股関節外旋六筋の起始停止・神経・作用まとめ|梨状筋・内外閉鎖筋・上下双子筋・大腿方形筋

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股関節外旋六筋は、梨状筋・内閉鎖筋・外閉鎖筋・上双子筋・下双子筋・大腿方形筋の6つの深層筋群を指します。肩関節における腱板(ローテーターカフ)と類似の役割を担い、骨頭の動的安定化と微細な外旋運動に関与する股関節のインナーマッスルです。梨状筋症候群(坐骨神経痛の鑑別)、FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)、股関節術後のリハビリで頻繁に対象となります。

目次

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1. 外旋六筋の全体像と臨床的意義

外旋六筋は骨盤後面から大腿骨転子周囲に走行する短く厚い筋群です。表層の大殿筋に覆われ、深層で骨頭・関節包に近接して走るため、関節包の緊張調整や骨頭安定化に寄与します。

構成筋(6筋):梨状筋/上双子筋/内閉鎖筋/下双子筋/外閉鎖筋/大腿方形筋(上から下方向の配列)

主な作用:股関節外旋、骨頭安定化、屈曲位では一部が水平外転・水平内転に関与

共通の特徴:骨頭・関節包に近接し、肩腱板と類似の動的安定機能

臨床上の重要性:梨状筋症候群、FAI、THA脱臼予防、座位・立位時の骨盤安定化

2. 各筋の起始・停止・神経・作用

梨状筋(Piriformis)

起始:仙骨前面(S2-S4椎体外側)

停止:大腿骨大転子の上縁内側

神経支配:仙骨神経叢からの直接枝(梨状筋神経/L5・S1・S2)

作用:股関節伸展位で外旋、屈曲位(90度以上)では内旋モーメントを持ち得る(作用が変化)

臨床のポイント(梨状筋と坐骨神経の関係):通常は坐骨神経が梨状筋下を通過するが、約15%の人で坐骨神経が梨状筋を貫通したり上を通る解剖学的変異がある(Beaton分類[4]、坐骨神経走行変異の系統的レビュー[5])。この変異は梨状筋症候群の発症リスク・難治化要因の一つとなり得る。

梨状筋

上双子筋(Superior Gemellus)

起始:坐骨棘

停止:内閉鎖筋の腱と合流して大転子内側面(転子窩)

神経支配:内閉鎖筋神経(L5・S1・S2)

作用:股関節外旋(伸展位)、骨頭安定化

内閉鎖筋(Obturator Internus)

起始:閉鎖膜内面、閉鎖孔周囲の骨盤内面

停止:上下双子筋の腱と合流して大転子内側面(転子窩)

神経支配:内閉鎖筋神経(L5・S1・S2)

作用:股関節外旋、骨頭安定化

臨床のポイント:内閉鎖筋は骨盤内面から坐骨小切痕を経由して骨盤外に出る独特の走行をする。骨盤底筋群と隣接するため、骨盤底機能との関連も指摘される。

下双子筋(Inferior Gemellus)

起始:坐骨結節上縁

停止:内閉鎖筋・上双子筋と合流して大転子内側面(転子窩)

神経支配:大腿方形筋神経(L4・L5・S1)

作用:股関節外旋、骨頭安定化

外閉鎖筋(Obturator Externus)

起始:閉鎖膜外面、閉鎖孔周囲の骨盤外面(恥骨・坐骨)

停止:大腿骨転子窩

神経支配:閉鎖神経(後枝/L3・L4)

作用:股関節外旋、骨頭安定化(前下方。肢位により補助作用は変化)

臨床のポイント:6筋の中で唯一閉鎖神経支配。他5筋(仙骨神経叢由来)とは神経支配が異なるため、閉鎖神経麻痺では内転筋群とともに外閉鎖筋も障害され得る。

大腿方形筋(Quadratus Femoris)

起始:坐骨結節外側

停止:大腿骨転子間稜(方形筋結節)

神経支配:大腿方形筋神経(L4・L5・S1)

作用:股関節外旋、内転補助、骨頭安定化(後方)

臨床のポイント:坐骨大腿インピンジメント(IFI:Ischiofemoral Impingement)の責任筋。坐骨結節と小転子間で挟まれて機能不全を起こす。MRIで筋浮腫所見が見られる。

外旋六筋

3. 股関節インナーマッスルとしての機能

外旋六筋は表層の大殿筋に覆われ、骨頭・関節包に近接して走行することから「股関節のローテーターカフ」と称されます。主な機能は以下の3つです[1]。

1. 骨頭の動的安定化:骨頭を寛骨臼に圧迫保持し、過度な転位を防ぐ

2. 微細な外旋運動の制御:表層の大殿筋に比べ、より精密な角度調整が可能

3. 関節包の張力調整:屈曲・伸展に応じて関節包の緩み・締まりを動的に調整

インナーマッスル

臨床のポイント:THA(人工股関節全置換術)後の脱臼予防では、外旋六筋の機能温存と再建が重要視される。後方アプローチで切離されることが多く、術後の外旋筋力低下が脱臼リスクと関連する。

4. 股関節の主要靭帯

外旋六筋とともに骨頭の安定化に寄与する3つの靭帯を解剖学的に整理します。

腸骨大腿靭帯(Y字靭帯/Bigelow靭帯):人体最強の靭帯。前下腸骨棘から大腿骨転子間線に走行し、伸展制限と骨頭の前方逸脱を防ぐ

恥骨大腿靭帯:恥骨上枝から大腿骨頸部下方へ走行し、主に外転・伸展を制限し、外旋制限にも関与

坐骨大腿靭帯:寛骨臼後方から後方関節包を補強し、伸展位で緊張して内旋方向の安定化に関与

大腿骨頭靭帯:寛骨臼切痕から骨頭中心窩へ。動脈走行管としての機能(小児期には骨頭血行に重要、成人では寄与は限定的)

腸骨大腿靭帯

臨床のポイント:股関節伸展制限の評価では、腸骨大腿靭帯(Y字靭帯)の硬さを意識する。股関節伸展制限が腸腰筋短縮・関節包/靭帯性・疼痛防御のいずれに由来するかは、Thomas Testの肢位・骨盤代償・end-feel・疼痛部位・他動可動域を総合して推測する。

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5. 関連疾患

梨状筋症候群(Piriformis Syndrome)

梨状筋症候群は、梨状筋の過緊張・肥大・解剖学的変異により坐骨神経が圧迫されて生じる坐骨神経痛様症状の総称です。腰椎椎間板ヘルニアと症状が類似し、L5・S1神経根症との鑑別が必要[2]。

主症状:殿部の深部痛、下肢後面への放散痛・しびれ、座位(特に長時間)で悪化

鑑別の要点:腰椎由来症状との鑑別が必要(SLR陰性でも梨状筋症候群は除外できない)/殿部痛が主訴・FAIR Test陽性・座位での増悪が手がかり

主要評価:FAIR Test(伸張)/Pace Test(収縮)/梨状筋部の触診による圧痛
Fishman 2002[3]

FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)

FAIでは大腿骨頭側のbump(cam型)または寛骨臼側のover-coverage(pincer型)により、屈曲+内転+内旋肢位で骨同士が衝突します。FAIでは股関節可動域制限や周囲筋の機能変化を伴うことがあり、外旋六筋も評価対象となります。

坐骨大腿インピンジメント(IFI:Ischiofemoral Impingement)

坐骨結節と小転子の間で大腿方形筋が挟まれて筋浮腫・疼痛を生じる病態。MRIでT2強調像高信号変化が特徴的所見となります[6]。

THA後の脱臼リスク

後方アプローチTHAでは短外旋筋群・後方軟部組織の処理が行われることがあり、術後早期は屈曲+内転+内旋肢位(後方脱臼肢位)での骨頭安定化が低下しやすくなります。患肢ポジショニング指導と外旋筋強化が脱臼予防の柱になります。

6. 評価とストレッチ

外旋六筋は深層・共通腱・触診困難のため、個々の筋を単独で断定できる妥当性の確立した検査はありません。文献は梨状筋症候群を含む「deep gluteal syndrome(DGS)」として束ね、誘発テストとMRI(症例により動的超音波)を組み合わせて責任「病態・部位」を絞り込むのが現在の標準です。

責任筋・病態を絞り込む評価バッテリー

Active piriformis test:側臥位で踵をベッドに押し込み抵抗下に外転・外旋(梨状筋を能動収縮)。感度 78%/特異度 80%[7]。

Seated piriformis stretch test:座位で受動的に屈曲・内転・内旋し、坐骨切痕部で坐骨神経・梨状筋を伸張。感度 52%/特異度 90%[7]。

2テストの組み合わせ(両陽性):感度 91%/特異度 80%(+LR 4.57・−LR 0.11)。DGSで唯一の診断精度研究において最も有用[7]。

大腿方形筋・坐骨大腿インピンジメント(IFI):Long-stride walking test(大股歩行で疼痛・小股で軽減/感度 92〜95%・特異度 82〜84%[8])で疑い、MRIで坐骨大腿間隙の狭小化+大腿方形筋の浮腫を確認[6]。

痛み・短縮・機能不全の切り分け:①過緊張・トリガー(痛み)=触診圧痛・誘発テスト陽性・座位で増悪/②短縮・柔軟性低下=股関節内旋ROM制限・FAIR/Figure-4の伸張痛/③機能不全(筋力低下)=抵抗下外旋筋力の左右差・片脚立位での骨盤制御低下(Trendelenburg様)/④神経 vs 筋=SLR・皮膚分節の感覚・腱反射で腰椎神経根症/坐骨神経由来を除外。FAIRやPaceは陽性でも個別筋の断定はできず、複合所見+画像で推論します。

FAIR Test(梨状筋伸張テスト)

手順:患者側臥位(健側下)。患側股関節を屈曲60度・内転・内旋位とし、検査者は膝を下方、足首を上方へ押して梨状筋を伸張する。

陽性所見:殿部〜下肢後面の坐骨神経痛様疼痛。

感度/特異度:感度 88%/特異度 83%(H反射延長との組み合わせ)
Fishman 2002[3]

梨状筋ストレッチ(Figure-4 Stretch)

手順:患者背臥位。患側足首を反対側膝上に乗せ「4の字」を作る。両手で反対側大腿後面を抱え込み、胸の方に引き寄せる。

狙い:殿部後外側〜梨状筋周囲の伸張(股関節屈曲+外旋位)

頻度:30秒×3セット、1日2回

臨床のポイント:股関節屈曲90度未満では梨状筋は外旋筋として作用するが、90度以上では内旋モーメントを持ち得る(作用が変化する)。Figure-4肢位は股関節屈曲+外旋位を利用して殿部後外側〜梨状筋周囲の伸張を狙うストレッチで、FAIR(屈曲・内転・内旋)とは区別して理解する。

7. 臨床応用のコツと注意点

梨状筋の作用反転(90度ルール)

梨状筋は伸展位では外旋筋として働き、屈曲位(90度以上)では内旋モーメントを持ち得ます(作用が変化)。in vivoでは単純な反転と断定できない報告もありますが、肢位により作用方向が変わる点は意識します。

坐骨神経と梨状筋の解剖変異を疑う

約15%の人で坐骨神経が梨状筋を貫通する変異があります(Beaton分類)。難治性梨状筋症候群では、保存療法効果が乏しい症例で画像評価(MRI/超音波)を検討します。

外閉鎖筋は閉鎖神経支配(神経支配パターンの例外)

外旋六筋のうち5筋は仙骨神経叢由来ですが、外閉鎖筋のみ閉鎖神経支配です。閉鎖神経麻痺の評価で内転筋とともに外閉鎖筋の機能を確認します。

THA後は外旋筋群の機能回復を段階的に進める

後方アプローチTHA後の脱臼予防には、外旋六筋を含む外旋筋群の機能回復が重要です。期間は術式・医師指示に従い、Clamshell(側臥位外旋)・抵抗下外旋などを段階的に進めます。

大腿方形筋の硬化はIFIのサイン

大腿後内側〜坐骨周囲の慢性深部痛では、坐骨大腿インピンジメント(IFI)を疑います。X線では検出困難でMRIが診断の鍵となります。

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8. 参考文献

  1. Retchford TH, Crossley KM, Grimaldi A, Kemp JL, Cowan SM. Can local muscles augment stability in the hip? A narrative literature review. J Musculoskelet Neuronal Interact. 2013;13(1):1-12.
  2. Hopayian K, Danielyan A. Four symptoms define the piriformis syndrome: an updated systematic review of its clinical features. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2018;28(2):155-64.
  3. Fishman LM, Dombi GW, Michaelsen C, Ringel S, Rozbruch J, Rosner B, et al. Piriformis syndrome: diagnosis, treatment, and outcome--a 10-year study. Arch Phys Med Rehabil. 2002;83(3):295-301.
  4. Beaton LE, Anson BJ. The relation of the sciatic nerve and of its subdivisions to the piriformis muscle. Anat Rec. 1937;70(1):1-5.
  5. Smoll NR. Variations of the piriformis and sciatic nerve with clinical consequence: a review. Clin Anat. 2010;23(1):8-17.
  6. Tosun O, Algin O, Yalcin N, Cay N, Ocakoglu G, Karaoglanoglu M. Ischiofemoral impingement: evaluation with new MRI parameters and assessment of their reliability. Skeletal Radiol. 2012;41(5):575-87.
  7. Martin HD, Kivlan BR, Palmer IJ, Martin RL. Diagnostic accuracy of clinical tests for sciatic nerve entrapment in the gluteal region. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2014;22(4):882-8.
  8. Gómez-Hoyos J, Martin RL, Schröder R, Palmer IJ, Martin HD. Accuracy of two clinical tests for ischiofemoral impingement in patients with posterior hip pain and endoscopically confirmed diagnosis. Arthroscopy. 2016;32(7):1279-84.
この記事の監修者
執筆者の写真
今井俊太
理学療法士

理学療法士として整形外科クリニックで3年間勤務し、肩・膝・腰など運動器疾患のリハビリテーションに従事。BCリーグ(プロ野球独立リーグ)のチームトレーナーとしてアスリートのコンディショニングに携わるほか、東京2020パラリンピックでは理学療法士ボランティアとして車椅子バレーの競技サポートに参加。
 

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