然」の時期です。組織は学習を重視し、質問やミスが許容されます。しかし時間が経つと、焦点はパフォーマンスに移ります。期待は明確になり、ミスの許容範囲は狭まる。新人は自分を証明しなければならないと感じ始め、発言や新しいアイデアの共有に不安を覚えるようになります。

医療現場では、患者の安全に関わるため、この傾向がさらに強い可能性があります。ミスへの許容度が低い環境では、新人は萎縮しやすいかもしれません。

興味深いことに、心理的安全性が高いチームに配属された新人は、この低下が起きにくいことが示されています。逆に、心理的安全性が低いチームでは、新人の心理的安全性も急速に崩れる。つまり、チームの文化が新人のインポスター症候群を悪化させることも、防ぐこともありえます。

指導者ができる5つのこと

2024年のBMC Medical Educationに掲載されたスコーピングレビューでは、個人・同僚・組織レベルでの支援の重要性が強調されています。指導者がインポスター症候群を理解し、適切に対応することで、新人の発達を支援できる可能性があります。

新人療法士の「自信のなさ」を見抜けるか ── 指導者が知るべきインポスター症候群

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