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【新進気鋭の研究者】サルとラットとヒトで痛みを解き明かす|長坂和明

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新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所の長坂和明さん(29)は、理学療法士の若手研究者の中で一目を置かれている存在だ。

 

2017年に発表したラットを用いた脳の光学系イメージング研究は、インパクトファクターが7点の専門誌Brain Stimulationに掲載されており、これまで発表した4本の論文のIFの合算は20である。

 

基礎分野の研究者としてのこれまでのキャリアとこれからの展望を伺った。

 

英語偏差値30からのスタート

 

ー 長坂さんは健康科学大学理学療法学科を卒業後、筑波大学大学院、産業技術総合研究所(以下、産総研)特別研究員、そして現職と研究者としての歩みを進めていますが、初めから「研究職で食べていこう」と思っていたんですか?

 

長坂 いやそんなことないですよ。(笑)大学からストレートで大学院に進んだのは、これだけ毎年1万人以上、理学療法士のライセンス習得者が増えていく中に埋もれるのは嫌だなと思って進んだ感じです。なにか自分の売りとなるものが欲しかったんです。

 

ただ、研究分野を決める際には、基礎に進むか臨床に進むか、かなり迷いました。

 

動物研究の分野に進んでしまうと、大学4年間生物系の授業を受けてきた人には研究能力としては負けるだろうと思っていましたし、仮に進んだとして、その後の就職先がなかった時に、理学療法の世界には戻れないのでは?と思っていました。今思うとかなりクヨクヨ悩んでおりました。

 

当時、母校に在籍していた金承革先生に相談して、「まず患者を理解するためには、細胞レベルで何が起きているか分かっていなければいけない。病態でも治療効果でもそのメカニズムを解き明かすことが重要。」とアドバイスをいただき、村松憲先生からも「大学院は好きなことをやったほうがいい。ただ大学院に進んで、のんびり過ごすよりも好きなことをみっちりやった方がいい」と助言を受けました。

 

それから、村松先生の大学時代の同級生で、現在も産総研に所属している村田弓さんを紹介してもらい、筑波大学(産総研の連携大学院)に進学したという流れになります。

 

ー 確かに、あの2人の先生のインタビューは、キャラが立っていて強烈だったことが印象的でした。(笑)

 

長坂 僕の人生で大学時代にあの2人の先生と知り合えたのは幸運でした。

 

それから研究者として生きていこうと考えたのは、博士過程で論文が世に出た時ぐらいからです。自信があったわけではなかったのですが、必死に食らいついていけば何とかなるかもしれないと思い始めました。

 

「研究者=英語ができる人」みたいなイメージあるじゃないですか。僕は、高校生の時は、英語の評定が”2”で、全国模試では偏差値30をたたき出したことがあるただの落ちこぼれだったんですよ。(笑)

 

大学でも当然英語なんて勉強してこなかったし、高校の時の英語も点数を取るために勉強してきただけで、自分にはそれだけ英語というのが高いハードルでした。

 

ただ、脳のことは知りたいと思っていたので、必然的に英語論文を読まないといけない。脳を知るためは英語を解読しないといけなかったんです。英語が勉強の対象から、脳を知るための手段の一つだと感じてから,自然と英語の能力がついていったように感じます。

 

さらに、博士課程で初めて書いた英論文がパブリッシュされて、その頃から英語が自分の中で壁だと感じなくなりました。それで研究者としてもいけるんじゃないかと思ったっていう、そんな感じですね。(笑)

 

ー 英語の壁ってかなり多くの人が感じてると思うのですが、英論文を読み始めた頃ってどんな感じだったんですか。

 

長坂 一本の論文を完全に理解しようと思ったら、一ヶ月くらいはかかっていたと思います。今でも、二週間はかかりますよ。

 

論文はある程度、著者の意図を汲み取らないといけないですし、その内容を完全に理解するっていうのはその人じゃない限りは難しいものだとも言われています。

 

英語の勉強を始めた時は、毎日4時間くらい、それこそ英単語を覚えることから必死にやりました。大学院入試の勉強で、金先生に書いた英文を持っていった時には、「主語はどれ?これは動詞がない。」ってよくツッコまれていました。(笑)

 

学振のメリット・デメリット

 

ー 長坂さんは日本学術振興会特別研究員(DC2,PD)(以下、学振)にも選ばれていますが、これはどんなものなのか教えていただけますか?

 

長坂 学振は、選考に通ると、2-3年の期間で月に20万の奨励金、更に毎年150万円以内の研究費が支給されるようになり、経済的な支援が受けられるものです。

 

また、理学療法分野だけではなく、日本中の大学院生が応募して30%程度の人しか採用されないものなので、一般的な研究者の卵として認められたということになると思います。

 

ただデメリットもあって、研究専念義務が発生し、基本的には、他から収入があってはいけないという決まりがあります。

 

特別研究員の研究課題の研究遂行に支障が生じるおそれがあるため、採用期間中、報酬を受給 することは、原則禁止しています。

但し、次の①~⑤の事項を全て満たす場合に限り、報酬の受給を 例外的に認めています。

 ①特別研究員の研究課題の研究遂行に支障が生じないこと

 ②特別研究員の研究課題の研究遂行に資する職であること

 ③将来大学等の教員・研究者等になるためのトレーニングの機会となる職 ※1であること 

④常勤職及びそれに準ずる職 ※1 ではないこと

 ⑤従事する前に受入研究者に「特別研究員報酬受給届<様式 16>※2 」を届け出、受入研究者が①~ ④に該当すると認めていること。

 

つまり、理学療法士としてフルタイムで働きながら、学振になるということはできないということです。

 

今は条件が緩和され、臨床研究のために報酬を得ることが認められるケースもあるようですが、それでも全て届け出が通るわけではないと思いますので、将来的なアウトプットを考えたときにメリットばかりではないということも知っておかなければいけません。

 

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【新進気鋭の研究者】サルとラットとヒトで痛みを解き明かす|長坂和明

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