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第三回:運動連鎖のはじまり【フィジオ運動連鎖アプローチ協会代表|理学療法士 山本尚司先生】

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リハビリテーションの理念を体現する専門職としての理学療法士

 

―2003年に運動連鎖アプローチ研究会を発足するまでのお話を伺いたいのですが、運動連鎖という言葉は、そもそもこの時からあったんですか?

山本先生 運動連鎖という概念はありましたね。正確にはKinetic chainという言葉がありopen kinetic chainとclose kinetic chainという概念がありました。運動連鎖という言葉は、今ほど使われていなかったと思います。

 

20代の頃は、研究をはじめ、スポーツ現場でのトレーナー活動、整体やカイロプラクティック、オステオパシー、咬合などの研鑽をしていました。理学療法よりも、外の世界を観る機会が多かったのですが、30歳になってから、「理学療法では今何が流行っているのだろうか?」と振り返ってみたときに、運動器では昭和大学藤が丘病院が一世を風靡していました。昭和大学は学生時代に臨床実習地だったのですが、当時から理学療法士の先輩方の医学的知識が高く、医師と連携することで、理学療法が医学として確立されていました。

 

「整形外科理学療法の理論と技術」(メジカルピュー社1997年)は革命的な本でした。理学療法において部分と全身がつながった初めての書籍だと思います。理学療法は原則として、〝医師の指示のもと”ですから、膝関節疾患において体幹にアプローチするということは、あり得ない時代でしたから。診断部位だけではなく、全身から診ることの論理的な説明が医療では求められるからです。

 

この核を担っていたのが、福井先生が提唱された力学的平衡理論でした。膝関節の矢状面にけるメカニカルストレスの機序を、力学的に説明できるようになったことで、臨床の選択肢が一気に広がったのです。私も何回もその文献を読み込んで、実践した記憶があります。

これによって、体幹という考え方が理学療法に定着し、四肢体幹が連鎖として説明できるようになったのです。つまり全身と部分が理論的に説明できる基礎がここでできたのです。

 

整形外科理学療法の理論と技術
Posted with Amakuri at 2018.2.13
山嵜 勉
メジカルビュー社

 

運動連鎖アプローチ®が生まれたきっかけはなんですか?

山本先生 私自身若かりし頃、スポーツ現場や民間療法、カイロプラクティックやオステオパシーの業界など、あらゆるジャンルを勉強した背景には、「身体に関わる全てのことを、全ての部位を診れるようになること」を信条としていたからです。

 

それは、運動器だけではなく、自律神経系、脈管系、運動器・神経系など、人の身体の機能をみる以上、局所の専門家ではなく、理学療法士として「全身を診れる専門家」にならなければならない、という強い思いからです。

 

 スポーツ現場にてあらゆる治療家やトレーナーと接する機会を得ることで、「理学療法士」という肩書きだけでは通用しないということです。またストレッチやテーピングなどは、学生トレーナーでも十分できるわけで、痛みの軽減においても鍼灸師や整体などが得意としています。

 

その中で「理学療法士の専門性とは何か?」ということを、悶々と考えさせられる場面に直面し続けたことが一番のきっかけです。あらゆる職種の人たちの考え方に触れる中で、我々でなければできない領域が「運動連鎖アプローチ」だったのです。

 

それでも最初は「理学療法how to method研究会」にしようと思っていたわけですが、how toを教えてhow toだけをやっちゃうと、翌日からそれだけを実践してしまいます。それでは「理学療法の専門性って何だろう」という話になってきます。

 

スポーツ現場に携わるなかで、「リハビリテーションの理念を体現する専門職である」という理念に行き着き、これがターニングポイントでした。リハビリテーションの理念こそが、我々の帰結する原点であると。

 

よって、how toではく、「理念を体現化する」ということが大事だと思っています。そこで一度、「運動学アプローチ研究会」ということも考えましたが、当時運動学はあくまでも基礎学問で、治療学ではありませんでした。動作分析になると機械には勝てませんし、「動作分析が理学療法士の専門性だ」などとは、世間一般的には思われていないわけです。ですから、運動連鎖という言葉を使って、運動学を治療に昇華させることを考えました。後々学会に発展させていくことも考えていましたので、「運動連鎖アプローチ研究会」という名前にしました。

 

このネーミングが「予想以上に注目された」という感じでした。ただし、私自身に注目が集まったわけではなく、「運動連鎖」という言葉に注目が集まったのです。それは理学療法士の専門性に近似するものがあったのでしょうね。それはなぜかといえば、運動学が基礎にあるからだと思うんです。

 

 

—理学療法における専門性とはなんだと思いますか?

山本先生 リハビリテーションの語源には、自立や能動性という意味があります。

「再び:Re」、「自らの力で立ち上がる」ということです。包括的には全人間的復権なわけですが、その理念を体現化することが、理学療法士の専門性だと私は思っています。

 

リハビリテーションにおける解釈において、様々な考え方がありますが、時代によって微妙な意味合いが変わってきます。つまり世の中の認識と私たち専門家とでは、認識にずれがでてしまうことがあるのです。現在は「リハビリ」という言葉はあらゆる場面で使われていて、一般的に「リハビリをする」など、日常会話のなかで普通に使われています。

 

メディアでも「リハビリテーションをしましょう」「理学療法をしましょう」とは誰も言いません。つまり「リハビリ」という言葉が、すでに一人歩きしているのです。

 

 私自身、テクニカルな手技は、外の世界でかなり習得していましたので、「何か理学療法の世界で役に立ちたいな」と思ったときに、理学療法で使われる徒手療法が、技術の習得という観点からみると非常にはもったいないなという印象でした。理論的な説明も大切なのですが、あまりにも頭で理解して考えるというモードが強すぎることで、技術の習得に必要な感性そのものが鈍化してしまいます。

 

理論的な理解には、左脳を使いますが、テクニカルな側面は感性を伴うため、右脳にスイッチを変える必要があります。理学療法士は、技術と理論のどちらも伸ばす必要がありますが、「考え方が理解できていれば、治療は何をやってもいい」という考え方は、決して推奨されるものではありません。

 

方法論においても適応があるわけですので、あらゆる治療方法に精通し、カテゴライズできる能力を身につけるべきなのです。そうでなければ、治療者目線で治療を押し付けることになってしまうからです。

 

よって、原理原則、臨床推論、臨床思考過程などの力をつけることで、いわゆる形勢判断ができるようになり、その後の治療におけるさじ加減ができるようになってくるのです。

 

 

私たちの資格は法律上、「運動療法を使って…」という言葉がありますが、それでも運動療法と運動学が結びついていない?

山本先生 理学療法は、運動学に基づいて運動療法を考えるべきなのですが、臨床にて動きをほとんど見ないという理学療法士も沢山います。「動きをみる」環境や文化が根付いていないと、ベッドに寝てマッサージをするという選択肢になりがちです。即時的な満足度や患者自身のニーズなどもあり、つい対症療法としての「揉む」という行為に頼りがちなのです。

 

以前は新人の理学療法士が、クリニックで働くということは、なかったのですが、最近ではいきなりクリニックに就職することもあります。まだ知識も技術も未熟であれば、満足度を上げるために、動きをみるより、徒手系のテクニックを学んだほうが手っ取り早い。そうすると学校で習ったことが、「全然役に立ちません」となるのです。

 

 疾患別理学療法には期限があり、「予防」「自立支援」まで考えるとなれば、能動的な方法が自ずと必要となってきます。「能動的に自らの力で・・・」という理念を体現するために、理学療法士は何をするべきか?何をしなければならないのか?自ずと導きだされてきます。

 運動学を治療学として昇華させることが、我々の使命であり、「運動学をベースとした治療こそが我々が担うべき役割である」という考え方を浸透させなければなりません。

 

担うべき役割が明確になると、スポーツ現場などで他職種連携をするにあたり、どのようなスタンスにて関わり、そして任せるべきかがわかってきます。マッサージはマッサージ師に敵いませんし、痛みやコリは鍼の方が即時的です。それは地域に出ても同じことであり、社会的資源を有効に活用していくための、キーパーソンになれるかどうか?その資質が問われているのです。

続くー。

 

【目次】

第一回:臨床経験10年目にして、理学療法士が天職と思えるようになった

第二回:自らのキャリアップーダブルライセンス・大学院

第三回:運動連鎖のはじまり

最終回:理学療法“愛”

 

山本先生オススメ書籍

 

マインド・タイム 脳と意識の時間
Posted with Amakuri
ベンジャミン・リベット
岩波書店
売上げランキング: 120488

 

山本尚司先生のプロフィール

昭和43年(1968年) 兵庫県出身 B型 水瓶座

平成2年   都立医療技術短大理学療法学科卒業。慈恵医大病院リハビリテーション科

平成4年   相模原協同病院理学療法室

      スポーツ現場でトレーナー活動(バレーボール・陸上競技・体操競技)

平成5年〜   カイロプラクティック・整体、全身咬合について研鑽 開始

平成9年   鍼灸・按摩・マッサージ指圧師 免許

平成11年 永生病院リハビリテーション科 

平成14年 保健衛生学士 

平成15年 運動連鎖アプローチ研究会 

平成19年 都立大学理学研究科身体運動科学専攻 理学修士 

平成19年 運動連鎖アプローチ研究所設立。健康運動指導士 

平成21年~22年 GYROTONIC®, GYROKINESIS®認定トレーナー

         セロトニントレーナー認定第1号

平成23年 〜face to face(FTF)〜東日本大震災リハビリネットワーク 

      東日本大震災 石巻市・南相馬市にてボランティア活動    

平成24年 一般社団法人 フィジオ運動連鎖アプローチ協会 設立

        

(主な役職・履歴)

 平成24年〜現在    一般社団法人フィジオ運動連鎖アプローチ協会 代表

平成24年〜29年 公益社団法人 日本理学療法士協会 理事

平成25年〜29年 NPO法人 日本障害者協議会(JD) 理事 

平成26年〜現在 オリンピック強化スタッフ(体操競技) 

 

(主な活動)

 ⑴臨床:

・開 業:運動連鎖アプローチ治療院(完全予約制・自費)

・非常勤:ふれあい町田ホスピタルスポーツクリニック

 三橋整形外科リハビリテーションクリニック

 ⑵教 育:運動連鎖アプローチ®研修会開催

・運動連鎖道場®:全6回半年コース

 ⑶研究:仙腸関節不安定症について進行中

(所属学会・研究会)

  • 理学療法学会(運動器・神経・スポーツ・予防・徒手)
  • 臨床スポーツ医学会
  • 全身咬合学会
  • 認知神経リハビリテーション学会
  • カイロプラクティック徒手医学会

 

一般社団法人 フィジオ運動連鎖アプローチ協会 事務局

〒252-0304

神奈川県相模原市南区旭町8−14 コーポ奈良1-B

Tel:042-851-6691 fax:042-851-6695

mail:undourensa@gmail.com                

HP:http://physioundourensa.com

2018運動連鎖道場®in福岡

「運動連鎖アプローチ®全6回コース」

【募集要項】

運動連鎖道場®は2008年にスタートし、全国で50回の開催を数えます。運動連鎖道場®では、“個別性を見極められる力”を身につけることを目指していきます。解決の糸口を見つけるための、“手と眼”こそが、必要不可欠なスキルなのです。運動連鎖道場では身体機能の原理原則、局所と全体、姿勢制御における戦略を、段階的に学べるようにカリキュラムを組んでいます。

 

また、同じ運動連鎖道場で学んだインストラクターによる、サポート体制が充実しており、その日の疑問を、その日のうちに解決していきます。半年間、運動連鎖アプローチ®を学ぶことで、これからの長い臨床・運動指導における自信を、一緒に作り上げていきましょう。

 

《運動連鎖道場にて得られること》

・ 運動連鎖を解剖学・運動学の基礎から学べます。

・ 局所と全身の運動連鎖が理解できるようになります。

・ 個別性のあるプログラムが立案できるようになります。

・ 学生や後輩指導に自信が持てるようになります。

【講 師】山本尚司(フィジオ運動連鎖アプローチ協会 代表理事)

 PKAAインストラクターが全面サポート!

【日 程】 平成30年   

1)6月3日(日)「足・膝の運動連鎖」

2)7月29日(日)「股・骨盤の運動連鎖」

3)8月26日(日)「脊柱体幹の運動連鎖」

4)9月30日(日)「肩甲帯〜上肢の運動連鎖」    

5)10月28日(日)「脊椎〜頸部の運動連鎖」

6)11月25日(日)「頭蓋・顎関節・咬合の運動連鎖」

※第1〜6回全参加にて、卒業認定となります。

【時 間】 9:00 ~16:00  (8:30受付)

 

7)12月8日(土)9日(日)「運動連鎖インソール(R)」

  8日(土)13時〜18時  

      9日(日)9:00〜16:00

【募集人数】 30

【会 場】

公益社団法人 福岡医療団 

たたらリハビリテーション病院 2階リハセンター

福岡県福岡市東区八田1丁目4番66号

 

【参加費】

全7回参加 135,000円(税込)

第1〜6回参加 108,000円(税込)

第7回のみ 道場生・他道場卒業生 27,000円(税込)

      一般 32,400円(税込) 

※料金支払い方法は、お申し込み後、追ってお知らせします。

お支払い方法(現金一括振込・カード VISA/MASTER/AmericanExpress払い)

※基本的にスポット参加はございませんので予めご了承ください。
※お休みの回のある方は、次期道場及び他地方道場にて振替え可能です。

※道場卒業生は、卒業生価格が適用されますので、別途お問い合わせ下さい。

 

【申し込み先】 

たたらリハビリテーション病院 山崎 和調

 w.yamazaki.22@gmail.com

①氏名(ふりがな)②経験年数③職種名④所属事業所⑤電話番号⑥メールアドレス

⑦支払い方法を明記してお申し込みください。

件名に『2018運動連鎖道場®in福岡申込』と記載してください。

 

2018運動連鎖道場®in本部コース

《第24期生募集要項》

「運動連鎖アプローチ®全6回コース」

 運動連鎖道場®は2008年にスタートし、全国で51回目の開催を数えます。運動連鎖道場®では、“個別性を見極められる力”を身につけることを目指していきます。解決の糸口を見つけるための、“手と眼”こそが、必要不可欠なスキルとなります。運動連鎖道場では身体機能の原理原則、局所と全体、姿勢制御における戦略を、段階的に学べるようにカリキュラムを組んでいます。また、同じ運動連鎖道場で学んだインストラクターによる、サポート体制が充実しており、その日の疑問を、その日のうちに解決していきます。半年間、運動連鎖アプローチ®を学ぶことで、これからの長い臨床・運動指導における自信を、一緒に作り上げていきましょう。

 

《運動連鎖道場にて得られること》

・ 運動連鎖を解剖学・運動学の基礎から学んでいきます。

・ 局所と全身の運動連鎖が理解できるようになります。

・ 個別性のあるプログラムが立案できるようになります。

・ 学生や後輩指導に自信が持てるようになります。

講師:山本尚司(フィジオ運動連鎖アプローチ協会 代表理事

インストラクター:PKAAインストラクターが全面サポート!

日 程:平成30 土曜日 PKAA本部コース 

Vol.1  7月21日(土)「足部(股関節)の運動連鎖アプローチ」
Vol.2  8月18日(土)「膝関節(股関節)の運動連鎖アプローチ」
Vol.3  9月15日(土)「骨盤(仙腸関節)の運動連鎖アプローチ」
Vol.4  10月20日(土)「体幹(脊柱)の運動連鎖アプローチ」    
Vol.5  11月17日(土)「肩(頸部)の運動連鎖アプローチ」
Vol.6  12月15日(土)「顎関節(頭蓋)の運動連鎖アプローチ」

   

【会 場】 「ユニコムプラザさがみはら」 「海老名文化会館」

          各回の会場については、おってご連絡致します。

【時 間】受付9:30~ 道場 10:00~17:00

【募集人数】20名
【参加費】一般 108,000円(税込) 

  • 料金支払い方法は、お申し込み後、追ってお知らせします。
  • VISA・MASTER・AmericanExpressのみ)

※基本的にスポット参加はございませんので予めご了承ください。
※お休みの回のある方は、次期道場及び他地方道場にて振替え可能です。

  ※道場卒業生は、卒業生価格が適用されますので、別途お問い合わせ下さい。

 

【申し込み先】 

PKAA事務局 担当 薮下 享江(やぶした ゆきえ)

undourensaapproach@gmail.com
氏名(ふりがな)・経験年数・職業・所属・支払い方法 を明記してお申し込みください。

件名に『24期運動連鎖道場申込』としてください。


・携帯やフリーアドレスの場合、メールがブロックされる場合や迷惑メールになってしまう場合が

 ありますので、必ずセキュリティーを確認した上でお申込みください。
・申込みから48時間経っても、何も連絡が無い場合は、メールが不着の場合も考えられます。

 しばらく事務局より連絡が無い場合は、再度申込者よりコンタクトをお願いします。

第三回:運動連鎖のはじまり【フィジオ運動連鎖アプローチ協会代表|理学療法士 山本尚司先生】

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