厚生労働省は9月18日の社会保障審議会介護保険部会(第136回)で、介護情報基盤の進捗を報告しました。医療と介護の間で電子的に共有する文書として、リハビリテーションに関する計画書を実装に向けて検討することが適当と整理されています。ケアプランデータ連携システムは令和9年1月をめどに介護情報基盤へ統合されます。現行のアプリ版は使えなくなるため、事業所側には登録の切り替えが必要です。
リハビリ計画書、「実装に向けて検討することが適当」に
医療と介護の間でどの文書を電子的にやりとりするか。この検討は本年3月から、健康・医療・介護情報利活用検討会の2つのワーキンググループの合同開催で進められてきました。7月23日に「医療・介護間における電子的な情報連携に係る議論の整理」がまとまっています。
優先的に実装を進めるとされたのは、診療情報提供書と訪問看護指示書・計画書・報告書です。診療情報提供書には退院時サマリーも含みます。すでに一定の標準様式および標準仕様の検討がなされている、というのが理由でした。
リハビリテーションに関する計画書は、この優先実装には入っていません。医療のものも介護のものも、入院時情報提供書等と並んで次の段階に置かれました。共有項目に係る一定の様式が存在し、実用性が高いと考えられる文書として、実装に向けて検討することが適当と書かれています。
この方向は3月の合同会議でも示されていました。当時の資料は、共有する文書を診療情報提供書と訪問看護指示書・計画書・報告書から開始してはどうかと提案しています。その注記にリハビリテーション計画書が登場します。現在医療・介護間でやりとりされている計画書についても、標準仕様の作成など電子化に向けた検討を進めることが考えられる、という書きぶりでした。
実装の時期は決まっていません。議論の整理は、情報の共有は段階的にかつ検証しながら進めること、生じるコストや負担なども踏まえながら検討を進めることを求めています。
ケアプランデータ連携は令和9年1月に統合 アプリ版は使えなくなる
事業所の実務がはっきり動くのは、ケアプランデータ連携システムの扱いです。
このシステムは令和5年度から国民健康保険中央会が構築してきました。居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で、毎月紙でやりとりされていたケアプランを電子的に共有する仕組みです。異なる介護ソフト同士でもデータ連携ができます。
厚労省は令和9年1月をめどに、これを介護情報基盤へ統合する方針を示しました。統合後は介護情報基盤の一機能としてケアプランデータ連携が可能になります。事業者の利用料は発生しません。利用料は令和7年5月から「フリーパス」として無料化されており、その状態が続く形です。
注意が必要なのは、システムそのものが入れ替わる点です。現行のアプリ版は、介護事業所のパソコンに介護ソフトとは別に、国保中央会が配布するアプリをインストールして使う方式でした。統合後はこれが使えなくなります。代わりに利用するのが、介護保険資格確認等WEBサービス、いわゆるWEB版です。
令和9年1月以降もケアプランのデータ連携を行うには、事業所で新システムの事業所・管理者登録を行う必要があります。厚労省は7月29日に移行の事務連絡を発出し、8月26日に第1回の説明会を開きました。統合日までに複数回の説明会を開く予定です。
令和9年4月以降は、API連携により介護ソフトから直接データ連携ができるようになる見通しです。ただし介護ソフト側の改修が必要になります。
導入率は10.2%から53.1%へ 報酬改定で要件化が効いた
ケアプランデータ連携システムの導入率は、この1年で大きく動きました。
令和7年5月末は5.3%。利用料を無料にする「フリーパス」が始まった時点の水準です。令和7年11月末で9.3%と、4%ポイントの上昇にとどまっていました。
流れが変わったのは令和7年12月です。令和7年度補正予算の「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」が周知され、この事業はケアプランデータ連携システムへの加入を要件としていました。同じ12月末には令和8年度介護報酬改定が決まっています。改定ではデータ連携の実績も必要とされました。
結果として、令和7年12月末の10.2%から令和8年7月末には53.1%へ、約43%ポイント上昇しました。令和8年6月の報酬改定施行後も伸びは続いており、厚労省はさらなる上昇を見込んでいます。

厚生労働省 第136回社会保障審議会介護保険部会 資料3より
※導入率は、該当時点で有効なライセンスから算出した数値です。
紙のやりとりを電子化する効果として、厚労省は調査研究の試算を示しています。印刷や郵送、移動等に要する作業時間が事業所全体で月52.4時間から18.1時間へ、約3分の1に削減。人件費や印刷費、郵送費、交通費などの経費が月13.4万円から6.7万円へ、約2分の1に削減されるという内容です。令和2年度の老人保健健康増進等事業における試算にもとづくものです。
LIFE情報は令和9年度上期に本人・市町村も閲覧可能へ
介護情報基盤そのものは、令和8年4月1日から運用が始まっています。本格運用の開始は令和10年4月1日です。
市町村側の準備状況を見ます。令和10年4月1日の本格運用開始までに利用開始日が確定しているのは1,545市町村。令和8年7月10日時点の数字です。内訳は令和8年度が416、令和9年度が1,129で、ほかに196市町村が調整中となっています。
閲覧機能は順次実装されます。ここで読み違えやすいのは、実装の時期が情報の種類だけでなく、誰が見るかによっても分かれている点です。
令和8年度下期に実装が予定されているのは、ケアプランを居宅介護支援事業所・介護事業所・医療機関が閲覧する機能です。居宅サービス計画書や週間サービス計画表、サービス利用票などが対象になります。
LIFE情報(ADL等)とケアプランを利用者本人と市町村が閲覧する機能は、これより遅れて令和9年度上期の予定です。要介護認定申請書も同じ枠に入っています。つまり事業所側がケアプランを見られるようになるほうが、本人が見られるようになるより先という順序です。

厚生労働省 第136回社会保障審議会介護保険部会 資料3より
介護保険被保険者証等と、住宅改修費・福祉用具購入費の利用情報は、関係者が閲覧できる情報として整理されています。認定調査票と主治医意見書には制約が付きます。医療機関については、主治医意見書作成依頼が送付された医療機関の医師と医師事務作業補助者に限り、要介護認定申請書の提出日から30日間のみ閲覧できる扱いです。
利用者本人はマイナポータルから確認します。介護保険証と認定審査進捗状況は令和8年4月1日時点で閲覧可能。そのほかの情報は、住んでいる自治体が介護情報基盤の利用を開始してから閲覧できるようになります。
事業所向けの補助は令和9年3月まで
令和8年度は、介護事業所と医療機関向けの支援策も動いています。助成の対象はカードリーダーの購入経費と、介護情報基盤との接続サポート等経費です。
助成限度額はサービス種別で分かれます。訪問・通所・短期滞在系はカードリーダー3台まで、2つを合算した助成限度額は6.4万円。居住・入所系は2台まで5.5万円、その他は1台まで4.2万円です。同一事業所で複数のサービスを提供する場合は、種別ごとの助成限度額を合計できます。
申請は国民健康保険中央会の介護情報基盤ポータル経由で受け付けています。令和8年度の受付期間は令和8年5月7日から令和9年3月12日までの予定です。
「導入率を成果にしない」 委員からの注文
報告に対して、委員からは運用面の注文が出ました。
山際淳委員(民間介護事業推進委員会代表委員)は、統合の方向そのものは推進すべきだとしたうえで、指標の置き方に釘を刺しました。システムの導入率そのものを成果にしないことが重要だ、という指摘です。現場にとって重要なのは、システムの活用でどれだけ業務が減って職員の業務時間が削減されたか。その時間を利用者へのケアにどれだけ振り向けられたかだと述べました。システム構築にあたっては介護現場の実態や情報を十分に反映するよう求めています。
津下一代委員(日本栄養大学教授)が問題にしたのは、閲覧できる情報の限定です。高齢者は複数の医療機関を受診していたり、多剤の状況があったり、入退院を繰り返していたりします。利用している介護事業所も複数にわたります。つながってはいても、すべてを簡単に把握するのは難しいのではないかという見立てです。データをつなげて終わりではなく、より活用しやすい見え方まで含めて、現場で使えるところまで順次進めてほしいと述べました。
山名宗悟委員(全国町村会行政委員会副委員長、兵庫県神河町長)は、市町村間の差を懸念しました。利用開始日が確定していない市町村もあり、介護運営に差が生じることも考えられます。小規模な町村は専門人材の確保が難しく、システム改修やデータ移行を円滑に進められないことも想定されるとして、地域の実情に応じた支援を求めました。小規模な事業者についても、人材不足や財政的な余裕のなさから対応が難しいことがあるとして、取り残されないよう技術的・財政的な支援を要請しています。
山田淳子委員(全国老人福祉施設協議会副会長)は、関係機関がしっかり運用し活用しなければ機能しないと述べました。円滑な導入に向けた広報活動や事前準備への支援を求めています。技術的なトラブルへの対応窓口の検討も要請しました。
リハ職が押さえておきたい要点
1. リハビリ計画書の電子共有は「検討対象」の段階
優先実装の第1グループではありません。実装時期も未定です。ただし医療と介護をまたぐ共有文書として、公的な検討の俎上に載りました。
2. 令和9年1月までにWEB版への登録が必要
ケアプランデータ連携を使っている事業所は、アプリ版が使えなくなります。通所リハ・訪問リハもデータ連携の当事者です。
3. LIFE情報を本人が見られるようになる
令和9年度上期の実装予定です。事業所が提出したADL等の情報を、利用者本人がマイナポータルから確認する形になります。
4. カードリーダー等の補助は年度内が期限
訪問・通所・短期滞在系は3台まで、助成限度額6.4万円。申請受付は令和9年3月12日までの予定です。
まとめ・今後の展望
介護情報基盤は令和10年4月1日の本格運用に向けて、機能を順次実装していく段階にあります。直近で事業所側の対応が必要なのは、令和9年1月のケアプランデータ連携システムの統合です。
リハビリテーション計画書の電子共有については、標準様式や標準仕様の検討が前提になります。厚労省は医療側とも連携しながら介護情報基盤の機能拡充を進めるとしており、次の報告を待つ段階です。
同じ日の部会では、利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直しについても議論が再開されました。その内容は別途お伝えしています。
※委員の発言は、当日の会議配信に基づく要旨です。正式な議事録は後日、厚生労働省から公表されます。









