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軽度認知障害を有する高齢者において、多因子介入プログラムは、認知機能低下の抑制およびフレイル予防に有効であることを明らかにしました

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国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典。以下 国立長寿医療研究センター)は、名古屋大学、名古屋市立大学、藤田医科大学、東京都健康長寿医療センター、SOMPOホールディングス株式会社との共同研究において、生活習慣病の管理、運動、栄養指導、認知トレーニングから構成される多因子介入プログラムによって認知機能が改善することを明らかにしました。

本研究では、65歳から85歳までの軽度認知障害を有する高齢者531名を対象として、18か月間のランダム化比較試験を行い、多因子介入プログラムの認知機能低下の抑制効果を検証しました (J-MINT研究)。

多因子介入プログラムを受けるグループ (以下 介入群)には、リストバンド型活動量計、セルフモニタリング用のファイル、タブレットPCが配布され、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の管理、週に1回の頻度の運動教室 (1回90分、全78回)、栄養に関する面談と電話相談 (全15回)、タブレットPCを用いた認知トレーニング (BrainHQ)が提供されました (図1)。また、多因子介入プログラムを受けないグループ (以下 対照群)には、生活習慣病の管理と2か月に1回の頻度で健康情報が提供されました。

図1 J-MINT研究の概要

介入群と対照群の、18か月間の認知機能の変化を比較すると、主要評価項目である認知機能のコンポジットスコアでは、統計学的な有意差は認められませんでした (図2)。

 

図2 全対象者 (n=433)における多因子介入プログラムの効果

しかし、アルツハイマー病の危険因子として知られているアポリポ蛋白E遺伝子のE4多型の保因者に絞って検討を行うと、介入群では認知機能が維持され、18か月間の認知機能の変化に統計学的な有意な差を認めました (図3)。

 

図3 アポリポ蛋白E遺伝子のE4多型の保因者 (n = 124)における多因子介入プログラムの効果

J-MINT研究は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響を受け、一時は対象者の募集や評価、介入プログラムの提供を中断せざるを得ない状況となりました。また、身体疾患など様々な理由で運動教室に参加できなかった参加者の方もいらっしゃいました。そこで、介入群を全78回の運動教室の70%以上に参加したグループと、70%未満のグループにわけて、認知機能の変化を比較しました。すると、運動教室に70%以上参加していたグループでは、70%未満のグループ、対照群と比較して認知機能が改善していたことが示されました (図4)。そのほかにも、70%以上参加していたグループは、対照群と比較して、食物多様性、血圧、Body mass index (BMI)、身体組成 (脂肪量、筋肉量)、運動機能 (歩行速度、5回椅子立ち座り時間)などの改善が認められ、身体的フレイルの割合 (70%以上参加したグループ = 1%、対照群 = 8%) が少なかったことも示されました (図4)。

図4 運動教室への参加率による多因子介入プログラムの効果

本研究は、日本で初めて多因子介入プログラムの認知機能低下の抑制効果を検証し、アポリポ蛋白E遺伝子のE4多型の保因者における認知機能低下抑制効果を示しただけではなく、継続して多因子介入プログラムに参加することで認知機能が改善すること、そしてフレイル予防にも効果があることを示しました。本研究の結果は、わが国の認知症発症を減少させる大きな第一歩となることが期待されます。

本成果は、2023年7月16日にオランダ、アムステルダムで開催されたAAIC2023にて口述発表を行いました。

詳細▶︎https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20231010.html

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

軽度認知障害を有する高齢者において、多因子介入プログラムは、認知機能低下の抑制およびフレイル予防に有効であることを明らかにしました

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