【望月久先生 | 理学療法士】姿勢制御・バランス能力の評価と実際 -文京学院大学-

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バランス能力は重心動揺だけでは計れない

ーー 理学療法士になろうと思ったキッカケを教えてください。

 

望月先生:はじめは一般企業に勤めたのですが、専門職でなおかつ医療系の仕事がしたいという理由で理学療法士の養成校に入りました。

 

妹が臨床検査技師だったので最初は臨床検査技師もいいかなと思っていたのですが、本を見ていて、自分に一番あっていると思ったのが理学療法士でした。

 

最初に勤めたのは神経難病専門の病院で、新しくできたばかりの病院でした。

 

当時はまだ、未開拓に近いような分野だったので研究もやっていきましょうという雰囲気が強く、私は脊髄小脳変性症の研究班に入りました。

 

脊髄小脳変性症の方は運動失調がメインの問題となることが多いため、バランス能力の評価として、当然アウトカムの設定をどうするかという問題になってきます

 

その頃は、Bergのバランススケールやファンクショナルリーチなどのバランスの臨床的評価がなかった時代で、耳鼻科にあった重心動揺計を、バランスの評価に使わせてもらったりしていました。

 

そのなかで、一般的にバランス能力の能評価指標として使われている重心動揺面積や軌跡長の大きさだけでは、患者さんの実際の姿勢保持や動作時のバランスを十分反映せず、これらによる評価だけでは足りないということに気づきました。

 

バランス能力の評価のポイント

 

望月先生:支持面を小さくしたり、動作のスピードを増すなど、患者さんに易しい課題から難しい課題へと順に行っていただき、その時に支持基底面と重心線の関係がどこから崩れていくかを、静的な場面および動的な場面で評価していくことが1つのポイントと思っています。

 

バランス能力には多くの身体要素が関係します。それらのどの要素がバランス障害に影響しているかがアプローチを考える際には重要です。

 

筋力であれば、膝の伸展筋力がこれくらいになればバランス的には問題ないと言えたりしますが、体性感覚とバランス能力をきちんと関係づけるのは難しいと思います。

 

 

 

身体機能とバランス能力との関連性についての多くの知見が整理されることが望まれます。バランスの評価も含めて、理学療法の評価や治療アプローチにはいろんなやり方がありますが、それらがもっと体系的にまとまってくればいいのかなと思います。

 

できれば「○○法によるアプローチではこのように評価する」とかではなく、理学療法の一般論がまずあって、そこから枝分かれしていくほうがよいように思っています。

 

 

神経難病のリハビリテーション

 

ーー 脊髄小脳変性症といえば、ドラマ「1リットルの涙」で沢尻エリカさんが演じましたよね。あれを見たとき正直、「よくならない方のリハビリって怖い。何をしたらいいんだろう」というような印象を受けました。

 

望月先生:神経難病と聞くとよくならないイメージがあるのですが、入院期間だけで考えると、身体的な機能が向上する患者さんも結構います。機能の向上には廃用の影響などもあり、本来発揮できる能力が低下していることが考えられます。

 

理学療法によって身体機能レベルを引き上げることで、生活の範囲が少しでも広がってきて、もうしばらく車椅子使わなくてもいいという状況が作れるかもしれません。

 

疾患の進行自体は止めることはできませんが、患者さんの眠っている身体能力を発揮させること、杖や装具など用いて生活の自立度を維持・改善すること、動作方法や環境を整えてもう少し楽に食事をすること、などはできる可能性があります。

 

神経難病の理学療法では、「身体機能を改善する」ではなく、「現在の身体機能と生活の関係を最適化すること」が重要と思っています。

神経難病のリハビリテーションでは、「入院して集中してリハビリをすることで、患者さんをよい状態に引き上げ、退院後半年くらい経って機能的に下がってくる前に、入院してリハビリをするというような、なるべくよい状態を維持できるような体制が整うとよいと思っています。

 

 

臨床と研究。主観と客観。

 

望月先生:神経難病の中でもパーキンソン病では介入研究が多くあり、理学療法のエビデンスは高くなっています。

 

しかし、脊髄小脳変性症では介入研究が少なく、理学療法についてのエビデンスも低いのが現状です。また、研究結果の有意差などをそのまま意味のある効果とみてよいかという問題もあります。

 

例えば、10mの歩行時間が1秒短縮し、介入前と較べて統計的に有意差があったとしても、臨床的に意味のある差かどうかは微妙なところです。臨床的に意味のある変化については、数値的な指標もありますが主観的な側面を持っています。

 

理学療法では主観と客観の両方の見方が必要と思っています。主観的というと曖昧な印象を持ちますが、主観と客観にはある程度の対応関係があります。

 

理学療法では痛みに対するVAS、運動負荷に対するBorg スケールなど、主観的な評価が多く使われていて、生理学的な数値とある程度の関係性が得られています。

 

主観と客観の関係は、100%ピタッと合うわけではなくファジーな部分がありますが、経験を重ねるとファジーな部分を残しながらも理学療法にとって有用な関係性が見えてくるように思います。

 

望月先生にとってプロフェッショナルとは

 

望月先生:他者への責任感を持っている人ですね

 

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望月 久先生の紹介

<主な経歴>

東京都立府中リハビリテーション専門学校卒
日本大学文理学部応用物理学科卒
東京都立大学理学部生物学科卒
日本大学大学院理工学研究科医療福祉工学専攻修士課程修了
昭和57年 東京都立神経病院リハビリテーション科勤務、
平成19年4月より 文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科
平成22年4月より 文京学院大学大学院保健医療科学研究科

 

<著 書>
・望月久・山田茂(編):機能改善の理学療法とそのメカニズム(第3版).NAP、2014
・協調性障害に対する運動療法、市橋則明(編):運動療法学(第2版)、文光堂、325-336、2014
・パーキンソン病の理学療法評価、松尾善美(編):パーキンソン病に対する標準的理学療法介入、文光堂、259-276、2014
・望月久(監訳)、Liber RL(著):骨格筋の構造・機能と可塑性、医歯薬出版、2013


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