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「なぜ今目標設定?」ADOC開発者が語る【目標設定】の流儀

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良い目標とは?

 

ー 友利先生は作業療法で目標設定のためのアプリであるADOC2011年にリリースされていますが、最近になってようやく「目標設定」というワードが注目されてきた感じがします。

 

友利 目標設定は自分でもマニアな領域だと思っていたのでびっくりしています(笑)。EBM、クライエント中心といったキーワードは昔からあったかと思いますが、それを実際に日々の臨床に取り入れてみた際に「意外と目標設定って重要じゃない?」と、僕も含めて皆さんが改めて実感し始めたのかもしれませんね。

 

クライアント中心は理想的なリハビリテーションですが、普段の臨床では,やりたいことは無いとか、機能訓練だけで良い,というクライエントも沢山いらっしゃいます。

 

それで漫然と機能訓練を継続するセラピストも多いかと思いますが、その現状に違和感を感じて「どうにかしたい!」と思うセラピストもいらっしゃって、そのような方が目標設定に興味を持ってくださっているのかなと思っています。

 

ー 目標設定の立て方について、養成校教育の中でほぼ学ぶ機会がなかったのですが、どのような目標が良い目標だと言えるのでしょうか?

 

友利 私はSMARTを意識して5W1Hに沿って設定することをオススメしています。SMARTというのは、Specific(具体的な)、Measurable(測定可能な)、Agree-upon(同意し、達成可能な)、Relevant(関連性)、Time-based(期限あり)の頭文字をとったもので、ビジネスの世界でもよく使われているものです。

 

それに加えて,Who(誰がCLか?)、Why(何のために?)、How(どのようにするのか?)、Where(どこで?)、WHAT(介入後、何の作業ができる?)、When(いつ目標を達成するか)、の要素が含まれていることで、実際に今の行動に活かせる目標になります。

 

例えば、「立位バランスの安定性向上」という目標は、何のために行うのか、いつまでにどれくらいになれば安定したと言えるのかも分かりませんよね。

 

これが「Aさんは、昔からの友人と交流するために ,1ヶ月後に近所の生け花教室に歩いて参加できるようになる」といった,5W1Hの情報が入り,なおかつSMARTであれば,”良い目標”と言っていいのではないでしょうか。

 

あと、目標設定は「現時点のクライエントの行動を変えるために行う」という認識も必要です。目標設定に関する研究は、心理学をベースに行われてきました。代表的なものだとLockeらが提唱している目標設定理論というものがあります。

 

この理論では、先に述べたような具体的で、なおかつ難易度の高い目標設定は、行為者の効果的な努力や粘り強さにつながるとされています。彼らの研究では、「頑張れ!(Do your best!)」の指示よりも、パフォーマンスの促進につながるということが報告されています。

 

リハビリテーション分野でも、この目標設定理論を応用した筋力訓練や認知課題訓練などで効果が示されており、そのメカニズムとしては目標設定自体が対象者のモチベーションや自己効力感の向上が関与していると考えられています。

 

リハビリテーションの成果自体を高めるための手段としても,目標設定を上手に運用することが重要です。

 

 

10年おでん

 

ー 現状どの程度、実際にクライアント中心で目標設定が行われているのでしょうか。

 

友利 現状では、医療者が「十分な説明を行った」「意思決定を一緒に行った」と思っていてもクライエントは目標を理解していなかったり、全く関わっていなかったりすることが多く、ズレが生じているのが多いのが現状です。

 

私達が昨年実施した回復期リハビリテーション病棟を対象にした調査では、クライエントと作業療法士の目標が一致していたのはわずか17%で、約40%は全く別の目標を挙げていました。

 

先生が開発された目標設定のためのアプリADOCは、それこそクライアント中心にセラピストと共同で目標を決められるので便利ですよね。私も使わせていただいています。

 

友利 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、ADOCはイラストを使ってクライエントの意見を最大限に引き出しつつ、でもセラピストも専門家として意見し、双方で目標の選択肢を作り、一緒に選択するシェアード·ディシジョン·メーキングを意思決定のモデルとしているツールです.

 

ADOCを開発した際、親友の上江洲聖くんが臨床でADOCを使用し、「10年おでん」という物語を作ってくれました。

 

それまで10年間歩行訓練ばかり行っていたホーム入所者がADOCのイラストを眺めながら「おでんが作りたい」と話してくれました。おでん屋の女将だったことは皆知っていましたが、今でもその気持ちを持ち続けているとは誰も知りませんでした。ケアマネや管理栄養士に相談したところ、施設内でいつの間にか「おでんプロジェクト」が立ち上がり,「おでん屋」が開かれました。10年間の想いが染み込んだおでんを振舞う彼女の姿は女将そのものでした。「あの頃に戻ったみたい」と娘さん、女将も「次は沖縄そばが作りたい」と意欲的です。また忙しくなりそうですが()、おかげさまで私にとっても充実した毎日です。

引用:http://adocproject.com/about-adoc/voice

 

このように、良い目標は本人やチームの行動を変えていきます。さっき述べた通り目標は手段になります。

   

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