手を繋いで歩いたり、歩行介助の場面であったり、 二者の身体が軽く接触すると,両者の姿勢の揺らぎが無意識的に類似するそうです。 畿央大学大学院健康科学研究科の石垣智也らは,この揺らぎの類似性と二者間の社会心理学的な関係性(親密度)が関係することを明らかとしました。
実験では,既存の社会的関係にある同性ペアを対象に,それぞれパートナーへの関係性(親密度)を評価しました.その後,閉眼安静立位姿勢にて身体接触を行わない条件(非接触条件)と,接触による力学的影響を最小化するライトタッチという方法(約102g未満の接触力)で軽い身体接触を行う条件(接触条件)の姿勢の揺らぎを二者同時測定し,姿勢の揺らぎの類似性とペアの親密度との関係を分析しました。
結果,対象者の自覚なしに接触条件では非接触条件に比べて高い揺らぎの類似性を認め,接触条件で無意識的な二者間姿勢協調を生じていることが確認されました。
さらに,この姿勢協調の程度とペアの親密度との関係を分析したところ,左右方向(パートナーが立っている側)における姿勢協調の程度と親密度においては正の関係(親密度が高いほど姿勢の揺らぎが類似する)を示したのに対し,前後方向では負の関係(親密度が低いほど姿勢の揺らぎが類似する)を示しました。
つまり,身体接触による触覚情報から生じる無意識的な二者間姿勢協調は,相互作用する二者の社会的な関係性(親密度)と関係していることが明らかとなりました。
この研究結果は,Frontiers in Psychology誌(Association between Unintentional Interpersonal Postural Coordination Produced by Interpersonal Light Touch and the Intensity of Social Relationship)に掲載されています。