高齢者向けのエンターテイナーという生き方【作業療法士 石田竜生さん】

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「介護エンターテイナー」として活躍する作業療法士の石田竜生さん。自身のブログやYouTubeで高齢者向けのレクリエ―ションや体操等を発信し、YouTubeの登録者は1.3万人を超える。高齢者向けのお笑い芸人としての働き方や、レクリエーションのコツについて伺った。

お笑い芸人になろうとNSCの門を叩く

 

ー 石田さんは作業療法士資格取得後、NSC(よしもと興行が運営する新人タレント養成所)に入学したとお聞きしました。まずNSCに入ろうと思った理由を教えてください。

 

石田:もともとずっとお笑い芸人になりたいと夢見ていたのですが、厳しい世界ですし、悩みながらもズルズルと作業療法士になっていました。ただ、このまま後悔するのは嫌だったので、1年間老健で働きながらお金を貯めて、上阪しNSCに入りました。資格はあるので、失敗してもなんとでもなるだろうというのが正直なところです。

 

ー その時は今みたいに介護やリハビリテーションと絡めた活動をしようというよりは、単純にお笑い芸人になりかったということですよね?

 

石田:そうですね。最初は全く、今のような活動は思っていませんでした。昔からお楽しみ会とかみんなの前で何かをやったり笑わせるのが好きで。NSCを出てから、1年間はパートで作業療法士をやりながら、アマチュアのお笑い芸人として活動していました。

 

ただ、作業療法士だとパートでも時給がいいから、給料はサラリーマンの初任給ぐらい稼げてしまっていたんですよ。NSCの同期は貧乏生活をしながら、必死でお笑いを頑張っているのに、自分は中途半端になってしまっていて。気づいたら、お笑いの大会があったらちょこちょこ出るくらいの生活で、このままじゃやばいなとは感じていました。

 

今みたいな活動を始めたのは、今から4,5年前ですかね。30歳になった節目の時にこれからどうしていくか真剣に悩んだんですよ。お笑い芸人として成功したいという気持ちは、もちろんありました。ちょうどその頃に、友人が働いている高齢者向け施設から、ボランティアで40分ぐらいレクリエーションや体操をやってくれないかと頼まれて。

 

せっかくなら楽しい時間を提供して笑ってもらいたいし、施設の誰かがやるのではなく、自分の色を出したいと思って色々と工夫してやったら、いい反応が返ってきたんですよ。

 

その時に、よく一般的にイメージされる舞台で若い人の前でやるようなお笑い芸人ではなく、高齢者の方に笑いを提供するのもありなのかなと思いました。

 

ー お笑い芸人としてうまくいかなかったのは、どういったとこに原因があったと考えますか?

 

石田:目標が曖昧すぎたというのはありますね。集中してなさすぎたというか。今は目指している自分があって、そこに向かって努力していますが、その時は曖昧だったと思います。お笑い芸人って確かに才能も大事なんですけど、隙間を見つけることができたり、努力次第で売れることも可能なんですよ。

 

例えば、NSCの同期で今売れている芸人でいうと、尼神インターとかバンビーノがいるんですけど。すごい隙間を狙っているというか。今までなかった視点を持ってやっているんですよ。彼らはとにかくめちゃくちゃ研究していますよ。芸人というのは、漫才やショートコントをやっておけば芸人だと自分で思ってしまっていて、研究が全然足りていなかったなと思います。

 

石田さんのYoutubeチャンネルは再生回数1万回を超える動画も多い

 

一発屋芸人でも意識している〇〇力

 

ー 今は、理学療法士・作業療法士も介護予防教室に呼ばれたり、複数人に対してコミュニケーションを取る機会が増えてきていると思います。石田さんは普段どんなことを考えながら高齢者の前に立っているのでしょうか?

 

石田:まず、笑わせようと思わないようにしています。全員が楽しめるものというのはこの世に存在しないと思っていて、男女で笑いのツボは違うし、高齢者と一口にいっても65歳から90歳以上の方と年齢的にもかなりの幅があります。テレビで人気の番組でも、苦手な人はいるわけで。

 

だから、無理に笑わせようとはしないで、いつか楽しいに変わればいいなというスタンスでやっています。表情があまり変わっていなくても、ここで足を動かすことによって、3カ月後の歩く喜びに変わるはずだとか。

 

あとは専門職という時点で、僕たちのスキルや知識に触れるだけで喜んでもらえるというのはすごく感じています。そこまで高いハードルを求めていないんですよ。僕らにとっては当たり前のことでも、家族や当事者にとっては当たり前じゃない。まずはそこを探して、自分たちの経験を提供してあげると必ず喜んでもらえると思います。

 

ー NSCで学んだことの中で、リハビリ職も知っておくと勉強になることってありますか?

 

石田:壁を取り払うことの重要性は感じますね。「どうせ楽しんでもらえないだろう」と壁を作っているのは自分自身です。

 

介護エンターテイナーとして全国周っていますけど、壁を作っている高齢者は1人もいないですよ。セラピストが自分たちで勝手に緊張している部分は大きいと思います。「うまくいかないかもしれない」という不安は必ず相手にも伝わってしまうので、それでは相手は笑ってくれない。また、自分本位でやっても笑ってもらえないので、必ずどこかに相手目線を入れるというのが大事だと思います。

 

あとは、体操とかはあまり関係ないのですが、NSCでは自己プロデュース力に関して強く言われてきました。芸人さんというのは面白くなければ一切給料も入らないし、芸を磨いて、目立たないといけない。

 

キャラを考えたり得意なことを伸ばすことだったり、みんな自己プロデュースを徹底的に考えています。給料が低くたって、不満を言う人なんて誰もいません。なぜなら、自己責任だから。実力勝負の世界です。でも、いつか成功するために貧乏生活をしながら、バイトで生活を繋いで、頑張っている。

 

リハビリ業界にいると、給料が低いと嘆いている人をよく見ます。でも、求人票に書いてある給料に納得して就職したのだから、それが気に入らないで不満を言うぐらいなら、自己プロデュースをして、それをSNSなどで発信する。そういった努力が収入アップに繋がっていくと思うのですが、その部分が欠けているように感じます。

 

【目次】

第一回:高齢者向けのエンターテイナーという生き方

第二回:全国介護エンターテイメント化計画

 

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