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臨床に活かす脳画像読影の基礎と応用-その1- 【高杉 潤先生|千葉県立保健医療大学】

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.脳損傷例の評価の科学性

評価や治療介入に難渋する脳損傷例の多くは以下の特徴・要因が考えられます。

 

①病巣が広汎あるいは多発的で、症候が複数混在し複雑化している

②運動学や神経学的水準では解釈・説明しにくい不可思議な症候を示している

③評価者自身が症候そのものを見落としたり、見誤っている

 

これらを解決するため、①に対しては、複雑化した症候を一つ一つ検出し、選り分ける作業がまず必要となります。

 

②に対しては、多くは高次脳機能障害が背景にあるため、大脳の高次領域すなわち連合野の機能を知ること、左右半球の機能差を知ること、またこれらの損傷で生じる高次脳機能障害(神経心理学的症候)を知ることにあります。

 

③に対しては、多様な症候に敏感に気付けるだけの評価者の豊富な知識や洞察力が求められます。

 

 

これら評価における精度や効率を上げるためには、脳の機能・構造を理解し、神経学的症候、神経心理学的症候を理解し、これらを検出する検査技術を駆使し、脳画像を活用しながら、これら症候との照合ができるようになることが必要です。

 

脳損傷例の示す行為障害の原因は脳の障害に由来するため、脳機能をベースに評価・分析していくことは極めて効率的、科学的な方略といえます。「損傷した脳の部位(病巣)はどこで、その病巣から生じる症候は何があり、行為にどのような影響を及ぼすのか」を分析することが重要と考えています。

 

.脳損傷例の症候の特徴と留意点

ヒトの正常な行為には、運動系、感覚系、注意、記憶、情動を含む認知機能、遂行機能等の脳機能が正常に機能することで成立します。

 

これらのいずれの機能が低下もしくは障害されると、行為に何らかの障害が生じます。脳損傷例が示す行為障害を分析するには、これらのどの機能障害に起因するのかを明らかにしていくことが良いと考えています。

 

しかしながら、これら機能障害が重複することは、多くの脳損傷例に見られる特徴とも言えます。症候が複雑化すると原因が捉え難くなります。

 

より重篤化した障害にマスクされると、その背後に隠れている他の症候を見落としてしまうかもしれません。

 

例えば、運動麻痺と注意障害が併発していても、運動麻痺が重篤であれば、行為障害の要因が運動麻痺に集約され、注意障害は見過ごされてしまうでしょう。

 

また運動系や感覚系の障害(いわゆる神経学的所見)由来の行為障害であれば問題点も捉え易いですが、それ以外の認知機能(注意や記憶、情動等)の障害が原因となる行為障害に対しては、問題点を誤ったり、見過ごすことも少なくありません。

 

繰り返しますが、脳損傷例の示す行為障害は、どの機能の障害によるものなのか、症候を見落とさずに一つ一つ検出し、選り分けることにあります。そのためにも臨床評価で脳画像の果たす役割は大きくなります。

 

.臨床に活かすための脳画像(脳画像を見るから読むへ)

近年、リハビリテーションにおける脳画像活用の重要性が認識されつつあります。

 

さらに電子カルテの普及も相俟って、セラピストが担当症例の脳画像を見る機会は急増していると思います。

 

従って、画像を見る機会は増えたが、読めない(症候の予測や関連性が繋がらない)ために、ジレンマに陥っているセラピストも実際多いのではないでしょうか。臨床における脳画像の活用とは、病巣部位の解剖学的同定だけではほとんど意味をなしません。

 

症候や障害を把握するためには、病巣部位の同定に加え、神経学的・神経心理学的検査の結果との比較・照合が必要です。そのためには脳の機能と解剖、神経学的・神経心理学的症候、画像読影の知識・技術が不可欠となります。

 

脳画像は、症例の臨床所見の根拠を示す極めて有力なデータであり、評価の精度や効率を向上させる有力なツールです。脳画像を臨床で活用できるか否かで、評価や治療介入の質を大きく左右させると言っても過言ではありません。

 

そのため、脳損傷例に携わるセラピストは、脳画像読影のための知識・技術は早い段階で身につけることを強くお勧めします。近年の理学療法士の国家試験においては難易度の高い脳画像の問題や脳の機能解剖的な問題が出題されています。

 

私は、学生のうちから脳画像読影の知識・技術は持つべきで、早くから慣れた方が良いと思い授業を行っています。臨床実習でも初期評価の段階で脳画像をチェックし、予測される症候および障害、残存機能を、ある程度押さえられるようになって欲しいと思っています。また指導者に対しても、ごく自然に当たり前のように脳画像を評価に取り込んで、病巣から症候を解釈していく過程を指導して頂きたいと切望しています。

 

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