先日、毎日新聞に以下の内容が掲載されました。
【理学・作業療法士学生、指導役と相次ぐトラブル 養成課程・実習環境、見直しへ】
「理学療法士の養成課程について詳しい専門家による調査では、2009年度から昨年度まで、回答した学生の約6割が臨床実習について「不当な待遇と感じた」と答えた。また、実習先での指導役からのパワハラが原因で自殺したとして、大阪市内の学生の妻が実習を受けた施設の運営法人らに損害賠償を求めて大阪地方裁判所に提訴する事態も。」
引用元:https://mainichi.jp/articles/20170908/ddn/013/040/027000c
私自身、理学療法士で8〜9年前に実習を経験しました。それなりに厳しいところではありましたが、不当な待遇と感じたことはありません。
しかし、現在は以前よりも「厳しくすると問題になるから」と実習生に対して課題を与えることもはばかられるような時代になってきているなと感じています。
実際、皆さんのところではいかがですか?厳しくすることはいけないことでしょうか?
もしパワハラだと感じた事例であったり、経験した人があれば教えていただきたいです。
4年前に作業療法の学生として、老健と精神科病院に2ヶ月ずつ行きました。
老健ではバイザーからのフィードバック後に雑務を手伝い、終わるのは夜の9.10時ごろで、休みは日曜でした。
精神科病院では、毎日のレポートが手書き指定で10枚以上、睡眠時間も1.2時間程度(バイザーの時代もろくに睡眠時間取れなかったから、寝ないのは当たり前と言われました)。
寝られないのと手の痛みがきつかったですね。
睡眠不足により白髪が沢山生えてきたり身体に異変も起きたので、どちらも不当な待遇といえばそうなのかも知れません。
しかし、当時はそういうものなんだなと認識していました。
実力も知識もないし、勉強する気もないのに、資格を持っているだけで偉そうにしてるセラピストばかりだから仕方ないかと。
家族が障害者になってからセラピストを目指した人間からすると、今も昔もそんな人ばかりで、そんな人達がバイザーすれば、問題が起きるのも当然かと。
自分達がそういう境遇で実習を過ごしてきたからといって今の学生に同じ事をする、求めるのがそもそもおかしいし、そういう風潮を許すリハの空気感も嫌いです。
上下関係が非常に厳しい世界なのは理解出来ますがそれとこれとは話が別であり、完全に悪しき伝統になっていると思います。指導する側は学生を1人の「人」として見れていますか?「学生」としか見れていないのではないですか?学生さんだって人間です。人を人と思わないような指導、扱いをするからこういった問題が生じてしまうのではないでしょうか。
厳しくするのが悪いと言いたいのではなくて、学生を1人の人間として尊重した上で、見極めながらその人にあったレベルの指導をして頂きたいと常に思います。
私が知っている学校でも、後輩が実習中に自殺しました。課題提出のため毎晩睡眠がとれず、眠気覚ましと毎日栄養ドリンクをとっていたところ肝臓を壊した人もいます。バイザーより痛覚を調べる器具でつつかれながら「そんなこともわからないの?」と言われた人もいます。
40オーバーの新人が職場に入ったものの、認識のずれや注意欠陥が著明で患者さんの安全も守ることができず、セラピストとしての継続は不可と判断され、退職にいたったという話しも聞きます。実習を通ってもセラピストとしては不適格な人もいる、ということです。
バイザーは学生に厳しくする,負担を課すというよりも、セラピストとして適した人材かどうかを見極めて欲しいと思います。勉強は就職してからでもできますが、人材として適しているかどうかは資格獲得前に判断すべきではないかと感じます。
バイザーだけではなく、学校教育に従事している方々にもお伝えしたいことでもあります。
私は、一年生の見学実習でバイザーに人格を否定された事がありましたよ。PTに向いていないとも言われました。朝はコーヒーやお茶を配らないと怒られたり、先生たちが好きな飲み物を把握しておく事も必要だと指導されました。
学生が実習をどのように捉えているかで指導者からの指導の受け取り方は違うと思います。
例えば、「これから専門家になる為の大切な勉強や経験を積む大切な機会」と自己成長を目指している学生と、単に「学校の単位取得」と考えている学生では受け取り方が全然違います。高校の部活動を考えてみても、県内優勝や上位を目指している部活はそれなりに厳しく、つらい経験もあると思います。それらを経験してきた学生でさえも実習の「厳しさ」、「つらさ」を訴えることがあるかもしれません。 それはなぜか?
一つには、実習とは学生が完全にアウエー状態の中に飛び込んで、その中で未熟さを評価されるという環境だという特徴があります。また、二つ目は指導者と言われる療法士との人間関係構築に問題がある場合がよく見られます。この問題は指導者、学生双方のコミュニケーション能力に影響を受け、適切な関係性を気づけないまま実習が進行する場合があります。
基本的には「何かを学ぶ」、「できない技能を身につける」時には努力が必要で、努力を継続するには、部活や受験勉強で経験した外部からの「叱咤激励」も成長過程で大切な要素に成り得ると考えます。 つまり厳しさが問題なのではなく、その学生が学習するための環境を整えることが大切で、人によっては「叱られて伸びる人」、「褒められて伸びる人」など様々です。現代社会の対面のコミュニケーションの未熟さを、実習の厳しさにすり替えて議論することは建設的では無きと思います。また、学生をひとりの社会人として、人として見てあげて、どのようにしたか成長するのか、潜在能力をどうしたら引き出せるのかなど、アウエーの環境を考慮しつつ働きかけ結果を出す指導者が今後望まれると考えます。結論を言えば、しっかりした信頼関係が構築されていれば、厳しさやきつい言葉なども学生自身が「自分の為に言ってくれている」と好意的に受け取ると思います。
積極的に良好な信頼関係を結ぼうとせず、「厳しい」「つらい」ということを恐れて何もしない指導者の方が。結果的には学生に無駄な時間を過ごさせている事にもなりかねません。それぞれの立場でしっかり対応し、「何の為の実習なのか」を指導者も学生も考えて
進めていって欲しいと考えます。