厚生労働省は1月16日、「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」を開催し、2040年を見据えた新たな地域医療構想における必要病床数の推計方法を提示しました。75歳以上の急性期患者について「5割を急性期、5割を包括期で対応」と見込む方針が示され、リハビリ専門職が活躍する病棟の役割がいっそう重みを増すことになります。病床機能報告と入院料の紐づけも整理され、ガイドライン策定は大詰めを迎えています。
「包括期」に高齢者急性期の半数を振り分け―推計方法の骨格が明らかに
新たな地域医療構想で定める必要病床数は、現行の考え方を基本としながらも、「改革モデル」を組み込む形で推計されます。厚労省が示した方針の要点は以下のとおりです。
現行の地域医療構想では、医療資源投入量(1日当たりの診療報酬出来高点数)に基づき、高度急性期(3000点以上)、急性期(600点以上)、回復期(225点以上)、慢性期(225点未満)の4区分で患者数を推計してきました。新構想でもこの枠組みは維持されますが、75歳以上の患者に対しては新たな考え方が導入されます。

具体的には、75歳以上で「急性期」と見込まれる患者のうち、5割を引き続き急性期の需要として計上し、残る5割を「包括期」の需要として計上します。この配分の根拠として、75歳以上患者の約4割で手術や処置が実施されている実態が挙げられました。85歳以上では手術・処置の実施割合が約3割にとどまるというデータも示されています。

必要病床数の算出に用いる病床稼働率は、現行どおり高度急性期75%、急性期78%、包括期90%、慢性期92%とする方針です。福岡国際医療福祉大学ヘルスデータサイエンスセンター所長の松田晋哉構成員は、病床稼働率について「医療ニーズを必要病床数に換算するためのツール・コンバーターである点に留意すべき」と発言し、「急性期病床は利用率78%を目指す必要がある」といった誤解を招かないよう名称の見直しも検討されうることが示唆されました。
回復期リハ病棟の在院日数短縮も「改革モデル」に織り込み
リハビリ専門職にとって注目すべきは、回復期リハビリテーション病棟に関する推計方法です。
厚労省は、整形外科疾患の患者について「速やかなリハビリの開始」と「集中的なリハビリを要さない状態となった後の速やかな外来・在宅等での必要なリハビリ提供体制の構築」により、平均在院日数の短縮を進めることを見込んで推計すると提案しました。


資料によれば、大腿骨頚部骨折(閉鎖性)で入院経路が転棟・転院、退院先が家庭、退院時ADLがバーセルインデックス80点以上相当の患者について、回復期リハビリテーション病棟の在院日数は地域包括ケア病棟より明らかに長い傾向が示されています。75歳以上85歳未満では回復期リハ病棟47.8日に対し、地域包括ケア病棟28.0日という差があります。
介護老人保健施設でのリハビリ提供との連携についてもガイドラインに位置づける方針で、入院から早期に介護施設等へ移行することで医療ニーズをより小さく見込む考え方が採用されます。
病床機能と入院料の紐づけ―「包括期」に地域包括医療病棟・回リハ病棟を位置づけ
病床機能報告の客観性を高めるため、入院料と病床機能区分の対応関係を示す「目安」が提示されました。

包括期機能の目安となる入院料には、地域包括医療病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料・入院医療管理料、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料、特定機能病院リハビリテーション病棟入院料などが挙げられています。急性期一般入院料1〜6は急性期機能に、療養病棟入院料1〜2は慢性期機能に対応します。
これらはあくまで「目安」であり、各医療機関は病棟の実態に応じて報告することが可能です。ただし、報告内容の妥当性は地域医療構想調整会議で検証されることになります。
委員からは「拙速な議論」への懸念も
検討会では複数の構成員から注文がつきました。
奈良県立医科大学教授の今村知明構成員は、これまで患者調査を基礎としていた医療ニーズ推計がNDBデータベースに変わる点について、「患者調査には推計部分が入っていた点に留意が必要」と指摘しました。
日本医療法人協会会長の伊藤伸一構成員は、75歳以上高齢者の急性期ニーズを「5割・5割」とする配分について、「DPCデータ等の根拠を用いて設定することが必要」と述べ、必要病床数の見直し頻度についても「6年単位では長すぎるのではないか」と意見しました。
全国自治体病院協議会会長の望月泉構成員は、急性期拠点病院を「遅くとも2028年までに決定」とするスケジュールについて、「拙速な議論は好ましくない。救急搬送件数を増やすために軽症症例も救急搬送で受けるような事態が生じないか」と危惧を表明。「およその目標年次程度に位置付けてはどうか」と提案しました。
一方、健康保険組合連合会常務理事の伊藤悦郎構成員は「スケジュールは遵守すべき。これが遅れれば2035年に向けた役割分担の取り組みも守れなくなる」と述べ、工程管理の重要性を強調しました。
日本医師会生涯教育・専門医の仕組み運営委員会センター長の今村英仁構成員は、「ガイドライン等で数値が示されると、都道府県はそれを金科玉条と捉えがち。数字が一人歩きし、誤解を生まないよう留意すべき」と警鐘を鳴らしました。
まとめ・今後の展望
今回の検討会で、新地域医療構想のガイドライン策定論議は各論点について一通りの議論を終え、近く「取りまとめ」に向けた議論に入る見込みです。
必要病床数は2026年度に設定された後も固定されず、医療計画見直しのタイミングに合わせて2030年・2036年に見直しが行われます。急性期拠点機能を報告する医療機関は遅くとも2028年までに決定し、2035年を目途に連携・再編・集約化の取り組みを完結させる工程が示されています。
なお、同日の検討会では医師偏在対策についても議論が行われています。






