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徒手療法で変えるのは痛みだけではない!!!

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 組織間リリース(Inter-Structural Release®;以下、ISR®)は組織間の結合組織をリリースするテクニックであります。リアライン・コンセプト(⇒前回、理学療法士がアライメントを変える意義と必要性を参照)に基づき、マルアライメントを作る原因因子へのアプローチにより、マルアライメントを矯正します。その過程では、

①微小な関節マルアライメントの同定

②マルアライメントが症状や運動機能(結果因子)にどのように影響しているのかを考察

③マルアライメントを形成した原因因子を同定

④原因因子への対策によりマルアライメントを矯正が必要になります。

すなわち、ISR®を用いることで痛みを取り除くだけでなく、マルアライメントを変えることが出来るのです。このISR®には正確な触診技術、そして精密なリリース技術が必要になります。

 

 ISR®は他の徒手療法とは異なり、組織をつぶすことなく、溶かすように組織間の滑走性を改善させます。また治療技術だけでなく、1㎜単位での触診、また触診により本人のコメントを聞かずに痛みを判定するような触診技術を習得できます。

 ISR®では大きく4つに分けて、組織間の癒着に対するManual ReaLine(マニュアル・リアライン)を進めていきます。

Level1:皮膚リリース(浅筋膜)

例:鎖骨、手、鼠径靭帯、膝窩部、脛骨内側

Level2:皮下脂肪リリース(深筋膜)

例:三角筋後部、下位胸郭、上腕外側、大殿筋停止部、鵞足

Level3:筋間リリース

例:三角筋後部線維、腕橈骨筋起始部、脊柱起立筋、大腿直筋、母趾外転筋

Level4:組織間リリース

例:三角筋中部線維、肩甲挙筋、大殿筋下縁、大腿筋膜張筋、腓腹筋外側頭

 

症例紹介

 以下は、ISR®のセミナー受講者にみられた症例です。

 

・膝半月板部分切除後の膝屈曲制限、大腿四頭筋機能低下
・アキレス腱縫合術後の可動域制限
・30年前のドッジボールで受傷した母指MP関節の伸展制限 
・軽度な足関節背屈制限

 

 それぞれ軽症ではありますが、健常者にも以上のような不調が隠れているのです。技術指導のついでではありますが、上記のような不調をセミナーの間でしっかり改善していきます。実践こそが技術の向上につながります。そして、重症を治せるようになる唯一の方法は、これら軽症を治すことの積み重ねしかないと思います。そして、軽症を治すことはStage Iにある状態から疾患を悪化させないことに繋がります。

 

 また、以下のような、一見、複雑な症例に対しても、ISR®に基づく正確な触診評価、治療にて、症状の改善へとつなげることが可能です。そして、組織間の癒着に対しては、正確なISR®が治療として必要であることが言えます。

 

◆ 主な症状

右膝(術後)
左足底部痛(第1MTPと第2MTP関節間)
左距骨下関節不安定症
左膝(かなり軽減)
左鼠径部
左殿部(椅子坐位、長坐位)
左坐骨神経痛(椅子坐位などで増悪、SLRは陰性)
左肩痛

 

◆ 経過

■左前足部痛があったため、歩行の立脚後期のから離地にかけて内側または外側荷重となる。このため、足関節背屈を行わず、距骨下関節による代償が促され、距骨下関節不安定症を発症。これに対してアキレス腱周囲や距骨下関節周囲に挫滅マッサージを実施し、内側足底神経、外側足底神経障害が出現。
     
■左膝の治療過程で、膝窩部にテトラを使った挫滅マッサージ。脛骨神経障害出現。皮下組織の重度の癒着に伴い、膝蓋大腿関節圧迫症候群。
 
■右膝のリハビリ過程で左鼠径部に痛みが出たため、ツボ押し棒、テニスボール、ストレッチポールなどで挫滅マッサージを励行。左大腿静脈と大腰筋との癒着を解消すると痛みが消失。
  
■左坐骨神経痛に対して、テニスボールなどで挫滅マッサージを徹底的に実施。1日数時間に及ぶこともあった。椅子坐位や長坐位では、骨盤後傾位で坐骨神経を圧迫して神経症状出現、骨盤前傾位では坐骨神経の真下に大殿筋が入りこんで、大殿筋の疼痛。

■左手で右膝周囲の挫滅マッサージを行う過程、セルフケアで左手に荷重しているうちに左肩痛出現。橈骨神経痛(水平内転時に増悪)、尺骨神経障害(松葉杖)などを合併。

 

◆ 問題点・考察

症状の拡大と挫滅マッサージが直接・間接に関連

 

◆ 治療

1)挫滅マッサージの全面中止!!
2)痛みの治療をPTに任せてもらう
3)癒着解消の治療をPTに任せてもらう
4)ご本人にはストレッチと軽いエクササイズで癒着再発を防いでもらう。

つまり、これまで痛みの拡大をもたらした挫滅マッサージを中止することで、ようやく症状改善のスタートラインに立つことができたわけです。

 

 今回は、導入編で簡単な症例紹介としました。ISR®セミナーでは、少人数開催としているため、講師の蒲田をはじめとし、講師の技術を体感しつつ、受講者間でその正確性を確認しながら習得を進めることが出来ます。解剖の知識、手技習得までの練習は必要ですが、習得により確実に目の前の患者さんの症状の改善、アライメントや運動機能の改善が期待できる手技となっています。

 

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徒手療法で変えるのは痛みだけではない!!!

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