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第一回:脳損傷後の機能回復のメカニズムを研究する作業療法士【産業総合研究所 | 村田弓先生】

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― 作業療法士になろうと思ったキッカケを教えてください。

 

村田先生 テレビで、「ベトちゃんドクちゃん」という下半身がつながった結合双生児のドキュメンタリーを見たのが最初です。

 

 

ベトちゃんが急性脳症となったことを契機に、二人を分離する手術を行い、その後、日本のチームから片足ずつになった二人に義足が送られました。

 

 

最初は歩けないことにショックを受けていた男の子たちが次第に回復し、サッカーができるくらいにまで動けるようになった姿を見て、リハビリテーションとはなんて素晴らしい職業なんだと思いました。

 

― 臨床ではなく研究の道に進もうと思った理由は、なぜですか?

 

村田先生 学校で作業療法を学んでいくうちに、どうしたらより良い治療ができるのか悩みを抱きはじめました。

 

自分が関わることで患者さんをよくすることができるのではないかと夢見ていましたが、当たり前ですが、臨床に出るとうまくいかないことがたくさんありました。

 

今思えば、未熟者でしたのでうまくいかなくて当然ですが、自分の選択した介入方法が最良の方法なのか、何が最善の方法といえるのかを知るすべが分からず、無力感を味わいました。そこで、もっと知識を深めようと思い進学を決意しました。

 

ニホンザルと人間の脳は似ている

村田先生 筑波大学の大学院に入学することになったのですが、そこには幸いなことに連携大学院という制度があり、大学に在籍しながら、産業総合研究所(産総研)で研究をさせていただくことができました。

 

それからはずっと、産総研で脳損傷後のリハビリによる機能回復のメカニズムについて研究しています。

 

その中でも特に運動機能に関して、手の動きや小さい物をつまむ動作に着目し、研究を進めています。

 

― 具体的な研究内容に関して教えてください。

 

村田先生 人工的にサルの脳に損傷箇所を作り、その後の機能回復を観察し、背景に何が起きているのか明らかにしようとしています。

 

どのような運動が効果的なのか、どの領域が回復に関わっているかを明らかにすることで、有効的なリハビリ技術の開発に役立つと考えています。

 

ただ、サルのことを知りたいから研究しているのではなく、ヒトのことを明らかにするために行っています。

 

ヒトでは研究手法の面で、様々な条件設定が難しい場合がありますが、動物モデルを使うことで、条件を細かく決めることや、神経の細かい変化を詳しく調べることができます。例えば、リハビリをする群としない群を比較することなどもできます。

 

また、サルの中でもマカク属に分類されるニホンザルは、ヒトと脳や筋骨格構造が似ていて、運動機能や認知機能を調べる方法として優れているため、人を知るための良いモデルになっています。

 

例えば、手の機能を見ると、彼らは、地面に散らばっている小さい木の実を拾うなど、人間に近い手の運動機能を持っています。

 

 

脳損傷サルの把握機能の回復の違い

村田先生 まず始めに、脳損傷後の機能回復がいったいどの程度起きるのかを調べました。

 

神経毒を第一次運動野の手の領域に投与して、脳に損傷を作成しました。その結果手に運動麻痺がおこります。

 

次に、小さな穴から餌を取り出すトレーニングを脳損傷作成後に行った群と行っていない群で、把握機能の回復に違いがあるのか否かを観察しました。

 

すると、トレーニング群では回復し、していない群では回復しないという結果になりました。

 

この時の実験では、トレーニング群では、人差し指を穴に入れ、親指でうまくサポートしながら取り出し、指先でつまむことができますが、トレーニングしていない群では親指がうまく使えず、人差し指だけで餌をかきだすようになり、指先でつまむことが難しいままでした。

 

この結果から、脳損傷後のトレーニングが指のつまみ動作の回復を促進するということが言えると考えています。

 

次のページ>>把握動作の脳機能。運動前野腹側野の代償

 

 

村田弓先生プロフィール

2003年3月 茨城県立医療大学 保健医療学部 作業療法学科 修了
2008年3月 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 修了  博士(神経科学)取得
2008年4月 日本学術振興会特別研究員 (DC2,PD)
2012年4月~ 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人間情報研究部門
      システム脳科学研究グループ 研究員

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