非特異的腰痛の評価と運動療法:

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こんにちは!

Sportipのサイエンスチームの小野です。

本日は非特異的腰痛の評価と運動療法について紹介したいと思います。

今回の内容は、整形外科領域で従事されているセラピスト向けの内容となっています。

ここで紹介する評価方法や運動療法を参考にして、非特異的腰痛に対するリハビリに活かしていきましょう!

非特異的腰痛とは?

非特異的腰痛とは「レントゲンやMRI検査の結果から、明らかな原因がわからない腰痛」のことを言い、腰痛患者全体の約85%を占めると言われています。患者によって症状が多様なため、有効な治療法の確立が難しく慢性化する傾向があります。実際に、再発率は発症1年以内で60~90%と高くなっています。

そのため、非特異的腰痛の治療では、患者の痛みの原因を正確に特定し、適切な介入を行うことが重要です。

非特異的腰痛の評価方法

非特異的腰痛を評価する際は、①診断的トリアージによる重篤な症状の確認、②理学療法評価による問題点の抽出を行うことが重要です。

この項目では、非特異的腰痛における診断的トリアージと理学療法評価について紹介します。

痛みの原因を正確に把握するために、ぜひ活用しましょう!

診断的トリアージ

非特異的腰痛は、明らかな器質的異常が見つからない場合に付けられる症候の総称です。そのため、非特異的腰痛の評価においてまず重要なのは、器質的異常の有無について鑑別することです。

推奨されている診断的トリアージでは、①非特異的腰痛、②重篤な病理が認められるまたは疑われる、③神経根症状、のうち患者がどれに属するのかを鑑別します。以下の2つの手順にしたがって、診断的トリアージを行いましょう。

1. レッドフラッグの確認

まず、問診にてレッドフラッグと呼ばれる危険兆候の有無を確認します。以下の項目のいずれかに該当すれば、重篤な病気が存在している可能性があります。

重篤な病気の例:腰椎骨折、馬尾症候群、腹部大動脈瘤、強直性脊椎炎、悪性腫瘍など

図1. レッドフラッグ一覧

2. 神経根症状の確認

次に、SLRテスト(別名:ラセーグテスト)にて神経根症状を確認します。神経根症状とは、椎間板から飛び出した髄核などが神経を圧迫することで、腰の痛みやだるさ、足の痛みやしびれを引き起こす症状のことです。神経根症状が疑われる場合は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。

神経根症状を鑑別するSLRテストは以下の手順で行います。

図2. SLRテスト

① 患者を背臥位として、股関節回旋中間位、膝関節伸展位を保持しながら、他動的に下肢を挙上する。

② 疼痛や知覚異常が腰部または臀部、下肢に出現する場合に陽性とする。

以上の診断的トリアージによって、レッドフラッグ徴候や神経根症状が確認できる場合は、X線検査やMRIなどの画像検査や神経根ブロックを行って診断を特定する必要があります。その場合は、医師に相談して医学的検査を行うようにしましょう。

理学療法評価による問題点の抽出

診断的トリアージで器質的異常が認められなければ、理学療法評価によって腰痛の原因を把握します。

ここでは、腰痛評価で重要な4つの評価について紹介します。

患者の痛みの原因を特定するために、正確な評価方法を抑えましょう!

1. アライメント評価

アライメント不良は、筋の短縮・伸長に大きく影響し、腰椎の一部への過度なストレスにつながります。特に、日常生活上の姿勢が原因となって腰痛が生じる「姿勢性腰痛」の場合は、このアライメント不良が主要因となっているため、重要な評価項目となります。

矢状面上のアライメントは腰へのストレスの増大に大きな影響を与えるため、詳細に評価する必要があります。

以下に、矢状面における理想的なアライメントと代表的な不良姿勢を示します。

図3. 矢状面上のアライメント(ビジュアル実践リハ 整形外科リハビリテーションより引用)

 

A. 理想的なアライメント:腰椎に軽度な前弯があり、骨盤が中間位(上前腸骨棘と恥骨結合を結ぶ線が鉛直線上)にある。

B. 前弯姿勢:骨盤が前に倒れ、胸椎後弯と腰椎前弯が強くなる姿勢。

C. スウェイバック姿勢:腰椎の前弯が少なくなり、背中が平ら(フラット)になる姿勢。骨盤は後ろに倒れる。

D. フラットバック姿勢:骨盤が前方に移動し、上半身が後方へ移動する。骨盤は後ろに倒れる。

以上のように、矢状面上の姿勢が理想的なアライメントから逸脱していないか、不良姿勢に該当していないかを観察しましょう。

2. 関節可動域測定

腰痛患者の方は、体幹の可動域が制限されたり、体幹の動きに伴って痛みを生じることが多いです。そのため、体幹の屈曲、伸展、側屈、回旋可動域と疼痛の有無を評価しましょう。

また、腰椎に隣接している股関節の可動域も腰痛の原因となる可能性があるため、合わせて評価しましょう。

図4. 体幹可動域測定

体幹屈曲の測定では、指先と床の間の距離を測定する指床間距離(FFD: Finger floor distance)という指標を用いると、再現性高く定量的な評価を行うことができます。

非特異的腰痛は、腰椎が動きすぎることでストレスが加わり、痛みが出現することが多いです。そのため、可動域の評価に加えて、脊柱全体がどのように動いているかを観察して、腰椎が大きく動きすぎていないかを観察しましょう。

3. 筋長検査

腰痛患者は、痛みや可動域制限によって筋の長さに異常が生じます。

特に股関節周囲筋の長さ異常は、アライメント不良の原因となります。そのため、腸腰筋、大腿直筋、ハムストリングスの長さを主に評価しましょう。

図5. 筋長検査

A. 腸腰筋:患者を仰向けに寝かせ、検査する下肢と逆の股関節を最大屈曲させて評価します。腸腰筋に筋の短縮がある場合、検査する側の下肢が屈曲してきます。

B. 大腿直筋:患者をうつ伏せに寝かせ、検査する側の膝を屈曲させます。大腿直筋に筋の短縮がある場合、股関節が屈曲し、臀部が挙上する尻上がり現象を認めます。

C. ハムストリングス:患者を仰向けに寝かせ、測定する下肢の膝を伸ばした状態で股関節を屈曲させます(SLRテスト)。正常では、股関節は80度以上屈曲します。

4. 体幹筋機能検査

非特異的腰痛の原因の1つに体幹の筋力低下が挙げられます。

特に、ローカル筋と呼ばれる椎骨に直接付着している筋(腹横筋、内腹斜筋など)の機能不全は、腰椎が不安定な状態になるため、腰椎へのストレスが増強して痛みの原因となります。

ローカル筋の機能を評価する方法に、腹部の引き込み運動があります。

図6. 腹部の引き込み運動と腹横筋の触診位置

① 患者を仰向けに寝かせ、「おへそが背中に近づくようにお腹を凹ませてください」と指示します。

② 腹横筋を触診(上前腸骨棘より2横指内下方)しながら、筋の収縮を確認します。

これらの理学療法評価によって、腰痛発症の原因となっている組織を特定します。

次の項目では、理学療法評価で抽出した問題点に対する運動療法を紹介します。

正確な運動療法のポイントを抑え、患者の腰痛改善に繋げましょう!

非特異的腰痛の運動療法

理学療法評価結果をもとに、腰痛発症の原因となっている組織が特定できたら、次はその組織に対してリハビリテーション介入を行います。

非特異的腰痛におけるリハビリテーションでは、以下の2点が重要となります。

1.基本的には、予後が良好であることを説明して患者を安心させ、活動量を維持して安静をとらないように指導すること。

2.患者が治療に依存しないように受動的な治療は避け、積極的にエクササイズを行うこと。

このことから、非特異的腰痛のリハビリテーションでは、運動療法によって積極的に体を動かすことが重要となります。

この項目では、非特異的腰痛における効果的な運動療法をいくつか紹介します。

1. ストレッチング

筋長検査や関節可動域測定で短縮の認められた筋に対してストレッチングを行いましょう。

ストレッチングは、筋が伸長感を感じられる位置で30秒保持し、1セットで3〜5回行うと効果的です。また、患者が自宅でも実施できるように、セルフストレッチングを指導することが重要です。

ここでは、筋の短縮が腰痛の原因となりやすい腸腰筋、大腿直筋、ハムストリングスにおけるセルフストレッチング方法を紹介します。

図7. セルフストレッチング

A. 腸腰筋:伸ばす側の膝を床につけ、片膝立ちになります。股関節前面に伸長感を感じるまで骨盤を前方に動かし、伸長感を感じる位置で保持します。

B. 大腿直筋:伸ばす側の膝を床につけ、片膝立ちになります。大腿の前面に伸長感を感じるまで膝を曲げ、伸長感を感じる位置で保持します。

C. ハムストリングス:タオルを足部に引っかけ、両手でタオルを引っ張ることで下肢を挙上させます。大腿後面に伸長感を感じる位置で保持します。

2. 姿勢改善エクササイズ

アライメント評価によって、理想のアライメントから逸脱していた場合や不良姿勢が認められた場合に行いましょう。

特に、十分な脊柱の可動域を確保することが、姿勢改善には重要となります。

ここでは、代表的な姿勢改善エクササイズを2つ紹介します。

図8. 姿勢改善エクササイズ

A. キャットアンドドッグ:四つ這い位で骨盤の前後傾に合わせてゆっくりと脊柱全体を屈伸させます。反復して行い、徐々に可動範囲を拡大しましょう。3〜5分程度行います。

B. ウォールスタンディング:背中を壁につけて立ち、上肢は外転位で壁につけます。腰椎 と骨盤を中間位に維持したまま、ゆっくりと上肢を壁から離さずに拳上して元の位置に戻しましょう。10回繰り返し行います。

3. スタビライゼーション

体幹のローカル筋機能が低下している場合、スタビライゼーションと呼ばれる、腰椎・骨盤を中間位とした姿勢で体幹の安定性を高めるためのエクササイズを行いましょう。

まずは、ローカル筋である腹横筋・内腹斜筋・多裂筋を焦点を当てたエクササイズを行い、安定してローカル筋が使えるようになれば、次にローカル筋と共にグローバル筋と呼ばれる椎骨に直接付着せず体幹の表面にある筋肉(外腹斜筋・腹直筋・脊柱起立筋など)を使用するエクササイズを行いましょう。

以下に、ローカル筋単独のエクササイズ方法とローカル筋+グローバル筋のエクササイズ方法を紹介します。

図9. ローカル筋単独のエクササイズ

・ローカル筋の収縮練習:背臥位で膝関節90°屈曲位、腰椎と骨盤は中間位とします。上前腸骨棘の2横指内側を触り、触っている指から下腹部が離れるようにお腹を引き締めます。

図10. ローカル筋+グローバル筋のエクササイズ

・レッグリフト:運動中は腰椎・骨盤を中間位に保ち、代償運動が生じないように注意します。A〜Cの肢位を5秒間保持し、左右とも5〜10回繰り返します。A,B,Cの順に難しくなるため、代償運動が生じないようにできるようになったら、次の難易度へ進むようにしましょう。

A. 膝関節屈曲位を維持して一側の股関節を90° まで屈曲します。

B. Aの終了肢位を維持してもう一側の股関節を90° まで屈曲します。

C. Bの終了肢位から一側の下肢をゆっくりと伸展します。

患者の問題点に合わせて、上記のようなエクササイズを行うことによって、非特異的腰痛に対してアプローチし、痛みを解決していきましょう!

また、非特異的腰痛の治療においては、前述したような適切な評価を行うことが重要です。

適切な評価とは「定量的かつ再現性のある評価を行うこと」が挙げられます。

一般的に、姿勢評価は検者の肉眼によって行われ、可動域測定では関節角度を検者がゴニオメーターによって手動で測定することで評価されます。

しかしながら、これらのような評価方法では、検者の解釈や測り方によって誤差が生じる恐れがあります。

そんな時に役に立つのが、弊社のSportip Proです!

Sportip Proを用いると、姿勢解析や可動域測定を定量的かつ再現性高く測定することが可能です。

図11. Sportip Proを用いた姿勢解析・可動域測定

 

是非、Sportip Proを用いて適切な姿勢解析や可動域測定を行い、治療に繋げていきましょう!

採用について

Sportipはヘルスケア・フィットネス・スポーツの運動指導を変革するため、研究開発から複数のサービスを展開していきます。そのためにも、理学療法士を始め、医療現場で活躍している方々の経験やスキルが必要です。自身の臨床経験を生かして、現場で感じた課題意識をもとにプロダクト開発に携わってみたい、動作解析を現場でもっと手軽に使えるようにしたい、という思いのある方を募集しています。
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