今回は中山書店様より献本をいただきましたので、書評させていただきます。本書は、「排泄リハビリテーション理論と臨床 改訂第2版」です。なんと558ページで重さは2kgあります。排泄に関する書籍の中でも、本書は疫学から治療まで広くそして深く学べる良書であるのは執筆者一覧を見てもよく分かります。
泌尿器科医の先生が中心となって書かれていますので、聞き慣れない医療用語も多いですが、医師や看護師と排泄に関するコミュニケーションをとる必要があるセラピストにはオススメな一冊です。
この本を読んで感じたことは、“リハビリテーションの対象者は何かしら排泄の問題を抱えている可能性があり、適切に評価をし、治療・ケアをしていく必要がある”ことです。
排泄障害をきたす疾患は意外と多い
上図を見ると、皆さんが臨床で対応する疾患が多く含まれているのではないでしょうか。
例えば、中枢神経疾患者を担当する時、どうしても麻痺の程度などに着目しがちですよね。確かに患者・利用者は「麻痺を治したい」と訴えるかもしれませんが、疾患が原因で切迫性尿失禁のように突然の強い尿意で尿失禁してしまう可能性があります。高齢者の尿失禁は活動制限に加えて、ご本人の心理面にも影響を与えるため、患者・利用者と密にコミュニケーションをとる機会があるセラピストが適切に評価しケアをすることで、その人らしさを取り戻せます。
まずは信頼関係が築けている方に、「今日は朝起きてから何回トイレに行きましたか?」、「夜はトイレで起きることはありませんか?」「くしゃみをした時に少し尿が漏れることってないですか?」と排泄に関するコミュニケーションを増やしていくことから始めてみてもいいかもしれません。
排泄は日常生活に深く関わる
排泄は、「尿・便意を感じる→トイレや便器を認識する→トイレまで移動する→下着を下ろす→便器に上手に座る→排尿・排便をする→後始末をする→衣服をつける→部屋に戻る」という一連の動作ができて成立します。上図のようにADLの評価項目であるFIMやBIの中にも排泄に関連する項目がFIMでは8項目、BIでも6項目あります。このことから、排泄に対するアプローチはとても効率的に他のADLへも汎化しやすいので、廊下を歩くだけの歩行訓練で終わらず、トイレまで実際に歩いていき、そこで排泄動作をする必要性があると感じました。
COVID-19による身体活動量の減少から、フレイル・サルコペニア予防が注目されていますが、トイレ排泄でなくおむつ排泄の方は、より一層影響を受けやすいと思うので、リハビリパンツを履いてトイレ排泄で粘る事も大切なのかもしれません。