日本医師会の松本吉郎会長は、5月28日の定例記者会見で、前日5月27日に公表された財務省財政制度等審議会の「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」報告について、「正直言って腹立たしい内容ばかり」であると強い不満を表明しました。同会長は、過去の会見でも同様の内容を説明してきたことに触れつつ、数点の主要な論点について見解を述べました。
財政健全化論への反論
報告書が「財政の健全化とは、そうしたリスクを回避し、持続可能で豊かな社会を実現するための努力に他ならない」とし、リスクとして道路等のインフラの管理や医療等のサービス提供が滞ることで国民生活に支障をきたすことなどを挙げている点について、松本会長は反論しました。
近年の税収増を必要な社会保障の充実にしっかりと充てなかった結果、「今般の高額療養費制度の見直しや地域医療支援病院の診療拒否に象徴されるように、すでに国民生活に支障をきたしており、医療の提供が滞ってきている」と現状を厳しく指摘しました。
ステークホルダーの納得感について
また、報告書が「主なステークホルダーの目線に立って見た時にそれぞれに一定の納得感が得られるものである必要がある」としている点についても、松本会長は前回の会見でも述べたとして、**「医療介護関係者から見ますと全くもって納得感が得られていない机上の空論かと思う」**と述べました。
疾患管理のあり方と診療報酬への言及
報告書中の疾患管理のあり方について、生活習慣病患者の疾患管理に関して診療報酬の算定要件の厳格化が提案されていることに対し、松本会長は前回の会見でも述べた通りとして、「医師は患者の状態を見ながら対応を行っており、医師が判断することが基本であり、ここが非常に重要な点」であると強調しました。
こうした内容は中央社会保険医療協議会(中医協)で議論されるべき内容であり、「財政制度等審議会が言及すべき内容ではない」との見解を示しました。
継続的な要望活動
日本医師会はこれまでも何度も述べてきた通り、「高齢化の進展に加え、賃金上昇と物価高騰、さらには技術進歩への対応が必要」であるとの主張を繰り返してきており、今後も継続していく方針を示しました。
松本会長は、5月23日にプレスリリースで発表したとおり、国民医療を守る議員の会の田村憲久衆議院議員(会長代行)、武見敬三参議院議員(事務総長)、古川俊治参議院議員とともに総理官邸に赴き、石破総理大臣に直接要望を行ったことを明らかにしました。
これは4月18日の「医療・介護・福祉現場を守る緊急要望」に続く「2度目の医療現場の窮状を訴える要望」となったと説明しました。
今後の取り組み
さらに、来週6月4日には国民医療推進協議会を開催し、医療・介護全体の総意として決議を取りまとめ、政府・与党等への要望を続けていく予定であることを明らかにしました。
この会見内容は、医療・社会保障制度の議論が診療報酬のあり方を含め、医療全体に大きな影響を及ぼす可能性があることを示しています。今後の政府や関係機関の対応が注目されます。