キャリアコンサルタントが徹底サポート

骨盤底障害とリハビリテーション

490 posts

骨盤底筋群は骨盤内臓器を正しい位置に保持し、腹腔内圧や姿勢変化に応じて収縮・緩和し、性機能の制御を行う重要な筋群です。この機能が破綻すると、臓器が下がる「骨盤臓器脱」や、排尿・排便トラブル、性機能の問題が生じ、これらは「骨盤底障害」と総称されます。ここでは、代表的な排尿症状と骨盤底リハビリテーションの取り組みについて詳述します。

骨盤底障害における排尿症状

排尿の問題は、尿をため、適切に排泄し、残尿がない状態を保つ機能に関係しますが、骨盤底障害ではこれらの機能が乱れやすくなります。排尿障害は「蓄尿症状」「排尿症状」「排尿後症状」に分類され、特に尿失禁(UI)は、多くの人が日常生活に支障をきたす症状です。

尿失禁は複数の種類に分けられ、主に「腹圧性尿失禁(SUI)」「切迫性尿失禁(UUI)」「混合性尿失禁(MUI)」の3つが代表的です。以下でそれぞれの特徴と治療方法を解説します。

尿失禁の種類

1.腹圧性尿失禁(Stress Urinary Incontinence, SUI) 腹圧性尿失禁(SUI)は、運動やくしゃみ、咳などで腹圧が上がった際に漏れる症状です。通常、膀胱内の圧力に対して尿道がしっかり閉じることで漏れは防がれていますが、骨盤底筋が弱くなると尿道が十分に閉まらず、尿が漏れる原因になります。

解剖学的には、尿道を支える膣の前壁や尿道括約筋(平滑筋および横紋筋)が重要な役割を果たしていますが、これらの組織が弱くなると、尿道が動きやすくなる「尿道過可動」が生じます。また、尿道の閉鎖力が低下し「内因性括約筋不全(ISD)」となる場合もあります。SUIは骨盤底筋トレーニング(Kegelエクササイズ)が有効で、特に腹圧がかかる場面で尿道を閉じる力を強化することが治療に効果的です。

2.切迫性尿失禁(Urgency Urinary Incontinence, UUI) 切迫性尿失禁(UUI)は、「尿意切迫感」と呼ばれる急な強い尿意が抑えきれず漏れる状態です。主な原因は「過活動膀胱(Overactive Bladder, OAB)」で、膀胱が過敏に反応して収縮することで強い尿意を引き起こします。尿意切迫感に加え、頻尿や夜間頻尿が併発することも多く見られます。

OABの原因としては、神経因性(中枢神経や末梢神経の障害)や非神経因性(加齢や筋力低下)が挙げられ、特に骨盤底筋の脆弱化がUUIの症状を引き起こしやすいとされています。UUIの治療には、骨盤底筋トレーニングに加えて、膀胱の収縮を抑制する薬物療法が用いられる場合もあります。過活動膀胱に伴う症状管理には、骨盤底筋を収縮させて排尿筋の反射性収縮を抑えるトレーニングが有効です。

3.混合性尿失禁(Mixed Urinary Incontinence, MUI) 混合性尿失禁(MUI)は、SUIとUUIの両方の症状が組み合わさった状態で、特に高齢者や女性に多く見られます。年齢とともに骨盤底筋の弱化が進行し、腹圧性尿失禁の症状が生じ、さらに過活動膀胱が加わることで混合性となる傾向が強まります。

MUIの治療では、症状に応じて骨盤底筋トレーニングや薬物療法が組み合わせて行われます。患者個々の症状に合わせて、尿意切迫感に対する行動療法や生活習慣の見直しも推奨され、リハビリテーションによる包括的な管理が効果的です。

骨盤底筋トレーニングとリハビリテーション

骨盤底筋トレーニングは、これらの尿失禁症状に対して有効とされており、蓄尿機能の改善を目的とした訓練が中心となります。具体的には、骨盤底筋の収縮を習慣化することで、排尿筋の反射的収縮を抑制し、膀胱をリラックスさせて尿を貯めることが可能となります。リハビリテーションの現場では、以下のアプローチが行われています。

1.骨盤底筋強化エクササイズ
骨盤底筋の適切な収縮を学ぶために、まずは専門家による評価が必要です。患者には、自宅で実践できるトレーニングメニューが提供されることが多く、エクササイズは腹圧に負けずに尿を保持できる能力を向上させます。

2.正しい排尿方法の指導
排尿時に腹圧をかけてしまうと、尿道に残尿が発生しやすくなり、残尿感や滴下の原因となります。正しい排尿姿勢や呼吸法を指導することにより、症状を緩和させるサポートが行われます。

3.排尿日誌の活用
患者が自身の排尿パターンを把握し、トレーニング効果を実感するために、排尿日誌が勧められています。排尿時間や尿の量、症状の発生状況を記録することで、治療効果の確認と症状の自己管理が促されます。

骨盤底障害とリハビリの意義

尿失禁は、成人女性の30〜40%が経験しており、妊婦ではさらにその割合が増加します。特に腹圧性尿失禁は、加齢や骨盤底筋の脆弱化によって増加し、過活動膀胱が合併することもあるため、混合性尿失禁の割合が増える傾向にあります。骨盤底リハビリテーションは、これらの症状改善に有効であり、患者の生活の質(QOL)向上に大きく貢献しています。


骨盤底リハビリテーションは、患者の症状改善だけでなく、日常生活の快適さを取り戻すための支援としての重要な役割を担っています。骨盤底筋の理解を深め、トレーニングを適切に導入することで、排尿や骨盤内臓器の正常な機能が保たれ、患者のQOLを向上させることが期待されます。

▶︎▶︎骨盤底の機能解剖

骨盤底障害とリハビリテーション

Popular articles

PR

Articles