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第206回 保育士から作業療法士(OT)へ。内田美穂先生-子ども発達支援ルームおれんじ学園-第二回

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保育士から作業療法士へ。保育士の経験が作業療法には活かされる。

療法士だからこそできるサービス

ーーーこちらにくる児童さんの症状はどのようなのが多いですか?

 

 医療的ケアが出来る環境がなく看護師さんもいませんので、施設の基準的にも重度の方は受け入れる事は出来ません。ある程度症状が安定している方が来ます。1番多いのは

自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder(s):ASD)ですね。狭い意味での発達障害の方が多いです。

 

注意欠陥・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder、ADHD)やアスペルガーなど自閉症スペクトラムの中にいる方が多いです。あとは染色体異常のダウン症などが多いです。他には遺伝子疾患や難病の方も少しずついらっしゃいます。

 

 

ーーー療法士がたくさんいることに加え、ここの職場の特徴はありますか?

 

 生活の全般的に児童をみられる施設かなと思います。療法士として学んできた身体症状だけではなく、精神症状や家族関係、生活リズムに目を向けられると思います。何か1つに特化した療法ではなく、広い視点でみられるというのは療法士が多いからこそできることかなと思います。

 

 ここは個別に対応していて、それぞれを評価して、個別プログラム立案します。利用者さんに対する説明も細かく行っています。また子供だけではなく、お母さんに時間を割いているという印象はあります。おれんじ学園にはレスパイト機能があまりないのですが、レスパイトもニーズが高いと思います。

 

お子さんを一人にしておけないというのが難しいところかなと思います。24時間ずっと見ているというのは子供にとっても成長の環境として良くないですし、親御さんも難しいですよね。学校の時間など親から離れるというのはすごく大事なことで、それはそれで社会資源として重要なポジションだと思います。

 

また、お母さんからの依頼の内容の中に、「作業療法を受けられる」ということも多くあります。制度上、児童発達支援は相談支援を通さないと利用できないんです。武蔵野市の特徴の1つですが、市が公的な施設を持っていないんです。そのため行政が民間事業所の連絡会を作ってくれたり、事業所が知りたいと思う行政の仕組み(就学相談など)を講義してくださったり、と協力的です。

 

事業所同士で顔を合わせたコミュニケーションを取れているので、相談支援事業所とも密に連絡を取り合えていると思います。相談支援事業所に理学療法士や作業療法士がいるので、そこで子供を評価した際に、作業療法が必要だとなれば当施設を紹介されます。相談支援事業所から紹介されてくる方は8割ほどいますね。

 

立つ、座るなどの障害がある児童は、病院の方に行くため、理学療法を求めに来ることが少ない気がします。立つ、座るなどが良くなるまで病院のケアが離れないためかなと思うっています。

 

そのため病院外に理学療法士を探しに来る印象は少ないですね。

 

地域のバトン

 

ーーーゴール設定はどういったところを目指すのですか?

 

 親御さんやお子さんニーズに合わせて目標設定をします。制度的には計画書の期限が6ヶ月なので、そこの目標達成に合わせたものを立案し、6ヶ月経過した時に新たな目標を立てるのか継続するのか再評価しています。

 

ーーー方針として自立というところがあると思うんですが、卒業するという考えはあるのですか?

 

 施設の課題の1つとしても「卒業をどう考えるか」というのがあります。ここは放課後等デイサービスでいう、レスパイト機能がないんです。鉛筆が持てないなど親御さんなどの具体的な依頼に対して取り組むことは出来るのですが、それが出来るようになった次の段階、社会に興味が広がっていった場合、外に出て行く事も必要だと思っています。

 

この施設ではなく、もっと広い世界、他の社会資源につなげることも重要な役割だと思います。自立ということで、家でお母さんがお子さん見ていなければならないか、というとそうではなく、移動支援やボランティアなどに協力要請をするなど、その子の世界を広げてあげなくてはいけません。

 

健常者であれば、友達の家に行って、5時になったら帰ってくる、といったことが自然とできると思うのですが、なかなか難しい場合もあります。もっともっと広い世界に出ていけるような、社会資源につなげてあげることも良いのではないかと思っています。

 

 

ーーーそうすると地域の繋ぎ役というところも役割としてあるんですね。

 

 相談支援事業所で、コーディネートしてくださる方が、療法士だというのも大きいと思います。施設にわかりやすく振り分けをしてくださいます。本来は相談支援事業所が繋ぎ役をするところですが、療法士として、退院後のことを考えるように、児童の先のことも考えてしまいます。そこは療法士の考え方なのかなと思いますね。

 

 

ーーーここの特徴の1つとして、家族のケアも療法士が専門家として行っているという印象がありますが、それも方針の1つなのですか?

 

 児童の環境として親は絶対的なものですので、一緒に考えることが大切だと思います。具体的にアプローチしても、環境に足りないこともありますので、ご家族にお話するようにしています。また、ご家族からの話も聞いて、アプローチの参考にさせていただいています。人によっては自宅まで伺って、自宅での支援をする場合があります。

 

ーーーご両親の心のケアも必要ですか?

 

 ご家族の方の不安をお聞きすることもありますし、就園や就学に向けたご相談を受けることもあります。

 

 

言語聴覚士の仕事

 

ーーー言語聴覚士さんはどのような事をされていますか?

 

 言葉が出ない児童に対してアプローチしていることが多いですね。ただ、発声をやっているというより、認知や概念の構成や理解を深めるようなアプローチをしています。りんごのカードを見せ、答えを求めたり、「赤はどんなものがあるか」という質問を行っていますね。

言語発達遅滞というのがあり、言葉がどうしても出てこない児童もいらして、まずは正しく聞く練習をしています。音韻分解してリズムを、身体を使って覚えたりしていますね。

 

 

ーーー言語聴覚士はこのような施設に多くいるんですか?

 

 だいたいの施設はいらっしゃいますね。作業療法士がいない施設にも言語聴覚士がいらっしゃることが多いです。

 

ーーー法人内の特徴はありますか?

 

 法人内に訪問もありますので、経験のある療法士から学べるというところもポイントかなと思います。

また先ほども話がありましたが、こちらから同一法人内の訪問に児童を繋げることもあります。おれんじ学園は法人内の教育を担う役割も検討していますので、訪問業務に携わっている療法士さんが見学に来たり、小児の訪問について相談にのることもあります。地域情報を共有したり、訪看とは違う制度で動いているので地域の資源を伝えたりしています。今後も法人内の各事業所とは連携して行きたいと思います。

 

ーーー利用者さんは増えていっていますか?

 

 増えており、武蔵野市の市民も制限がかかっている状況です。1日の定員があり、施設基準がありますので、療法士を増やしたからといってみられる数が増えるわけではないんです。

【目次】

第一回:保育士から作業療法士になった理由

 

内田美穂先生の経歴

資格:保育士、作業療法士

出身校:神戸大学

所属:子ども発達支援ルームおれんじ学園

第206回 保育士から作業療法士(OT)へ。内田美穂先生-子ども発達支援ルームおれんじ学園-第二回

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