
1. はじめに
突然ですが、歩行分析の際「靴の構造」まで評価して介入できているセラピストが、実は現場にほとんどいないことをご存知でしょうか?
セラピストは可動域や筋力、歩行や実動作に目を奪われがちですが、患者様が地面と接する唯一の道具である「靴」を無視しては、介入の効果が一歩ごとに効果が打ち消されてしまいます。「靴まで介入できるセラピスト」こそが、周囲と差がつくセラピストです。
本記事では、ウォーキングシューズをどう選び、臨床に落とし込んでいくかを解説します。
本記事の要点
ウォーキングシューズに求める5つの構造
①強固なヒールカウンター(後足部制動)
②高剛性シャンク(アーチ崩壊予防)
③MP関節での適切な屈曲性(ウィンドラス促進)
④ロック機能付ファスナー(着脱性とフィット性の両立)
⑤平紐×長方形シューホール(緩みの防止)
「靴×リハビリ」を実現するリハラボの独自アプローチ: 理学療法評価に加え、足のサイズ測定、靴自体の評価・提案、中敷き・インソールの微調整まで行います。
2. 「ウォーキングシューズ」の特徴
ランニングシューズは踵接地時の高い衝撃吸収と前方への推進を目的としていますが、ウォーキングシューズは「踵接地から立脚終期までの長時間(約0.6秒)の動的安定性と、円滑な重心移動(ローリング)」に特化して設計されています。
今回はミズノのロングセラーである「LDシリーズ」を参考に解説していきます。
3.ウォーキングシューズに求めるもの
① ヒールカウンターによる後足部制動
立脚初期(IC〜LR)において、踵骨の過度な外反は、上行性運動連鎖によって膝関節内反モーメント(KAM)の増大や下肢の内旋を招きます。それを抑制することが靴には求められます。
Patersonら(2018)のランダム化比較試験[1]では、後足部の横ブレを制御する構造を持つシューズ介入が、変形性膝関節症患者における立脚初期の膝関節内反モーメント(KAM)を有意に軽減させることが実証されています。このことからもヒールカウンターの硬さがあり、後足部の安定性が確保された靴を選ぶことは重要となります。
リハラボでの臨床現場においても、変形性膝関節症による膝のスラスト由来の疼痛が「靴を変えただけ」で劇的に軽減するケースを私たちは数多く経験しています。
LDシリーズ は、踵を包み込むヒールカウンターが極めて強固であり、踵骨の過度な傾きを抑えます。またソール内部に配置された「ミズノウエーブ(波形構造)」が、クッション性(上下の衝撃吸収)と安定性(左右の横ブレ防止)を両立させます。これにより、距骨下関節のアライメントが速やかに整い、直後のアンクルロッカーへスムーズに移行します。

② 高剛性シャンクが実現する「中足部の剛性担保」
靴の「背骨」であるシャンク機能が弱い靴では、立脚中期に内側縦アーチが崩壊し、後脛骨筋や足底腱膜へ過度の牽引ストレスがかかります。そのためシャンクで中足部の剛性が保たれることで、床反力ベクトルが過度に前方へ逃げず、推進効率が高まります。
LD シリーズのソール中足部には高硬度の樹脂シャンクが配置されており、「捻れ」に対して非常に強い抵抗力を持ちます。

③ MP関節での屈曲性
靴の屈曲位置がMP関節の回旋軸と一致していないと、ウィンドラス機構が機能しません。その結果、足底腱膜へ負荷がかかる可能性が高まります。

LD シリーズは日本人の足型データを基にした「アナトミカルラスト」を採用。MP関節で正確に曲がる柔軟性があります。
またつま先にかけて適度な「トースプリング(つま先の反り上がり)」が確保されているため、つまずきを予防し、立脚終期の蹴り出しをサポートします。

④ 内側ファスナーとフィッティングの相乗効果
高齢者や片麻痺を持つ患者様にとって「紐を結ぶ」動作は難しい場面にもよく遭遇すると思います。
ですが履きやすい靴として代表的なスリッポンを選択してしまうと、前滑りが生じてしまい歩行を妨げる原因となります。そのためしっかりと足部と靴を密着させつつ、脱ぎ履きがしやすい靴を選択することが重要です。
LDシリーズの内側ファスナーは、ロック機能付きで勝手にファスナーが開かない設計になっています。セラピストが紐を縛り、甲の幅・厚みをジャストフィットさせた状態で固定しておけば、日常の脱ぎ履きはファスナーのみで「再現性の高いフィッティング」が完了します。(都度結び直すことが理想です)

⑤ 紐の形状とシューホール
意外に見落としがちなのが、紐とシューホールの形状です。
紐はスニーカーやウォーキングシューズでは平紐が接地面積も広く、靴と足部の密着できるため、広く使用されています。
またシューホールには「円形」と「長方形」の2種類の形状があります。ここで重要になるのは、紐とシューホールの形状が一致していることが重要です。特に円形に平紐の組み合わせだと捻れが起きやすく、靴と足部の密着性が低下します。
LDシリーズでは紐は「平紐」、シューホールの形状は「長方形」とお互いの形状が一致しており、捻れや緩みが起きにくく、靴と足部の密着度を高めることができます。

4.「靴リハビリ」はリハラボの独自アプローチ
一般的なリハビリ現場では「患者様が持って来た靴をそのまま履かせる」ことが大半です。私たちリハラボでは、理学療法評価に加え、足のサイズ測定や靴そのものを評価し、場合によっては他の靴を提案したり、中敷やインソールの調整で対応することを日々実践しています。
【独自アプローチ】
弊社で過去に実施した臨床データおよび歩行分析の知見から、以下の独自評価フローを導入しています。
①問診:主訴や生活での困りごと、普段履いている靴のサイズや靴の種類、過去の怪我
②評価:理学療法評価や歩行観察、足のサイズ測定
③靴の選定:足に合った靴を選び、正しい履き方を指導
④インソールの作成:靴だけで解決できない部分をサポート
⑤再評価:客観的な評価と主観的な感想を共有

5. まとめ
いかに適切で有効な徒手・運動療法も、患者様がリハビリ室を出てから不適切な靴で1日何千歩も歩いてしまえば、その効果は打ち消されてしまいます。
「理学療法士としてのバイオメカニクス的視点」と、「靴をみるスキル」を掛け合わせることで、介入の効果を最大化し、他のセラピストとの差別化につながります。
明日からの臨床で、ぜひ患者様の靴(特にヒールカウンターとシャンク)を手に取り、その構造を確かめることから始めてみてください。
6. 本記事を深掘りした無料オンラインセミナーを開催します!
本記事でお伝えした内容は、歩行を支える靴選びの「基礎的な部分」です。靴にはこれら以外にも、バイオメカニクス的視点から歩行に影響を与える要素がいくつも存在します。 「歩くための靴」についてさらに理解を深め、患者様への具体的な提案力を身につけたい方は、ぜひ下記のオンラインセミナーへお越しください。
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講師:弊社代表 理学療法士 菊地 耕
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会社紹介:リハラボBayWalking
私たちリハラボBayWalkinhgは横浜市青葉区・都筑区を拠点に、訪問看護ステーション、リハビリ特化型デイサービスを運営しています。また自費サービスとして理学療法士による専門的な靴フィッティングとインソール作製、徒手療法を用いた整体を提供しています。
デイサービスや訪問以外にもスポーツ現場、小学校での教育活動まで幅広く理学療法士が活躍しています!
新しい挑戦を応援する環境で、あなたの専門性を高め、それを活かしてみませんか?
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参考文献
- 1.Paterson, K. L., Kasza, J., Hunter, D. J., Hinman, R. S., et al. (2018). Effect of Stable Supportive Shoes vs Flat Flexible Shoes on Knee Pain in People With Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial. JAMA, 319(19), 1997-2008.
- 2.Barton, C. J., Bonanno, D., & Menz, H. B. (2009). The efficacy of foot orthoses and supportive footwear in the treatment of lower limb musculoskeletal conditions: a systematic review. Sports Medicine, 39(11), 943-958.
- 3.Hagen, M., Hennig, E. M., & Stieg, C. (2012). Lower leg muscle activity and foot motion in lacing-tightness-dependent running. Gait & Posture, 35(4), 532-536.






