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オーストラリアへの大学院留学に必要なこと #1|斎藤寛樹先生

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海外の大学院で学ぼうと思ったきっかけ

私は大学卒業後、整形外科及びスポーツ理学療法に興味があったため、整形外科病院に勤めました。病院では、第一線で活躍しているドクターが何人もいました。

 

とても勉強になったのは、骨折、反復性肩関節脱臼、前十字靭帯損傷、アキレス腱断裂など構造的破綻が明確な場合、診断法から治療方針そして予後までしっかり確立していることでした。

 

そのため、ほとんどの患者さんは大きな後遺症を残すことなく日常生活またはスポーツ復帰ができます。 また診断、手術方法は年々発展しているため患者さんはより良い治療を受けることができています。

 

幸い、規模の大きい病院だったため、様々な症例を経験することができました。

 

しかし、痛みを 主症状とするとそのような明確なプロトコールが存在しなくなります。患者さんは解剖学的病態を正常に戻しても改善しない、また解剖学的破綻が限りなく小さいが、症状が強いケースも多くいます。

 

つまり痛みというのは解剖学的な異常、純粋な炎症だけでは説明がつかないことが多いのです。そのため 、手術、投薬、wait and see(見守る) で改善が難しいと判断されれば、理学療法士に治療が託されることが多いです。

 

それでは理学療法とは何をするかというと、簡単に言えば動きを改善することで機能を高めることが専門です。臨床に出ていろんなことを調べていくと、理学療法は評価、治療方法がたくさんあることに気がつきました。

 

同じ疾患であっても各理学療法士の判断で、筋肉を緩める、スタビリゼーション、全身の運動連鎖を修正するなどをしてアプローチしていきます 。

 

これは 広い視点に立って患者さんに対して個別の治療が展開できるという利点があります。事実、何人かの理学療法士の先輩たちは結果をしっかり出していて、患者さんからもドクターからも信頼は厚いものがありました。

 

しかし、たくさんの理学療法士が様々なコンセプトを元に治療をしているのを見ていると、何が理学療法なのかわからなくなりました。そこでまずは若手の理学療法士として、 標準的な評価及び治療を提供しようと思いエビデンスを調べました。

 

調べていくと、 質の高い標準的な理学療法を提供するには海外の論文をみないと難しいことがわかりました 。

 

なぜなら整形及びスポーツ理学療法において、質の高い臨床研究の大部分は日本以外で行われているからです。

 

そして海外では、昔から行われた治療手技や考え方が研究によってどんどん否定され、それをベースに新しい考えがどんどん発展してきています。例えば、骨盤痛の痛みの原因は仙腸関節自体が微妙に“ずれる”事で痛みが出るとされ、そのずれを修正する治療法が何年も行われていました。

 

しかし研究により、仙腸関節自体がずれないのではないかという意見も言われてきており、また理学療法士が行う徒手的な介入にはエビデンスが乏しいこともわかっています。

 

痛みはとても複雑な神経システムの結果として生じるため近年では痛みの部位だけにとらわれず、biopsychosocial model(生物心理社会モデル)として、患者さんの神経システムを敏感にする要素(stress, anxiety , belief ,expectation, 異常な運動パターンなど)を特定し、介入していく流れになってきています。 

 

このように理学療法という分野がサイエンスという形で吟味され、取捨選択されて過去の研究を元に評価、治療内容が発展していく事にとても魅力を感じ、実際に海外で勉強したいという気持ちが強くなってきました。

 

そんな中、海外では日本にない臨床技術を磨くことに特化した大学院があるということを知ったため、留学を決意しました。

 

次のページ>>私がなぜCurtin大学を選んだのか。

 

オーストラリアへの大学院留学に必要なこと #1|斎藤寛樹先生

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