こんにちは。
Sportipのサイエンスチーム加島です。以前は理学療法士として病院で勤務しておりましたが、現在はSportipでプロダクトやお客様に関わる業務を行なっております。今回は理学療法士である私の立場から、姿勢を改善することの重要性とSportip Proを使った姿勢改善の方法についてお話したいと思います。
何故姿勢を良くしなければならないのか?:
よく姿勢が悪いので姿勢を良くしましょうと言われることがあると思いますがそれは何故でしょうか?
姿勢が悪いとだらしがなく見えてしまったり、自信がなく見えてしまったりと他人からみた時に与える印象がマイナスになってしまいます。
さらに、見た目の印象だけではなく、自分自身の体にもさまざまな影響を及ぼし、悪い姿勢が癖づいてしまっているとそれを改善することは困難です。姿勢を改善することは見た目の印象だけではなく、体の不調を改善し、健康な毎日を送っていく上で非常に重要です。
何故姿勢が悪くなるのか?:
なぜ姿勢が悪くなってしまうのでしょうか?
不良姿勢に伴う筋肉の問題を持っている人はなんと73%いるという報告もあり、非常に多いです(Maulik et al., 2014)。姿勢が悪くなってしまう原因は筋肉のインバランスであると考えられます(Loots et al., 2002)。インバランスが生じる原因を大きく分けると①加齢、②運動不足、③日常生活上の癖に分けられると考えられます。
① 加齢によって筋力が衰え、高齢者特有の円背や膝の曲がった姿勢になります。背中が曲がった姿勢が続いてしまうことでより背中が丸まる方向に力が強く働いてしまうという報告もあります(Briggs et al., 2007)。骨構造の変化も発生してしまうと、姿勢を改善することがより困難になります。
② 運動不足によっても筋力は低下し、その結果さらに肥満に繋がります。筋力低下が発生するだけでも姿勢を保つことが難しくなりますが、肥満も加わることで腰椎の前弯が増加し、慢性腰痛が発生してしまうことにも繋がります(Vismara et al., 2010)。痛みによって動くことが難しくなり、筋肉のインバランスが進みます。
③ 日常生活の癖によって偏った体の使い方になってしまい、筋肉のインバランスが生じます。背中が丸まったような姿勢でパソコン作業を長時間行なっていると僧帽筋が固まってしまうことが報告されており(Onda et al., 2022)、普段から姿勢を意識的しなければ改善は困難です。
このように姿勢が悪くなってしまう原因は様々ですが、その根源は筋肉のインバランスであり、インバランスが生じている部位のトレーニングおよびストレッチを行うことが重要です。
姿勢が及ぼす影響:
姿勢は心身にさまざまな影響を及ぼします。
背中が丸まった姿勢が続いてしまうと肩こりが生じ易くなってしまいます(Onda et al., 2022)。肩こりが続いてしまうと首の痛みや頭痛に繋がります。
また、背中が丸まった姿勢によって呼吸がしにくくなってしまいます(Han et al., 2016)。同時に呼吸をするための筋肉も弱ってしまうことから、呼吸がしにくくなってしまう悪循環に陥ってしまうため、首や肩の筋肉を鍛えることも必要です。
その一方で、姿勢が良くなる事でのメリットは非常に多くあります。
猫背が改善する事で肩周りの筋肉の緊張がほぐれ、肩甲骨の可動性が向上し、肩こりが改善します。
また、反り腰が改善することで、腰痛が改善します。さらに内臓の位置も改善することからプロポーションの改善にも繋がります。
さらには、身体的な不調だけではなく、心理面にも影響を及ぼすことが報告されており、姿勢をまっすぐに正すとポジティブな感情を呼び起こすとも報告されています(Thibault et al., 2014)。
Sportip Proによる姿勢評価の概要:
姿勢の悪さを改善するためには、まずは適切に姿勢を評価する必要があります。
姿勢評価の重要な点の一つとして、再現性がある正確な評価をすることが重要です。姿勢を評価する方法はさまざまありますが、ここでは弊社プロダクトである、Sportip Proによる姿勢の評価を紹介したいと思います。
Sportip Proではもっとも簡単なもので写真を正面と横からの2枚写真を撮影するだけで姿勢を評価することができます。姿勢解析では姿勢をいくつかに分類しています。以下の説明をもとに自分の姿勢タイプを確認し、自分自身の姿勢の特徴を知ることで、普段の生活で何に気をつけなければならないかを把握しましょう。
正面解析では、肩の傾斜角度、骨盤の傾斜角度に着目し、5種類の姿勢に分類しています。
※ Sportip Proにおける分類であり、参考にして下さい。
・ノーマル:肩と股関節が床と並行になっていてバランスが取れた良い姿勢です。
・Jカーブ:骨盤だけがどちらかに上がった姿勢です。
下がっている側の太もも内側の筋肉と上がっている側のお尻の筋肉が弱く、下がっている側の太もも内側の筋肉と上がっている側のお尻の筋肉が硬くなりやすい姿勢です。
・Cカーブ:一方の肩が下がり、同じ側の骨盤が上がった姿勢です。
下がっている側の腹筋や腰の筋肉が硬くなりやすく、上がっている側が伸びやすくなっています。
・右(左)肩下がり:肩がどちらかに上がった姿勢です。
肩甲骨周囲の筋肉に左右差が生じやすく、肩関節の異常な動きを誘発しやすい姿勢です。
・右(左)ゆがみ:一方の肩と骨盤が上がった姿勢です。
肩甲骨・骨盤周囲の筋肉に左右差が生じやすい姿勢です。
側面解析では、首の傾斜角度、胸椎の後弯角度、骨盤の前後傾角度、膝関節角度に着目し、13種類に姿勢を分類しています。
※ Sportip Proにおける分類であり、参考にして下さい。
・ノーマル:首の傾斜角度、胸椎の後弯角度、骨盤の前後傾角度がバランスが取れた良い姿勢です。
・スーパーS:骨盤が前に倒れ、反り腰になっている姿勢です。
背骨のカーブが通常よりもかなりきつくなっているため、肩こりや腰痛といった慢性的な悩みを引き起こしやすいと言えます。
・スウェイバック: 猫背でかつ骨盤が後ろに倒れてしまっています。
肩こりや腰痛の原因になるため、それらを解消できるようにトレーニング・ストレッチを習慣化しましょう。
・ストレートネック+猫背: ストレートネックと猫背の姿勢です。
首が前に倒れ、背中が丸まっていることが特徴です。それにより首の痛みや肩こりなど身体に様々な不調をもたらします。
・ストレートネック+反り腰:ストレートネックと反り腰の姿勢です。
頭が前に出て、首が前に傾いています。また、骨盤が前に倒れて腰のカーブがきつくなっています。
・フラットバック:骨盤が後傾している姿勢です。
背骨の緩やかなS字カーブが消え、背骨が平らになっていることが特徴です。
・ストレートネック:首前傾した姿勢です。
頭の重さを支えきれず首への負荷が高まり、首の痛み・肩こり・頭痛が生じる可能性があります。
・猫背+反り腰:猫背で反り腰の姿勢です。
背中が丸まり、骨盤が前に倒れているのが特徴です。それにより肩や腰の負担が高まり、肩こりや腰痛などの不調をもたらします。
・猫背+腰椎平坦:胸椎後弯、骨盤後傾した姿勢です。
猫背で本来あるべき腰のカーブが見られません。背中が丸まり、骨盤が後ろに倒れています。それにより肩や腰の負担が高まり、肩こりや腰痛など身体に様々な不調をもたらします。
・猫背:胸椎後弯した姿勢です。
パソコン作業など前かがみの姿勢を長時間続けると背中が丸まってしまいます。猫背の状態が習慣化すると、肩こりになりやすく、首や腰の痛みにもつながります。
・反り腰:骨盤前傾した姿勢です。
腰のカーブがきつくなってしまうと、腰に余計な負荷がかかり、腰痛を引き起こしやすくなります。骨盤を支える筋肉にアプローチし、姿勢を改善しましょう。
・腰椎平坦:骨盤後傾した姿勢です。
骨盤を正常な位置に保つことができないと、本来あるべき腰のカーブが消えてしまいます。それにより腰にかかる衝撃を吸収できず、腰痛を引き起こしやすくなります。
・円背+膝曲がり:円背および膝が曲がった姿勢です。
脊柱全体が大きく後弯し、膝が屈曲位となっています。肩や腰の痛み・バランス能力の低下に注意が必要な姿勢です。痛みのない範囲で運動を行い、姿勢改善を目指しましょう。
また上記姿勢タイプだけではなく、より細かく指標を算出し姿勢を評価することが可能です。
正面では、「耳、肩、股関節、膝を結んだ線の傾斜角度」「XO脚の判定」を評価することができます。横から撮影した写真からは、「耳、肩、股関節、膝が外果前方から地面に垂直に下ろした線に対する前後のずれ」「顎、首、胸椎、骨盤の傾き」を評価することができます。通常ではわかりにくい重心の位置も評価することができます。
上記の指標には全て基準値と点数が紐づいており、姿勢タイプだけではなく点数で過去の姿勢と比較することが可能です。
このように最も簡単な姿勢解析であってもこれだけ多くの指標を評価することができるため、身体の問題を細かく評価することができます。これにより、個人に最適化された施術やトレーニング内容を考えることが可能になります。
実際のフィードバックの内容とトレーニングメニュー:
実際に私が姿勢解析を行った時のフィードバックとトレーニングの内容を見ていきましょう!特に側面の結果が悪く、総合結果の内容としては、「猫背の傾向がある。」となっています。
猫背の場合には、大胸筋の筋肉が固く縮まっており、反対の背中の筋肉はゆるく伸びてしまっている状態であると予想されます。
Sportip Proでは姿勢の異常に対して予測される筋肉の状態をもとに、その部位に対して適切な運動またはストレッチのメニューを選ぶような仕組みになっています。
今回の私の結果だと、猫背を解決するためのトレーニングとして大胸筋のストレッチや背中のトレーニングがおすすめされる形になっています。
猫背の場合には、大胸筋の筋肉が固く縮まっており、反対の背中の筋肉はゆるく伸びてしまっている状態であると予想されます。
Sportip Proでは姿勢の異常に対して予測される筋肉の状態をもとに、その部位に対して適切な運動またはストレッチのメニューを選ぶような仕組みになっています。
今回の私の結果だと、猫背を解決するためのトレーニングとして大胸筋のストレッチや背中のトレーニングがおすすめされる形になっています。
このおすすめされたトレーニングを2週間行った結果猫背の問題は改善し、点数もよくなりました!
姿勢を改善するためには、姿勢を細かく評価して問題点を見つけ、その問題点に対してアプローチすることで、姿勢を改善することができます。
ぜひ自分の姿勢を評価して、良い姿勢で健康的な生活を手に入れましょう!
Sportipについて:
Sportipはヘルスケア・フィットネス・スポーツの運動指導を変革するため、研究開発から複数のサービスを展開していきます。そのためにも、理学療法士を始め、医療現場で活躍している方々の経験やスキルが必要です。自身の臨床経験を生かして、現場で感じた課題意識をもとにプロダクト開発に携わってみたい、動作解析を現場でもっと手軽に使えるようにしたい、という思いのある方を募集しています。最後になりますが、Sportipに少しでもご興味のある方は下記のリンクからご応募ください。