三角筋の起始・停止と筋トレ、ストレッチをわかりやすく解説【線維別】

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▶︎肩関節に対するアプローチ①|肩甲上腕関節

Contents

1.三角筋ってなに?

2.三角筋の作用は1つではない!?

3.三角筋は肩関節挙上に対してどこまで働くのか?

4.三角筋が痛くなる病態

5.三角筋の筋トレ

6.ワクチン接種はなぜ三角筋?

7.参考文献

1.三角筋ってなに?

 まずは基本的な知識から学んでいきましょう。三角筋は体表からも見やすく、肩関節の屋根のような筋肉です。三角筋は名前のとおり、筋肉を広げてみると三角形の形をしています。意外と複雑に絡まった筋肉なので図で見て覚えていきましょう。

 線維は前部線維、中部線維、後部線維とあります。構造としては前部、後部線維と中部線維が異なり、中部線維は羽状構造になっています。また線維は実は7線維(前部は2線維・中部は1線維・後部は4線維)あると言われております。これらの線維は動かす動作によって働く順番などが異なります。

 

2.三角筋の作用は1つではない?!

起始

前部線維:鎖骨外側1/3前縁

中部線維:肩峰の外側縁

後部線維:肩甲棘の下縁

停止 三角筋粗面
支配神経 腋窩神経
栄養血管 後上腕回旋動脈
髄節 C5-6
作用

前部:屈曲、内旋

中部:外転

後部:伸展、外旋

三角筋の部位がわかればなんとなくわかりそうですが、肩の角度によって作用が変わります。
〇前部繊維(鎖骨外側1/3前縁~三角筋粗面)
下垂位では屈曲と内旋に作用します。
90°屈曲位では水平屈曲、90°外転位でも水平屈曲作用します。
〇中部繊維(肩峰の外側縁~三角筋粗面)
下垂位では外転に作用します。
90°屈曲位では前方繊維は水平屈曲、後方繊維は水平伸展に作用します。
90°外転位では外転に作用します。
〇後部繊維(肩甲棘の下縁~三角筋粗面)
下垂位では伸展と外旋に作用します。
また、90°屈曲位、90°外転位では水平伸展に作用します。

 

3. 三角筋は肩関節挙上に対してどこまで働くのか?

 三角筋は基本的に単独では働きません。外転は三角筋と棘上筋で90°まで働きます。

屈曲は三角筋と烏口腕筋、大胸筋の鎖骨部繊維で0~50、60°で働きます。基本的に肩甲上腕関節が動くときに働きます。

 

4.三角筋が痛くなる病態

 三角筋が痛くなるのはよく四十肩や五十肩で起こります。よく肩が拘縮した場合は三角筋付近が痛くなることが多いですが、これにもメカニズムがあります。よく関連痛というものが出てきますが、これは腋窩神経によって起きていると言われています。


腋窩神経の固有領域は上腕の外側であり、後下方の関節包を支配する腋窩神経が,肩屈曲強制に伴う下方の関節包の侵害刺激によって起きると言われています。

5.三角筋の筋トレ

ダンベルトレーニング(サイドレイズ

三角筋のトレーニングはいくつもありますが今回は筋力トレーニングを簡単なものをひとつ紹介します。

*レイズ(Raise)とは:持ち上げるという意味。

<三角筋前部線維筋トレ:フロントレイズ>

①500mlのペットボトルを前から90°まであげる。この時、手のひらは下に向けた状態で手を挙げます。

②そこから10秒かけてゆっくり下ろす。このときに体で代償しないように注意しよう。

③運動は痛みのない範囲で行い、基本的には軽い重さで多い回数を行いましょう*)

*)トレーニングは重さで決まるのではなく、重さと回数の総重量で決まります。つまり、50kgを1回持ち上げるのと、10kgを5回持ち上げるのではトレーニング効果が同じです。怪我予防のためには、少ない不可で多い回数行うほうが安全です。

*代償とは、手の動きを補助するように体を倒すことで、前部線維のトレーニングの場合、体を後ろに倒そうとしてしまいます。

 

<三角筋中部線維筋トレ:サイドレイズ>

 上記図の通り、左右にダンベルを持ち上げると三角筋の中部線維をトレーニングすることになります。この時も、手のひらは下に向けた状態で行います。

①500mlのペットボトルを外転90°まであげる。

②そこから10秒かけてゆっくり下ろす。このときに体で代償しないように注意しよう。

 

<三角筋後部線維筋トレ:ベントオーバーリアレイズ>

 上記図の通り、左右にダンベルを持ち上げると三角筋の中部線維をトレーニングすることになります。後部線維をトレーニングする場合には、この状態からやや前屈(腰で曲げないように注意)しながら、親指を天井に向けるようペットボトルを持ち上げます。

 

基本的に、後部線維は日常生活において使用されるシーンは少ない傾向にあります。これによる、筋肉のアンバランスを防ぐためにも無理のない範囲で筋肉を働かせておくことは重要です。

 

後部線維の働きが弱い場合、首周囲の筋肉や僧帽筋などに余計な負荷がかかります。

①体をやや前のめり(30°お辞儀)になる。

②500mlのペットボトルをもって親指が上になるようにして90°まであげる。

③そこから10秒かけてゆっくり下ろす。このときに体で代償しないように注意しよう。

 

自重筋トレ

<前部線維筋トレ>

①両手の甲をテーブルの下に置きます。

②その状態から、テーブルを持ち上げるように動かしましょう。

③この時、机が軽い場合は持ち上がってしまうので、可能な範囲で重い机で行いましょう。

④また、テーブルとの高さを合わせるために椅子に座って行いましょう。

⑤10秒力を入れ続け、5秒休憩を1セットとしてこれを1分間(4セット行いましょう)

 

<中部線維筋トレ:パイクプレス壁バージョン>

①壁に向かって両手をつきましょう。

②その状態から、腕立て伏せの要領で肘を曲げます。

③この時、手の広さによって働く場所が違うので、余裕があれば肩幅の半分、肩幅、肩幅1.5倍と3種類行いましょう。

④また、負荷を軽くしたい場合は椅子に座って行いましょう。逆に負荷を高めたい場合には、立ってなおかつ壁との距離を両手を伸ばしてもギリギリ触れない(体ごと壁に倒れたら両手がつくくらい)の位置から行いましょう。

⑤10回を1セットとして3セット行いましょう。

 

<後部線維筋トレ>

①仰向けに寝て、両手を90°横に広げましょう。この時、手のひらを天井に向けます。

②その状態から、両手で床を体が持ち上がるくらい押します(持ち上がらなくてもOK)

③この時、床に寝れる場所がなければ壁に寄りかかって行ってもOKです。

④壁の場合、負荷を調整するため壁との距離を開けると負荷が強くなり、近くと負荷が軽くなります。

⑤10秒力を入れ続け、5秒休憩を1セットとしてこれを1分間(4セット行いましょう)

 

6.三角筋のストレッチ

<前部線維ストレッチ>

①両手を背中側で組みます。

②その状態から、肘を後ろに伸ばしましょう。注)肩が上がったり、前に出ないようしっかりと胸を張ります。

③この時、肩の前側が気持ちよく伸びるのを感じましょう。伸びが足りない場合は、手の位置を徐々に上げていきましょう。

④また、さらにストレッチを行うためには、手をテーブルに引っ掛け床に座っていくとよりストレッチが行えます。

⑤40秒伸ばし続け、10秒休憩を3セット(約3分間)行いましょう。

 

<中部線維ストレッチ>

①右手の肘を伸ばしたまま、左手の方に伸ばしましょう。

②その状態から、左手で右手を下から支えるように抱き寄せます。

③この時、体を右に回旋するとよりストレッチ感を感じます。

④これを左右行いましょう。

⑤40秒伸ばし続け、10秒休憩を3セット(約3分間)行いましょう。

 

<後部線維ストレッチ>

①基本の形は上記の中部線維ストレッチと同じです。

②その状態から、伸ばす腕の方を上に持ち上げていきましょう。伸びる場所が、肩の後ろに変化していくのを感じます。

③この時、体を右に回旋するとよりストレッチ感を感じます。

④これを左右行いましょう。

⑤40秒伸ばし続け、10秒休憩を3セット(約3分間)行いましょう。

*どのストレッチも基本週3回以上行えば、効果が期待できますので無理なく続けられるように行いましょう。

 

6.ワクチン接種はなぜ三角筋に打つの?

通常ワクチン接種では皮下注射と筋肉注射の大きく分けて2種行われています。一般的に皮下注射では吸収が緩やかで、効果が長く続くとされていて、筋肉注射では吸収が早く皮下注射に比べ痛みが少ないとも言われています。また、皮下注射よりも抗体産生が良好という報告もあります。

 

皮下注射の場合、注射部位に対して斜めより挿入するのが特徴で、皮膚の下、皮下組織に注射します。一方筋肉注射の場合には、皮下組織を超え筋肉に到達させるため皮膚に対して垂直に行われます。

 

その中でも三角筋が多く選ばれる理由は、便宜上のことです。三角筋部つまり肩は露出させやすく、ワクチン接種後にみられる副反応の一つ、注射部の筋肉が動かしにくくなるという状態になったとしても生活上支障をきたさないというメリットからです。

 

スポーツ選手においては、三角筋ではなく臀部に対する筋肉注射を要望するケースもあるそうです。

 

7.参考文献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537056/

三角筋の起始・停止と筋トレ、ストレッチをわかりやすく解説【線維別】

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