厚生労働省は6月29日、社会保障審議会介護保険部会(第135回)を開き、令和9年度から始まる第10期介護保険事業(支援)計画の基本指針案を示しました。地域包括支援センターの体制強化策として、従来の三職種(保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員)以外に「リハビリテーション専門職等」の配置を新たに例示したことが、リハ職にとって大きなポイントです。自立支援・重度化防止や地域リハビリテーション体制の構築も、引き続き計画の柱に位置づけられました。
地域包括支援センターの体制強化にリハ職を例示
基本指針案は、地域包括支援センターについて「今後の高齢化の進展等に伴って増加するニーズに適切に対応する観点から、業務負担軽減を進めるとともに体制の整備を図ることが必要」としています。その上で、業務量に見合った人員体制の確保を市町村に求めています。
注目されるのは、配置する専門職の記述です。案には「保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の三職種以外のリハビリテーション専門職等の専門職や事務職の配置も含め、必要な体制を検討し、その確保に取り組むことが重要である」と記されました。現行指針は「三職種以外の専門職や事務職の配置」とだけ書かれており、「リハビリテーション専門職等」という具体例が新たに加わった形です。
地域包括支援センターの配置職種をめぐる記述(新旧対照)
第10期 基本指針案
三職種以外の「リハビリテーション専門職等の専門職や事務職」の配置も含め、必要な体制を検討し、確保に取り組む
現行(第9期)指針
三職種以外の「専門職や事務職」の配置も含め、必要な体制を検討し、確保に取り組む
これは配置の義務化ではなく、市町村が検討すべき選択肢としての例示です。必要な人員の確保にあたっては、生活支援体制整備事業や家族介護支援事業等の活用も有用だとしています。
会場では、逢坂伸子委員(全国市長会、大阪府大東市長)が体制強化を評価しました。前回の部会で三職種以外の専門職配置を要望していたといい、リハビリテーション専門職等が職種として盛り込まれたことに謝意を示しました。
一方で逢坂委員は、現場の課題も指摘しました。介護支援専門員(ケアマネジャー)が不足し、重度者のケアプラン作成で手一杯になっているため、軽度者のサービス導入が遅れたり退院が滞ったりしているという実情です。地域包括支援センターに加わった専門職が軽度者のケアプランを担えるようになれば、こうした目詰まりを防げるとして、制度上の対応を求めました。

自立支援・重度化防止と地域リハビリ体制は柱を維持
基本指針は、市町村・都道府県が3年ごとに作る介護保険事業(支援)計画の土台となる国の告示です。第10期は令和9年度から11年度までの3年間を対象とし、2040年を見据えた中長期の介護サービス見込み量を、都道府県が積極的に関与しながら推計していく点が柱になっています。
第一の柱として掲げられたのが「自立支援、介護予防・重度化防止の推進」です。介護予防の通いの場の充実、リハビリテーション専門職等との連携の推進、口腔機能向上や低栄養防止、地域ケア会議の多職種連携などを並べています。要介護者等がその能力に応じて自立した生活を営めるよう、リハビリテーションに係るサービスが計画的に提供されるよう取り組むことが重要だと明記しました。
在宅医療・介護連携の項では、連携を担う職種として「リハビリテーションの提供に当たる理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士」を医師や看護職員などと並べて記載しています。入院だけでなく外来・在宅、介護との連携も対象に広がった新たな地域医療構想との接続も、新たに盛り込まれました。
都道府県の計画に関する部分では、自立支援・重度化防止を進めるため「地域支援事業と介護保険給付の双方の観点からの地域リハビリテーション体制の構築が重要」としています。具体的には、都道府県医師会などで構成する協議会を設けてリハビリテーション連携指針を作成すること、都道府県リハビリテーション支援センターがリハビリ資源の把握や、通いの場・地域ケア会議への医療専門職派遣の調整などを担うことが挙げられました。リハビリに関する目標設定では、国が示すリハビリテーションサービス提供体制に関する指標を参考にすることが望ましいとしています。
地域支援事業のなかでリハ職をどう活かすかの記述も具体化されています。案では、通いの場をはじめとした総合事業のサービスに医療専門職等を安定的に派遣するため、医療機関や介護事業所との調整を協議の場で行うことが重要だとしました。介護予防の推進についても、都道府県医師会等との連携を通じたリハビリテーション専門職等の広域調整を、都道府県が担う取組として挙げています。
この地域リハビリテーション体制をめぐっては、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が注文を付けました。地域リハビリテーションの位置づけは前回(第9期)の指針で入ったものの、全国的に取り組みが変わった印象がないと指摘。国が指針を示す以上は、取り組み状況の実態や変化を確認し、今後に活かしてほしいと述べました。
「特定地域」の具体基準を提示、対象は約2割の市町村
もう一つの議題が、中山間・人口減少地域を「特定地域」として線引きする考え方です。6月に成立・公布された改正法(社会福祉法等の一部を改正する法律)で、特定地域では人員・設備・運営基準の弾力化を伴う特定地域居宅サービス等の仕組みが新設されました。対象となる居宅サービス等には、リハビリ専門職が関わる訪問リハビリや通所リハビリも含まれます。人材の乏しい地域でこうしたサービスをどう維持するかが問われます。
厚労省は、介護サービス利用の中心となる75歳以上人口に着目した基準案を示しました。サービス確保が著しく困難な地域を対象とする特別地域加算・離島等相当サービスの対象地域を基本に含めたうえで、「75歳以上人口密度が5人/平方キロメートル未満」または「75歳以上人口が1,000人未満かつ減少」に該当する市町村を加えるという考え方です。
この基準に当てはめると、対象は356市町村(全市町村の20.5%)にのぼります。内訳は、全域指定の対象である299市町村に、人口密度の基準で新たに該当する40市町村、人口の基準で新たに該当する17町村を加えた数です。さらに、市町村内の一部地域や、事業所が僅少で廃止が検討されるなどサービス基盤の維持が困難な地域も、特定地域に指定できるとしています。
背景には、要介護認定率の高まりがあります。資料によると、要介護・要支援の認定率は65~74歳の4.3%に対し、75歳以上で30.8%、85歳以上では58.2%に達します。
委員からは、サービスの質と職員の負担を懸念する声が相次ぎました。和田誠委員(認知症の人と家族の会)は、人口が減ってもニーズが減らない地域が多く、基準案が拙速で広範すぎると指摘。対象地域の事業所数や移行見込みなどのデータ開示を求めました。染川朗委員(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン)は、人員配置基準の緩和が介護職員の過重労働やサービスの質の低下を招かないよう、慎重な議論を要望しました。
特定地域で提供する特例介護サービスの新たな類型や人員配置基準は、今後、介護給付費分科会で議論される予定です。

リハ職が押さえておきたい要点
今回の基本指針案を、リハビリ専門職(PT・OT・ST)の視点で整理すると、押さえどころは次の4点です。
1. 地域包括支援センターの配置職種に「リハ専門職等」が明記
三職種以外の配置例として指針上に位置づけ。義務ではないが、リハ職が関わる選択肢が国の指針に書き込まれた。
2. 通いの場・地域ケア会議への派遣調整が具体化
総合事業や通いの場への医療専門職派遣を、協議の場で調整すると明記。地域支援事業でのリハ職活用の道筋が示された。
3. 地域リハビリテーション体制は引き続き中核
都道府県リハビリテーション支援センターとリハビリテーション連携指針が体制の柱。目標設定では国の提供体制指標を参考に。
4. 中山間・人口減少地域では通所・訪問リハの維持が論点
特定地域では人員配置基準の弾力化が想定され、サービスの質と職員負担への懸念が委員から相次いだ。具体設計は介護給付費分科会へ。
まとめ・今後の展望
厚労省は、この日の委員意見を反映したうえで基本指針を確定し、自治体が第10期計画の策定に入れるよう示す方針です。寄せられた意見の反映は、事務局と部会長で引き続き検討する扱いとなりました。
改正法の概要やケアマネジャーの更新制廃止については既報の通りです。特定地域の対象を決める手続きや、特例介護サービスの人員配置基準といった具体論は、今後の政省令と介護給付費分科会での議論に委ねられます。リハ職の働く場である地域包括支援センターや在宅・通所のリハサービスに直結する内容だけに、POSTでは続報を追います。
※委員の発言は、当日の会議配信・傍聴に基づく要旨です。正式な議事録は後日、厚生労働省から公表されます。






