プロ野球選手のリハビリに携わって気づいたこと【横浜DeNAベイスターズ|岡田 匡史】

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第342回のインタビューは、横浜DeNAベイスターズでトレーナーをしている理学療法士の岡田匡史先生。入団されるまでの経緯や病院との違いについて伺いました。

入団までの経緯は

 

ー 岡田さんは、新卒から松戸整形外科病院で働きながら、小学生を対象にした野球肘検診や野球の障害予防に関する研究をしてきたそうですが、就職先を決めるときから、将来はプロスポーツ選手に携わりたいと思って選んだのですか?

 

岡田 いや、全然考えてなかったですね。松戸整形外科病院を選んだ理由は実習先の整形外科病院のバイザーの先生の影響です。研究を始めたのも先輩方に背中を押されて始めたという感じです。

 

松戸整形外科病院には、亀山顕太郎さん(スポ.ラボ代表理事)をはじめ、熱心な先輩方も多く所属していたので、環境に恵まれたと思っています。

 

ー 松戸整形外科病院から横浜DeNAベイスターズへ移ったのは、どういった経緯だったのですか?

 

岡田 亀山さんから入団試験の誘いを受けました。ベイスターズのトレーナーの一人が講習会を通じて、亀山さんと面識があり「今度、理学療法士が一人辞めるから、誰かいい人いないか」と連絡があったそうです。

 

実は、亀山さんがはじめに誘ったのは、私の1個上の先輩だったそうですが、その先輩が断ったので、私のところに話がきました。それで試験を受けて合格し、2018年の2月1日からこちらで働くことになりました。

 

つまり、今、私がベイスターズで働けているのは、単純に運が良かったからなんです。そもそも、亀山さんからお話をいただかなかったらそんな試験があることも知らなかったですから(笑)

 

余計なことをしていたのかもしれない

 

ー プロ野球選手と関わるようになって、率直にどんな印象でしたか?

 

岡田 やっぱり戸惑いは大きかったですよ。正直に言うと、入団して最初の年は、毎日しんどかったです。

 

8年間、それなりに臨床の経験は積んできましたし、アマチュアレベルの野球少年たちは診ていたので、「ある程度はやれるだろう」と自信はありました。

 

ただ、いざベイスターズに入って、トップアスリートと関わってみると、本当に何もかもが違いすぎて、自分の実力不足を毎日痛感していました。

 

ー 整形外科での臨床と、どこに特に一番違いを感じましたか?

 

岡田 病院で患者さんが言う「良くなっています」は、本音じゃなかったことが多かったんだと思います。

 

DeNAでは、選手と現場で毎日一緒にいることになるので、直接関わっている以外の時間でも、状態が確認できてしまいます。病院だと普通は、1週間に1回ぐらいしか関わらないので、自分が良くしているのか、自然治癒で良くなっているのかわからないことも多いと思います。ですが、ここでは理学療法の成果がハッキリ分かりますので、実力不足だということを自覚せざるを得ません。

 

病院でやっていたことを振り返ると、けっこう余計なことをしていたということも気づきました。

 

ー 余計なこととは?

 

岡田 例えば、病院では徒手療法で良くなっていた手応えがあったので、ベイスターズでもしばらく使っていたのですが、確かにその場では良くなっていても、次の日には元に戻ってしまったり、時間をかけた分の効果はあまり感じられませんでした。

 

それよりもトレーニングをしっかりした方が、長期的にみたときに良くなっていく感じがあります。

 

ただ、トレーニングと一口に言っても、すごく幅が広いし深さもあって、これまでトレーニングに関しては全く勉強してこなかったので、1からのスタートでした。

 

ー トレーニングというと、理学療法士はどこまで担当するんですか?当然、もっと専門的な練習メニューを考えたりするのは、他に担当がいると思うのですが。

 

岡田 他の選手と混ざって練習できるレベルになるまでは私の担当です。怪我している選手の人数によって違いますが、一人に対して1時間半ぐらい割くことができて、メニューはそのうち30分くらいリハビリメニュー、あとは、バッティングやピッチング練習をして、最後にもう一回身体の状態チェックという感じです。

 

復帰後まで考えたトレーニング

 

ー やっぱり、復帰した後のパフォーマンスまで考えてリハビリするんですか?

 

岡田 そこまで考えられるようになったのは最近で、1,2年目はとにかく痛みがない状態で練習できる状態にもっていくということで精一杯でした。

 

怪我が良くなって、通常の練習に戻った時に、他の選手と見劣りするってことがあって、「復帰したきたけど、そんなに大したことないな」って思われるのがすごく悔しかったですね。

 

今は復帰したときにちゃんと他の選手と見劣りしないぐらいというか、むしろそれ以上のパフォーマンスが出せるようにしていきたいと思っています。

 

例えば、ピッチャーで肩に痛みがあって投げられない選手に対して、1,2年目の頃は肩を良くするのに精一杯でしたが、今は全身を評価するようにしています。投げる動作は、肩周囲の問題だけではなく、下肢や体幹にも問題があることも多いのでケアやトレーニングしてあげることで、再発を予防することができます。

 

投げられるようになるまでに、ベースの身体づくりをしてあげて、復帰後に前よりも良いパフォーマンスが出せるように考えてサポートしています。


 

ー 松戸整形外科病院は、入谷式足底板も熱心にやっていると思うのですが、選手に対してインソールを削ったりするんですか?

 

岡田 病院のときは少しだけ削っていましたが、今は削っていないですね。選手の中には、外部の人に依頼している選手もいます。自分はそこまでインソールで結果を出す自信がないので選手のことを考えたら結果の出せる人に任せたほうがいいと思っています。

 

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